めぐいせ

□それぞれの夜を
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聖華はコンコンというノックの音で目が覚めた。

「セイカ様ー。お食事がご用意出来たのでお持ちいたしました」
「は、はい! 今行きます!」

若干寝ぼけてる頭を軽く振りながら、乱れた髪を軽く整える。
ドアを開けるとカウンターで会った元気な女性が、
ご飯やおかずが乗ったおぼんを持ちながら立っていた。
そして聖華は女性からご飯を受け取る。
聖華の世界のご飯とは少し違う雰囲気のご飯。聖華は女性にお礼を言い、食事を部屋の机に置いた。

「美味しそう・・・」

数時間寝ていたので疲労は少し落ち着いたようだ。
お腹が減ってた聖華は、箸を手に取る。

「この世界にもお箸ってあるのね」

なんて独り言を呟きながら、料理を口に運ぶ聖華。

「・・・美味しいっ」

それからお箸を止めることなく、食べていた。
腹が満たされた聖華は、お箸をおぼんに置きなおし満足そうに息を吐いた。
窓から外を見ると夜の闇が村を覆っていた。
見える光は月と星の光。街灯が少ないせいで星が綺麗に見える。
聖華はもう一度ベッドに潜り込む。さっき寝たばっかりだから睡魔はもうない。
ぼんやりと聖華は思う。

(今日は色々あったな・・・。この世界は何もかもが初めてで分からない事だらけだ。でも・・・それでも私がこんなに落ち着いてるのはきっとライさんがいるから・・・ライさんの微笑みが優しくて落ち着くから。・・・これから頑張ろう、元の世界に戻るために、ライさんの役に立てるように。助けてくれたのがライさんみたいな優しい人で本当に良かった・・・)

聖華は枕に顔を突っ込む。その顔が少し微笑みを浮かべてたのは気のせいかもしれない。


その頃、ライも聖華のようにベッドに転がってた。
キッチンにはライが食事を食べた後の残骸が残ったままだ。
ライは静かに目を閉じ思う。

(今日は驚いたな。あの子・・・こんな慣れない世界に来て可哀想に。でも・・・僕が協力しようとしてるのは可哀想だけだからじゃない・・・彼女が一生懸命で素敵な子だと思ったから。・・・これから頑張らなければ、聖華を元の世界に戻す為にも、自分のために。助けたのが聖華みたいな良い子で良かった・・・)

ライは黒いフードを顔を隠すように深めに被りなおす。その顔が少し悲しそうだったのは気のせいかもしれない。

その後、気づくと2人は夢の世界に行ってしまった。


次の日の朝。聖華はまたノックの音で目が覚めた。
ノックの次に聞こえてきたのはライの声。

「聖華ー。起きてるー?」
「い、今、起きました・・・!」
「部屋、入っていいかな?」
「ちょっと・・・待ってください!」

聖華はすぐさま起き上がり、髪と服を整えた。
そして軽く頬を叩く、寝ぼけている頭が少し働くようになる。
聖華はドアを開ける。

「おはよう、聖華。よく休めた?」
「おはようございます。ぐっすり寝てました」
「良かった。もう宿屋出ても良いかな?」
「はい、大丈夫です」
「じゃあ行こうか」

ライは振り返り、1階の階段に向かう。
聖華は机に置いたままの銅貨3枚を手に取り、ライを追う。
2人は宿屋からでる。とても天気が良く清々しい朝だ。
聖華は銅貨をライに渡した。

「あの宿屋のおつりお返ししますね」
「ああ、わざわざありがとう。・・・君のいた世界とはお金の事情は違った?」
「はい、結構違いました。あとルリってお金の単位ですか?」
「うん。君の世界のお金の単位はなんだったの?」
「円です。100円とか・・・」
「へえ、次元が違うだけで色々違うものなんだね」

ライは渡された銅貨を袋に入れなおす。
それぞれの夜をお互いの事を考えて過ごしたからか、2人の距離は少し縮んだように見えた。





 

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