創作世界

□森の通過と誘導準備
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寒さの厳しい季節を凌ぎ、だんだん過ごしやすい気候になってきた。

アルヴェイト王国、王都ラクナーベルでは
冬用に飾り付けられていたイルミネーションもすっかり取っ払われ、
雰囲気の良い夜が目に留まらなくなってから幾日か経っていた。

平常通りの王都、その内の建物から素っ頓狂な声が1つ上がる。


「警戒令ィ?」
「うわー、大型魔物出現かぁ・・」


大通りに面する旅団支部、受付カウンターに向き合った男性が2人、
受付の女性と向き合って話している姿が見られた。

旅団員と思しき男性のうち、片方は鮮やかな紫色の髪を揺らした青年は、
半袖に上着を腰に巻いた程度の軽装で、鞘に入っている大剣を背負っていた。

もう片方はエルフ耳を伸ばした大剣使いと年が変わらないように見える青年。
右側の腰に下げられた矢と、左手に抱えられた弓で彼の武器も想像は容易い。


「一応騎士団にも連絡はしており、討伐は時間の問題かと思いますが・・
 それまでは野放しの状態ですので、」
「だよね、危ないよね」


受付女性の説明に、エルフ耳の男性が頷く。

どうやら彼らが滞在する王都ラクナーベルの北にある森に、
大型魔物が出現したらしい。

通常の魔物より体格が段違いな分、攻撃力も知能も桁違いだ。
襲われたら一溜りもない、逃げるのに精一杯な者も少なくないだろう。


「ディスこれ行けると思う?」
「や、どーだろ・・・大型魔物との戦闘経験はあるけどこの種は初めて」
「大型経験はあるんだ、流石」
「2、3匹はやってる。 無傷とは行かなかったけど」


ディスと呼ばれた紫髪の青年は、受付が差し出したタブレットの画面から、
最大難易度の付けられた討伐依頼画面を見つめる。

魔物の画像と、大まかな魔物の情報。
出現場所や危険度、後は討伐依頼報酬の明記。

赤々とした色で綴られた厳重警戒の文字は、
戦闘依頼が多いはずの旅団にしても珍しく少々禍々しいようにも感じる。

それだけ大型魔物が危険だということ。
この大型魔物での死傷者も出てるはずだ。 ゼロであることを望むが。


「・・・カデンこれ行く?」
「えー・・でもわざわざ森迂回するのはなぁ」
「やるなら最低でももう1人欲しいな」
「それは思う。 流石に2人はちょっと」

「勝てるかは分かんないけど、人通り少ないとこに
 誘導させることはできそうじゃね?」
「あー、一時しのぎね?」
「うん。 後は撒けるかどうかだな」
「最重要じゃん」


カデンと呼ばれた青年とディスはその後少しだけ沈黙した。
言葉も交わさず、お互い少々悩んだ表情を浮かべる。

しばらく瞬きしていた赤紫色の瞳が一度瞼に伏せられ、
ディスは小さく息を吐き出すとその目を開けた。


「・・・やるか?」
「やるかぁ」
「うっし」


可能なら討伐、メインは大型の誘導及び森の通過を目的とする。
2人の間である程度話が整ったようで、大型との邂逅が確定した。

受付の女性は会話内容を別のタブレットで入力している。


「旅団からは討伐依頼の提示ゆえに、
 誘導の場合は報酬は出ませんがよろしいですか?」
「ん、いいよ。 情報だけよろしく」

「かしこまりました。 お連れの方は既にお決まりですか?」
「・・紹介かなぁ?」
「だな」


首を傾げるカデンに、ディスは頷いてみせた。

サファリ旅団では紹介制度が存在し、依頼を請け負う際、
メンバーが心許ない時は旅団員の中から協力者を求むことができる。

中には誰とも組まないという者も居るが、大体の旅団員は、
入団時に「他の旅団員から協力を求められる場合がある」
という条件に了承した上で加入しているのだ。

ディスやカデンも例外でなく、見知らぬ人から協力を求められたこともある。

ただその協力はあくまで任意なので、期待して向かったアテが、
都合が付かないだのプレイスタイルが合わないとかで、
断りを入れられる場合もあるが。


「カデン的にはどんな人欲しい?」
「とりあえず魔術師」
「あー、そうだな。 魔術メイン欲しいな」
「後はディスみたいな近接強い人がもう1人居たら理想」


全面的に同意なのか頷くばかりのディス。
やり取りを聞いていた受付はラクナーベル滞在の旅団員名簿を確認する。

簡単の操作をした後、思い当たりがあったのだろうか。
普段より時間を要さないで、受付の口がゆっくりと開いた。


「そうですね・・つい先程、森通過を断念したばかりの
 旅団員がいらっしゃいまして。 その方が魔術師だったかと」
「おっ、ナイスタイミング」
「うわ、こんな偶然ある?」


まるで冗談かのような流れに、肩を上げて笑うカデン。
受付の女性もくすくすと口元に手を寄せて笑みを見せた。


「できるだけ急ぎで向かいたいとの話でしたので、
 お声掛けしたらもしかしたら・・・」
「その人どこに居るか分かる?」
「上の階へ。 ナツキ・カシュナータさんという御方です」


記憶にない名前だった。 ふむ、と1つ頷くディスの傍ら、
紹介された名を聞いたカデンは少し頭を傾けた。


「・・女の人? 男?」
「男性ですよ。 大変気さくな方で、偏見かもしれませんが・・・」


言い淀む受付に、今度は2人とも首を傾げた。
受付の女性は少しだけ笑みを見せる。


「2人と気が合うのではないかと」


ディスとカデンは思わず顔を見合わせた。





森の通過と誘導準備



(ディスみたいな近接強い人は居たりする?)
(ディスさんみたいな御方・・・?)
(俺を基準にすんのやめよーぜ?)

(・・・ディスさん並の方は・・・そうなかなか・・・)
(ですよねー。 やっぱディス強いんだなぁ)
(英才教育とかいう奴な)
(俺、お前とは高校からの付き合いなわけだけど。
 未だにその先生の話よく知らねーんだよなぁ?)






メーゼ不在でディスを書けるのは不思議な気持ちだな、定期。


ディス・ネイバー
  強い大剣使いの旅団員としてちょっと名が知れてる。
  カデンとは高1からの付き合い。 なんとか設定盛れないかと苦戦してる

カデン・アガフィア
  3年生の時「依頼1人無理な時ディス捕まえていい?」の宣言して、
  宣言通り定期的にディス捕まえてる人。 容姿が決まらない。

ナツキ・カシュナータ
  2人に紹介された魔術師。 創作世界初登場予定。





 

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