めぐいせ

□ライのホワイトデーサプライズ
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*ライのホワイトデーサプライズ*



「うーん・・・」

飾られた箱に入ったチョコレートやクッキーのお菓子が並んだお店の棚を前にして、僕は悩む。
なんで僕がこんなに悩んでるか。それは今日がホワイトデーだから。

1ヶ月前のバレンタイン、僕は聖華にチョコをもらった。
そのチョコのおかえしの為に僕は今日ここにいるんだけど・・・。
言ってしまうと・・聖華の好きなお菓子が分からない。

ちょっと前にスイーツ店に行った時、美味しそうに食べてたし甘い物は好きだと思うけど・・・。
なら無難にチョコかな? マカロンとかもあるけど聖華は好きなのかな? 
聖華の好きなものをあげたいけど直接聞くのは嫌だ。
できればサプライズでびっくりさせたい。

「どうしようかな・・・」

なかなか考えがまとまらない。とりあえず他の店も見てみようかな。
そう思い僕は店を後にした。

足取りは少し重くて、溜め息がこぼれた。こんなに何かに悩んだのは久しぶりな気がする。
他の店を探しているとスイーツ店を見つけた。聖華と行ったスイーツ店だ。

そこでドアの前の看板についてあるチラシを見つけた。チラシに書いてある事を読む。
へえ・・・これはナイスタイミングだな。これなら聖華も喜んでくれるはず。
でもこれは聖華に本当のことを言わずに呼んでこないとダメだな。
そうじゃないとサプライズにならない。
とりあえず聖華が居る宿に戻るか。



思ったとおり宿に彼女は居た。さて、なんて言うべきか・・・。
・・・・よし。うまく演技できればいいな。
僕は聖華に向かって言った。

「ちょっと道具とか調達したいから・・・手伝ってくれないかな?」

出来るだけ普通を装って言う。自然に言えてればいいけど・・・。

「はい、いいですよ。行きましょうか」

聖華は快く言ってくれた。どうやら信じてくれたみたいだ。
じゃあ行こうかと言って僕達は宿を出た。

ちょうど道具屋はスイーツ店の前を通って行かなければならない。
スイーツ店の方向に向かっていっても不自然じゃないから助かる。
スイーツ店が少しずつ近づいて来る。
その前を通り過ぎる瞬間、僕は聖華の腕を引きお店に入ろうとする。
聖華はいきなり引っ張られてやっぱり驚いてるようだった。

「どうしたんですか!?」

聖華は僕に聞いてくる。
でも僕はその返事をせず、聖華の腕を引きながらスイーツ店に入った。
幸いにも聖華は入り口の看板のチラシを見てなかったようだった。
良かった、無事サプライズになりそう。



店内に入るとやっぱりいつもより賑わっているようだ。
広めの店内の机はほぼ埋まってる。
僕は聖華の腕を離し、店員さんの居るカウンターで先に会計をする。
もちろん僕と聖華の2人分のお金を出した。
すると店員からお皿とフォークが載った、丸いおぼんを2つ渡された。

片手に1つずつおぼんを持つ。そんなに大きくないし重くないから普通に持てる。
振り返ると聖華は訳が分からないって顔をして立っていた。
そんな聖華を見て、僕は少し笑ってしまった。
とりあえず聖華におぼんを1つ渡し、言った。

「ケーキ、好きなの選んで。スイーツバイキングだから好きなだけ食べれるよ」

そう、僕が見た看板のチラシに書いてあったのはスイーツバイキングのチラシ。
今日が最終日みたいだ。なんとも良いタイミングだった。
これなら聖華も好きな物を食べれるし、サプライズにもなったみたいだし・・・。
僕も甘いものは好きだし、一緒に食べれる。
本当に僕は運が良かった。でも聖華は手を軽く振って遠慮した。

「え・・・でも申し訳ないですし・・・」
「もうお金払っちゃったから」
「じゃあ後でお金返しますから」

聖華がそう言うと僕は自然と溜め息が出る。
もしかして気づいてないのかな・・・?

「今日3月14日でしょ。大人しく奢られといてよ。そうじゃないとお返しにならないから」
「あ、今日ホワイトデーでしたか。じゃあ・・・そうですね。奢られときます」

忘れてたのか・・・。その言葉を僕は飲み込んで、そうしといてと聖華に言っといた。
聖華は嬉しそうに微笑み、おぼんを受け取る。
それは本当に嬉しそうで心から笑ってるようだった。
喜んでくれたみたいで良かった・・・。僕は少しほっとした。

僕はバイキングのスイーツを見る。
ショートケーキやロールケーキ、ワッフルやクッキーなども置いてあった。
種類が豊富だな。これだけあると流石に迷ってしまう。

何にしようかなと思ってる間に聖華は苺タルトとチョコのマカロンをお皿に取っていた。
決断が早いな。もしかしてそれが1番好きなのかな?
僕もとりあえずアップルパイをお皿に取った。
2人がけのテーブルで聖華と向かい合って座る。
窓際の席でやわらかい太陽の光が入ってきて明るい。
聖華は既に苺タルトを食べていた。僕もアップルパイにフォークを入れながら聞いた。

「聖華ってさ、苺タルト好きなの?」
「はい、好きですよ。ライさんもアップルパイ好きなんですか?」
「うん。・・・他に好きなお菓子とかあるの?」
「そうですね・・・基本お菓子は何でも好きですよ。でも特に苺とかチョコが好きですかね」
「分かった・・・覚えておくよ」

僕はアップルパイを食べながらそう言った。
聖華は僕の言葉について少し不思議そうな顔をしてからまた苺タルトを食べ始めた。
少しの沈黙が続く。すると聖華はフォークを持つ手を止め、微笑みながら言った。

「今日はありがとうございます。とても楽しい日に・・・いえ、今までで1番のホワイトデーでした」
「いや、僕も楽しかったよ。こちらこそありがと」
「でもいきなり腕を引っ張られて、びっくりしましたよ」

聖華は小さく息を吐く。そんなにびっくりさせてしまったのか。
僕は少し笑いが漏れる。

「ごめんね。サプライズでびっくりさせたかったんだ」
「笑い事じゃないですよ・・・本当に驚いたんですから」

聖華はチョコマカロンをかじりながら言った。
そしてケーキを取ってきますと言って立ち上がった。

今日は本当に良い日になった。
聖華も無事喜んでくれたし・・・それに聖華の好きなお菓子も知れた。
今はまだ聖華の好きな物や嫌いな物とか知らないけど・・・これから知っていけば良い。

小さくなったアップルパイにフォークを刺して、1口で食べる。
気のせいだったかもしれないけどいつもより甘くていつもより美味しく感じた。



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*HAPPY WHITE DAY*





 

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