オセロゲーム
□game-1
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「坂田篤だ。今日から一ヶ月お前の研修を担当する」
「……よろしくお願いします」
ぺこり、と頭を下げながら私は顔を下に向けたその一瞬で眉根を寄せた。
(う、うそでしょーー!!)
『それで?その人の名前はわかるの?』
『うん。確か名前は…坂田篤さんって……』
そう。何と神頼み虚しく、私は噂の鬼先輩が担当となってしまった。
頭をあげ、もう一度目の前にいる坂田先輩を見る。
(………真顔)
当たり前だが今は仕事中。意味もなくへらへら笑っている方がおかしいのだけれど、その表情からは全く何も伺いしれない。
噂通りなのか、杞憂なのか…始まってみなければわからないようだが、とりあえず…
(とりあえず、話し方は怖め、と)
悲しい事実を一つ確認しながら、誘導されるがまま坂田先輩の席へと移動する。
「新人研修で一通りのことは習ったと思う。まずは復習もかねてこのデータを整理しておけ」
そういって渡されたのは合わせて5センチほどの分厚さの顧客データだった。
(け、結構量があるな…)
「わかりました」
渡されたデータを持って自分の席へと戻る。
内容を軽く確認すれば、新規、フェア参加者、仮契約者、本契約者と分かれている様だった。
これを名前、住所などの基本事項から事前に取ったアンケート内容、打ち合わせ内容などまでをデータベースに入力する作業だ。
デスクの時計に目をやると時刻は午前9時5分過ぎだった。
(…よし)
心の中で気合を入れ、パソコンに集中力を向けた。