めぐいせ

□武器の腕前
1ページ/1ページ






「でも、練習って具体的にどんなのですか?」

聖華は言った。武器も魔法も無い世界で育った彼女には戦うという概念が無い。
ライの話を聞いてから、少し不安そうだ。ライは少し考えてから言った。

「とりあえず1つでも武器を持って扱えるようになる事が先決かな。あと魔法もやって欲しいけどまず魔法の才能があるかも分からないからどうしようもない。でも一応、魔法の説明もしたいな」
「私に戦う事が出来るでしょうか・・・」
「大丈夫だよ、ちゃんと教えるから。僕も君を元の世界に戻せるように頑張るから」

不安そうな聖華に優しく言うライ。すると聖華も少し微笑む。

「始める前から諦めていてはいけませんね。私も頑張ります。なんとかやって見せますよ!」
「心強いな。じゃあ、早速だけど武器だけでも決めておこうか。護身用にもなるからね」

ライは本棚に隠れていた大き目の箱の中から大剣、ナイフ、槍、弓と矢、杖、銃を取り出し床に置いた。そしてライは自分の腰にさしていた剣もはずしてそれも床に置いた。

「よし、こんくらいかな。じゃあ、聖華。剣以外は僕が以前使ってたもので悪いけど試しに使ってみていいよ。自分に合ったものがあればそれはあげるよ」
「えっ。本当にいきなりですね・・・」

色々な武器を目の前にする、聖華。
すると聖華の視線を1つの武器に集まる。

「あっ・・・」

聖華は小さく呟き、茶色の弓を手に取った。

「私、弓道部なんですよね。弓ならいけるかも」
「きゅうどうぶ? 向こうの世界の何か?」

ライは頭を傾げながら聖華に聞く。
ライの世界には弓道部はおろか部活という概念はないようだ。

「あ、この世界にはないのかな。えっと、学校の活動で弓を使ってたんです」
「ふーん。こっちの世界は学校の授業で弓を使うけど、その弓道部とは違うものなのかな」
「こっちは授業じゃなくて、個人で好きにやる集まりみたいな感じだと思います」

少し納得したようにライは頷く。
弓を軽く構える聖華にライは言う。

「じゃあ弓で決まり?」
「えっと、決める前に外で少し弓を引いてきてもいいですか? 私が使ってたものとは形が違うから、出来るか分からないんで」
「分かった。いいよ、いくらでも」
「良かった。じゃあ、早速・・・」

聖華は弓を片手に矢を1本取り、外に出て行く。
ライも聖華の後についていく。

外は少し太陽が下がって西の空がオレンジに染まりかけている。
2人は、家の隣の小さな空き地に出た。
聖華は近くに誰もいない事を確認し、
20mほど離れた一本の木に向かって弓を構え矢をつがえる。
聖華の真剣な眼差しが、その木を捕らえる。矢から指を離すと矢は風を切り木に向かって飛んだ。
そして、木に見事矢が刺さった。ライは軽く拍手する。

「見事なもんだね、これならそんなに少し練習すれば、実践でも使えると思うよ」
「ありがとうございます。この弓、本当にいただいてもいいんですか?」
「いいよ。僕は剣があるから大丈夫だよ。というかこっちこそ僕のおさがりなんてあげてごめんね。今度、もっといいの買うから今はそれで我慢しといて」
「えっ、買うなんてそんなの申し訳ないです。私この弓で十分ですよ!」
「でもその弓結構古いからしばらくしたら壊れると思うよ。それに僕そんなに貧乏じゃないから大丈夫」

ライは優しく微笑む。
聖華は少し悩んでから、申し訳無さそうに言った。

「じゃあ、お言葉に甘えて・・・今度買ってもらっていいですか」
「いいよ。それに何も遠慮せずに頼ってくれていいからね。じゃあ家に戻ろうか」

ライは快く答え、家に戻っていった。聖華もその後について家に入った。





 

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