創作世界

□夏休みのレーシュテア寮
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じりじりとした日差しが容赦なく照りつけ、蒸し暑い日が続いていた。

世間の学生達は夏休みに入った直後であり、
帰省なり旅団体験なりとそれぞれが思い思いに過ごす。

そんな夏休みに入って間もなく、レーシュテア高等学院の前を通る
街道から少し外れ、レーシュテアの学院寮の前に馬車が停止した。

馬車の傍に付き添うように立っていた背の高い男は護衛だと想像が付く。

鞘に収まっている大剣を背負い、鮮やかな紫色の髪を揺らした青年は、
黒いタンクトップであるがゆえに少し日焼けした肌を晒していた。

寮前に辿り着くと彼は御者といくつか会話をしていると、
寮の外で自主練していたらしい特戦科生徒が馬車に気付き、
馬車を視認できる程度に駆け寄った。


「あれー!? ディスさんだー!」
「どうしたんですかー!? 学院休みですけどー!」


大剣使いの彼を知っているらしい生徒が驚いたように声を投げかける。

寮生が訪問に気付いたことに気付いた、
ディスと呼ばれた青年は小さく笑みを浮かべて声を張り上げた。


「知ってるよー!」


生徒と馬車の間はそこそこの距離があり、少々声を張らげなければ届かない。

その張り上げた声が届いたのかその声を聞きつけ、
偶然出入り口付近に居た寮生徒がわらわらと出て来る。


「馬車の護衛ですか?」
「うーん、寧ろ依頼したのは俺かな。 最近暑くね?」
「タンクトップなのにまだ暑いと?」

「めっっっちゃ暑いです、もー汗だく」
「だろーと思って、っと」


青年は馬車の荷台の後ろに回ると、荷台の扉を開けた。

扉を開けると心なしかひんやりとしていて冷たい空気が流れてくる。
それと同時に密封された箱が大量に山積みされているのが見て取れた。

ディスは荷台に乗り上がると一番上にあった箱を持ち上げ荷台の端に置いた。


「運ぶの手伝って」
「え、なんですかこれ めちゃくちゃある」

「これな、氷」
「氷」
「氷?」


予想してなかった突然の届け物に大量の氷に、
思わず疑問符を浮かべる生徒達。

それを知ってか知らずか、ディスは次々と箱を持ち上げ、
箱を取りやすいように荷台の端に置く。


「おーら、大量にあるからどんどん運べー。
 そこそこ重いからできるだけ2人以上で運ぶようにしろよー」
「どこ運んだらいいですか?」
「休憩室でいいよ、広いとこ。 あ、他に人居たら呼んで! 人手欲しい」


氷が入っているらしい巨大な箱がいくつも。
生徒達はディスの指示に従いながら氷の入った箱を寮の中へと運びに行く。

荷台から全て氷の入ったらしい大きな箱が消えると、
ディスは荷台の一番奥にあった小型な箱を両脇に2つずつ抱え、
馬車を動かしていた御者に礼と挨拶を述べた。

それで馬車は仕事を終えたようで、
馬の軽快な足音が遠くなっていくのを見送る。

両脇に箱を4つ抱え両腕が塞がっていたディスを案内するように、
生徒が扉を開け彼の出入りを誘導する。

休憩所にみっしりと埋まった密封された氷の入った箱達。

氷を運ぶのに一役買った生徒も、騒ぎを聞きつけた生徒も集まって
休憩所はそこそこな人数で埋まっていた。

寮内にも冷房は入っているはずだが、
大量にある氷のせいか普段より室温が低く感じられる。


「おーっし、全部運んだな」
「ディスさーん、何故氷だったんです?」
「ふふん」


鼻を鳴らしたディスは、両脇にあった箱を近くに居た生徒達に一旦預け、
そのうち手元に残した1箱をがさごそと開封する。

生徒達に自慢するかのように、
箱から取り出したそれをディスは掲げて見せた。


「じゃじゃーん」
「かき氷機だ!?」
「かき氷機!」

「手動と自動2つずつある! さ、氷溶けないうちに削れ!」


生徒達から歓声が湧き上がった。





夏休みのレーシュテア寮



(ディスさんはこの後どうするんです?)
(あ、俺稽古付けてもらいたーい!)
(んー、んじゃ夕方までだったらいいよ)
(やったぜ!!)

(用事とか大丈夫なんです?)
(いいよ、多分大丈夫だろ)
(多分?)
(いや、やっぱこれなんか用あったんじゃない?)






多分サークルお題で【かき氷】と【学生】が被った時に考えたネタだと思う。


ディス・ネイバー
  レーシュテア寮生の特戦科を卒業したOB。
  手動かき氷機は街で氷の準備してた時に、街の人に譲ってもらったもの。
  夕方まで稽古付けた彼はこの後アニティナに移動する。





 

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