進撃の兵長

□聖夜に堕ちて
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「兵長…。」
「こんなところにいらしたんですね…。」

呼びかけられて振り返る。

俺の手には花束…。
ここは……兵団に併設の教会の聖堂………。

振り返った先には一人の女性団員。
見慣れない顔だが…なぜか懐かしさを覚える。

「パーティーには出られないのですか?」

女は続ける。
今日はクリスマスイブ。
兵団でもパーティーが開かれている。

俺は再び祭壇の方を向いて手に持っていた花束を手向け、祭壇を見上げたまま答える。

「くだらんな。」
「食糧難に生活難…。」
「壁の内側の暮らしで人民が皆苦しんでると言うのにそんなことしている暇はない。」

女はそう答える俺に、呆れもせず、穏やかに話す。

「それでも人々はこういった機会に救われ、生きる活力とすることができるのですよ。」

「ふん。俺には必要ない。」

俺は視線を足元に落とすと、出口へと向かう。

「そうでしょうか?」

女はすれ違い間際にそう問いかけてくる。
俺が立ち止まり、

「………どういう意味だ。」
と、問うと、

「ご自分でわかりませんか?」
女は心配そうにそう答える。

「…何が言いたい。」

「兵長は…救いを求めていらっしゃる。」

「……くだらん。」


俺が再び歩き出すと…。

「こうして兵長がここに通うのも…。」
「救いを求めているからではありませんか?」

女は俺の背に問いかける。

「お前に言う必要はないな。」

「兵長は怯えていらっしゃる。」
「過去になってしまった人々を忘れ去らなければならない現実と…忘れてしまう恐怖に…」

「………。」

俺の足が自然と止まる。

この女に何がわかるのか…。
初対面の人間に、他人に見せたくない自分の心の底を見透かされたようでイライラする。

「そして、許しを乞いてる。」
「自分が救いきれなかった命に…。」

女は尚も続けた。

俺の足は勝手に女の元に向かう。

………そして俺は、女の胸ぐらをつかんで言い放つ。

「お前に何がわかる。」

「わかりますよ…わかります。」
「兵長の苦しみも悲しみも寂しさも…全部。」

「お前…黙らせるぞ。」

なぜだ…。
普段の俺であれば、こんなでたらめなことを言う人間に、感情的になることはない。
しかし今日は…自分でも納得がいっていない感情全てを言い当てられていることに動揺しているのか…感情が制御できない。

