進撃の兵長

□聖なる夜に
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「ちょっとリヴァイ。」
「少しはニコリとかしたらどうなの?」

ハンジさんの声が響く。

「うるせー。俺に構うな。」

いつもの如く気だるそうな兵長。

「リヴァイ。これはお前の誕生日も兼ねてるんだぞ?」

団長が語りかけるが、

「ふん。俺は頼んでねー。」

兵長の態度は変わらない。

「まったく毎年毎年…可愛くないね。」

「大きなお世話だ。」

ハンジさんと、兵長のいつものやりとりが始まる。


「…兵長って……どちらの生まれなんですか??」

私がそこに、疑問に思ったことを口にすると…。


………空気が一瞬止まる。



「忘れた。」

兵長が静寂を破ってぼそりと言う。

「え?」

私が何かまずかったかなと、表情を固めて聞き返すと、

「まぁ…知らなくても無理ないな。」

と、団長がフォローを入れてくれる。

「??」

私にはみんなの言っている意味がわからない。
私が不思議な顔をすると、

「リヴァイは置き去りにされた子だ」

と、団長が教えてくれた。

私は息を飲む。

「へいち……」

「別に気にするな。」
「俺自身別に気にしてない。」
「むしろ変な親がいるよりかマシだと思ってる。」

と、私の言葉を遮るように兵長が話し出す。

「………。」

私は言葉を失った。

「まぁ、そういうことだから、生まれが何処なのかわからないのさ。」
「物心がついた時には王都の地下の孤児院にいたらしい。」

ハンジさんがそこに続ける。

「…そうすると…兵長の誕生日って……?」

私がようやく言葉を発すると、

「リヴァイが拾われたのが、12月25日の深夜だったから…ということだな。」

団長が答えてくれて…

「………。」

私は…言いかけた言葉を飲み込んだ。
気にしないと言った兵長の言葉…。
それでも、どこか寂しそうだったから…。



〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

パーティが始まり、兵団の幹部が集まって日頃の労をねぎらい合う。
団長は途中で、明日も仕事だから、後は飲み過ぎないようにと言い残して自室に戻って行った。

ハンジさんはエレンに絡み酒。
巨人への思いを熱く語っている…。

近づかない方がよさそう。

オルオさんは酔いつぶれてるし…他のみんなも賑やかに飲んでいて…手に負えない……。

時は間も無く午前0時。

すでにケーキも食べたし、少し片付けて私はお暇しようかな…と、私が部屋の中をぐるりと見回すと、兵長が部屋から出て行くところだった。

もうすぐ兵長のお誕生日なのに…。
私はその後を追って部屋を出た。



私は兵長の部屋の前で兵長に声をかける。

「兵長?」

兵長が振り返る。

「………なんだ。」

「あの……。せっかくもうすぐ兵長のお誕生日になるのに…兵長はみなさんと迎えられないのですか?」

「…下らん。」

兵長が部屋に入ろうとする。

私はもう一つ、どうしても兵長にい言いたいことがあり、慌てて声をかけた。

「あ…あの……!!」

そこに、ハンジさんの声が響く。

「あれーーー??リヴァイは???」
「あいつどこに行きやがった??」
「今日こそ巨人を研究することの意味をあいつにわからせてやる。」

大きな足音とともに声がこっちに近づいてくる。

兵長は私の腕を掴むと、部屋に引き込み、鍵をかける。
間も無く、ハンジさんが部屋のドアを勝手にあけようとするが、鍵に阻まれドアは開かず、部屋には誰も居ないと認識したのか、そのまま何処かに行ってしまった。

