めぐいせ

□偶然の出会い
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「うっ・・・。何が起こったの?」

聖華は目を覚ました。目を擦りながら起き上がると、辺りに広がった景色に驚いた。
辺りは森だった。草や花の匂いがし、太陽が眩しい。

「な・・・んで? 私、図書館に居たはずなのに」

頬をつねってみるが痛い。夢じゃないようだ。
聖華は立ち上がり、服に付いた草を払う。

(思い出した・・・。あの黒い本がいきなり光って、意識が無くなったんだっけ)

由香もいない、ここがどこなのかも分からない。
どんどん不安になってきて、聖華の目に涙がじんわりと出てくる。
制服の袖で涙を拭くと、服に涙が吸い取られていく。
そして一旦深呼吸する。森の中だからか空気が美味しい。少し不安がおさまっていった。

(とりあえず、この辺りを探索してみようかな)

歩き出そうとした瞬間、森の奥からガサリと物音を立て何かが来た。
草木の中から現れたのは、3匹の狼。

「嘘・・・。やだ、こっち来ないで・・・!」

恐怖で足が震えて動けない。
狼は着実に近づいてきて、1匹が聖華目掛けて飛び込んできた。

「っ!!」

とっさに目を瞑った。でも一向に狼は襲ってこなかった。
聖華はそっと目を開けてみると、そこには銀色に輝く剣を持った人が居た。
どうやらその人が襲ってきた狼を倒したようだ。
黒色のフードがついた短いマントを着ていて、そのフードを深く被っている。
後姿しか見えないので男か女かも分からなかった。

「・・・大丈夫?」

その人が声を掛けてきた。声からしてたぶん男性だろうと聖華は思う。

「だ、大丈夫です。ありがとうございます」
「後ろに下がっておいて」
「はい・・・」

聖華は言われるままに後ろに下がった。
まだ少し足は震えているけど、さっきみたいな恐怖は消えている。
あと狼は2匹いる。フードの男は狼に向かって走り出し、剣を構えて狼を切った。
素早くて無駄のない動きだ。

(凄い・・・! 強いんだな、この人。でもなんで剣なんか持っているのかな?)

残り1匹になった狼は、勝てないと思ったのか森の中に逃げていった。
すると、男は振り返って聖華の方を見る。
フードで顔が見えにくいがフードの中から青い髪の毛と紫の目が見えた。美形の男性だ。

(あの髪色と目の色、日本人でも外国人でもない・・・)

一方、男もじろじろと聖華を見回した後、言った。

「君、武器は持ってないの?」
「武器? そんなもの持ってないです」
「どうして? 武器を持たずに森に入るなんて自殺行為じゃないか」
「だって武器なんてこのご時世、どこにも売ってないですし・・・」

その男は、まだ疑問が抜けないようだ。
聖華も聞きたい事があったので、口を開いた。

「あの・・・ここはどこですか?」
「森の中だけど」
「いえ、そうじゃなくて地名とか・・・」
「ソレイユ国のヴェール村のはずれだよ」
「え? ソレイユ国、ヴェール村? 日本じゃないんですか?」

分からない事だらけになる2人。少しの沈黙が続いた後、男は言った。

「ねえ、もしかしてこれも見たことないの?」

そう言うと男は、自分の手を指差してみせた。
すると男の手から、火が吹き出した。偽者じゃない、熱い本物の火。

「えっ!? これ、なんでですか?」
「・・・魔法だよ。本当に知らないんだね。とりあえずずっと森の中にいるのもまた狼が襲ってくるかもしれないし、一旦僕の家に来てよ。色々話したい事があるんだ」





 

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