「そういうところ…全然変わりませんね…。」

女がなぜか一筋涙を流す。

……なぜだ…。
俺は、その涙に心の中を掻き乱される。

「黙れと言っている…!!」

俺は自分の意思と無関係に女の頭を自分の方に引き寄せ、唇を重ねる。

女は抵抗することなく俺のキスを受け入れた。

触れた唇から暖かな温もりが伝わってくる。
その温もりがあまりにも心地よくて…。
俺は、その温もりを逃すまいと、繰り返し唇を重ねる。

「ん……兵長……。」

女から吐息に似た声が漏れる。
俺はそれすらも逃したくなくて、キスを続けた。


俺がようやく女を離したときには、女の目には涙が溢れていた…。

「これに懲りたら、二度と俺の前でくだらん話を聞かせるな。」

俺はそう言って、女に背を向ける。

すると女は、俺の服の裾を掴み…。

「そんなに悲しまないで…。」

そうつぶやく。

「……。」

その言葉が妙に俺の心に響く。
俺は背中越しに、お前の声を聞く。

「兵長から大切にしてもらったこと…。」
「みんなちゃんと感謝してるよ。」

泣きそうな……消えそうな声…。

………何故だろうか…。
そんな単純で、根拠もない言葉なのに…。

ーーーーー俺の心が軽くなる。

それと同時に、その言葉の全てを自分のものにしたい衝動に駆られる。
俺は女の方を振り返ると、女の手を強引に引き、俺の部屋へと連れ帰る。


そして……

「お前は何者だ??」

俺が女に問うが、女は微笑むだけで何も答えない。

…俺も、それ以上は聞かなかった。
何故か、聞いてはいけない気がしたからだ。


俺がゆっくり女の頬に触れると、女はそれに従い、ゆっくりと目を閉じる。

俺は自然と女の唇に自分の唇を重ねる。

本能の赴くままに、女の唇を求めると、少し苦しそうに女が俺を制止しようとするので、その手を掴み、女の動きを封じる。
女はそれ以上抵抗しない。

そして、一度離れた唇は、首筋を通って耳元へと向かう。

女の口から吐息が漏れる。

多分言葉は必要ない。
俺が女を欲していることを女はすでに理解している。

俺が女を欲し…女が俺を受け入れるたびに、俺の心の重りが取り払われていく。

心が…洗われる………。

「兵長……。もう…悲しまないで……くれますか?」

「………。」

「兵長……。もう…ご自身を責めないで……くれますか?」

「………。」

俺は無言で女が零す言葉を聞きながら、女の肌に口づけを落としていく。

女は、そんな俺の髪を撫でながら、なおも言葉を零していく…。

「私があなたを包むから……。」
「私があなたの不安を背負うから……。」
「私があなたのそばにずっといるから……。」
「もう…それ以上……背負ったりしないで…。」

不思議だ…。

どんなに考えても…どんなにもがいても…。
消し去ることができなかった胸の苦しみが…。
今はどこにも見当たらない。

俺の心は…。
羽のように軽くなっている。

女の暖かさに触れると…全てを包み込み…全ての苦しみがなくなるような…そんな感覚に陥る。
もっと…欲しくなる……。

女は俺の求めに従い、衣服を解いていく…。

俺は女のはだけた胸元に唇を落とした。

「んっ…!!」

女の口からこぼれるその声に、俺の本能が高揚する。
そして、次第に、俺の舌先は、女の肌をなぞり…敏感な部分へと進んでいく。

「…んっ……はぁっ……。」
「へ……兵長…!」

女が俺を呼ぶたびに俺の思いは止まらなくなる。

柔らかい肌を揉みあげると、女の肌は一層紅葉する。
女の表情、声、体温……それだけで、世の中の全てを忘れ去るのに十分だ。
俺は、その、麻薬のような感覚に溺れていく…。

俺が女の秘めた部分に手を差し入れると、しっとりとした感触を覚える。
それと同時に、女の体がピクリと跳ねる。

「や……ぁん…!!」

そして、溝に指を添わせれば…。
クチュ……と音が聞こえる。

女が恥ずかしそうに顔を背けるのを、手で抑えて無理やり俺の方を向かせて制止する。

「や…ぁ……。」

そんな言葉は聞きたくない。

「嫌?そうじゃないだろ。」

と、俺は指を中に差し入れる。

「あぁっ!!!」

女の体が硬くなる。

「体は正直で何よりだが…。」
「…俺が欲しいからってそんなに締め付けるな。抜けなくなるだろ。」

「はぁ……んん…!」
「あ……あぁ……んんっ!!」

俺が女の中を掻き回すと、女は顔を歪めて喘ぎ声を上げる。

……満たされる。
もっと……もっと乱したい。

俺は自分自身を溝に這わせた…。

女はこれに腰をくねらせて感じている。



……限界だ。

俺が女を抱き寄せながらゆっくりと女に侵入すると…。

「やぁぁあ……はぁ……ん!!」

と……女の体は腰を上げて悦ぶ…。

「聖女のくせに…随分と…ふしだらな腰使いだな。」

「そ………んな……っ!!」

俺がさらに女を引き寄せて深く侵入する。

女の体がピクリピクリと反応している。

「全てを忘れさせてくれるんだろ??」
「だったら加減できない。」
「覚悟するんだな。」

俺は思いのままに、女を愛した。



〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜




俺が次の朝目覚めると…。

そこには女の姿はなく…。
空いたベッド上の空間が物悲しさを纏う。

求めようにも、女の温もりはどこにもない。

俺は天井を見上げた。

不思議と寂しさはなかった…。
心の温もりが消えずに残っている…。

軽くなった心を胸に…。
今まで得ることのできなかった幸せな眠りに再び落ちていった。

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