兵長がようやく私の腕を離し…真横で私に問いかける。

「…で、何を言いかけた?」

私はすぐ近くで発せられる兵長の声にどきっとする。
そして、すぐさま兵長から少し距離を置き、俯き加減に話し始める。

「………あの…。」
「さっきは嫌なことを思い出させてごめんなさい。」

私は勢い良く頭を下げる。

「言ったはずだが?俺は気にしてない。」

「ですが…。」

「それよりも…だ。」
「お前、あの時何か言いかけなかったか?」

「…あの時……?ああ……。」

私は考えを巡らせて、思い出したものの、口を閉ざす。
別に、伝えるべきことでもないと思ったからだ。

「何だ?言え。」

「そんな、たいしたことじゃないので…。」

私が両手を振りながら断るが、兵長は…

「言えと言っている。」

と、強引だ。

私は観念して…

「兵長は、神様からのクリスマスプレゼントだったんですねって…言おうとしたんです。」

と、恐る恐る俯き加減に答えると…。

兵長は無表情で私を見つめている。
表情からは、兵長の気持ちを読み取ることはできない。

「あの…。兵長??」

「ふん。二度目だな。」

「??何がですか?」

「いや。そんな事を言われたのは、育ての親以外にお前が二人目だ。」

「…そうですか……。」

兵長の表情は相変わらず変わらないが…雰囲気が少し丸くなったのは気のせいだろうか…。


私は相変わらずの兵長の視線にいたたまれなくなって…

「あの……。私そろそろお暇しますね?」

…と、私が振り返り、ドアノブに手を伸ばしかけると…

兵長の腕が私の肩越しにドアを抑えつけた。

兵長の体温を背中で感じている……。

私は突然の出来事に、身動きができない。
その反面、心臓がジタバタと騒ぎたてていてうるさい。
兵長の息遣いが耳元で感じられ…
全身の感覚が覚醒したようだった。

「へ…い………ちょ…??」

「俺はまだ、俺の誕生日を祝ってもらってないんだか?」

「…………あ……。」
「あぁ……あはは。」
「そうですよね!!」
「あの……お祝いするので……できれば、あの…少し離れて貰えると……。」

私は体を強張らせたまま答えた。

「ふん。言葉なんていらねー。」
「俺はお前を貰う。」

………耳元で発せられた思いがけないその言葉に私の思考回路は完全に停止する。

「はっ………ははははは!!」
「兵ちょっ……。酔ってませんか?大丈夫ですか??」

私は努めて明るい声で、しかし、身動きが取れずに硬直した状態で兵長をたしなめる。

「俺は殆ど飲んでねーよ。」
「あんなところで飲める奴の気が知れん。」

兵長の声がどんどん耳元に近づいてくる。

「だったらその……。」

私は慌てふためく。

「だったら…??」

慌てる私を治めるように、後ろから回された兵長の手が、私を抱き寄せるように私の服の中に滑り込んでくる。

「だか……ら…だったら………んんっ!!!」

首筋にキスされる……。

「あのっ…へい………ちょ!?」

上ずる声で必死に兵長をやめさせようとするか…。

「うるさい。」
「あんまり喚くと廊下に聞こえるぞ。」

「いや…だって……。」
「ちょっ……あぁっ…!!」

兵長のキスの感覚に膝がすくむ。
しかし、兵長の強い力で引き立てられ、座ることも、逃げることもできない。

兵長は首筋へのキスをやめない。

「へい……ちょ……!!」
「まっ……て……んんっ!!」

「お前は俺のプレゼントなんだろ??」
「だったら黙って言うことを聞け。」

「なっ!……ちがっ……。」
「いつ私が兵長のプレゼントになったんですか!!」

「お前この前、『兵長が欲しもの、何でもあげます』とか言ってたじゃねーか。」
「俺の欲しいものがお前なら、お前は俺のプレゼントだろ。」

「あ……。」
「それは………。」
「………って!!!」
「私そんな事言ってませんよ!!」
「兵長が欲しいものなんてない等とおっしゃるから、兵長が欲しいもの、考えておいて下さいねって言ったんです。」
「一瞬、兵長が真面目な顔してそんな事言うから、私、そんな事言ったかもとか思っちゃったじゃないですか!!」

「ふん。同じことだろ。」

「違いますよ!!!」

「じゃあ…。お前は俺に………くれないのか…??」

兵長の声が少しトーンダウンする……。
兵長の寂しそうな声が耳に残る。

「そ……それは……。あげなくは…ないですけど……。」

「じゃあ決まりじゃねーか。つべこべ言うな。」

兵長の声が元に戻る。

「え?ちょ…!!」
「兵長!!!」

兵長は私を後ろから抱えると、ベッドへと投げる。

「ちょ…!!痛っ!!兵長!!!」

「うるせー奴だな。黙らせるぞ。」

兵長は私の上に馬乗りになると、私の指を自らの指に絡ませて握り、ベッドに押し付ける。

ベッドが…軋む。

「へい…ちょ……?」

「名前で呼べよ。」

「そん…な………無理んん!!!」

私の拒否の言葉を塞ぐようにキスをされる。

暖かいものが…私の唇を割って入ってくる。
それだけで頭がぼーっとする。
舌が絡み合う感覚に、体の力がどんどん抜けていく。

ようやく唇が離れ…。

「名前で呼べ。」

そう、肌に触れそうな距離で囁かれると…。
脳とは別に、体が勝手に命令に従ってしまう。

「リヴァイ……。」

私がそう呟くと、再び兵長が私の唇を奪っていく。
今度はゆっくりと…でも、激しく…。
息つく暇もなく、求められるが…苦しくても、幸せな気分になるから不思議だ。

兵長の指が私の肌に直接触れてくる。

触れられた所が…熱い……。

兵長のキスは、私の乱れた呼吸を奪うように続けられ、私はその苦しさと快感に酔いしれる…。

兵長のキスが耳元…首筋へと移動していくと…。

私の口からは吐息混じりに甘い声が漏れるようになる。

部屋に響くキスの音……。
兵長の体温。
肌を撫でる感触…。
全てが私の理性をかき乱す。

「へ…いちょ………。あ…ん……っ!!!」

「名前だって言ってんだろ。」

「リ……ヴァイ……っ!!!
んんん!!!」

兵長の指は既に私の敏感な部分を弄んでいる。

「やっ……あん……!!」
「んんっ……はぁ………!!」

もはや、私に抵抗の色はなく、ただ単に兵長の愛撫に忠実に反応する奴隷と化していた。

「喘げよ。もっと……もっと……。」
「そして、俺の心を満たしてくれ。」
「心配するな。声はこの雪が全部吸収する。」
「誰かに聞かれることはない。」


「………堕としてやるよ……。」

「そして…。」
「お前の肌の隅から隅まで…俺のものだと証明してやる。」

「お前は……今日から俺のものだ。」


〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜


シャワーの音で目が覚める……。

生まれたまままの状態で兵長のベッドの上で布団にくるまっていることに気づき…。

昨日のことを思い出す。

そういえば……。

パーティーの会場をそのままにしてきたことに気づき、急いで服を着て戻ってみる。



………。
死屍累々………。

酔っ払いがあちらこちらに転がっている。
いや、本物を見慣れているので、どうってこともないが……。
返って、息がある分、こっちの方が厄介な気がする。

そんな折。後ろから声をかけられる。

「地獄絵図だな。」

兵長だ。

「どうしましょう…。」

私は振り返りもせずに問いかける。

「さあな。ほっとけ。」

「………。」

ため息しか出ない。

そこに、団長が後ろから近づいてきた。

「またこの有様か。」

「団長……。どうしますか……?」

私が団長に問いかけると、

「自己責任だな。」

と、呆れ顔で答える。

そこに、さらにハンジさんが背後から兵長に肩を組んで登場する。

「あーあー。全くだらしないねぇ。」

「8割方お前が潰したんだろ?」

兵長が身じろぎもせず答える。

「勝手に潰れる方が悪いんだよ。」

「ふん。こいつらも救われねーな。」

「ところで。気に入って貰えた?
私からのクリスマスプレゼント。」

「は?」

兵長が始めてハンジさんの方を向く。

ハンジさんは、兵長から腕を離すと、私を後ろから抱きしめて。

「美味しかったでしょ?」

と、兵長に私を抱く姿を見せつけるように問いかける。

……私の顔が一気に赤くなるのがわかる。

「ちょっ!!ハンジさん!!!」

私がハンジさんの腕の中でジタバタもがきながら抵抗するが…。

「ふん。お前から貰った覚えはないが……まぁ合格だ。」

兵長が顔色一つ変えずに答えている。

「ちょっ!!!兵長まで!!!」
「なにを…!!」

「でしょーー!だったら、また、新しい巨人捕まえるの手伝ってよー!」

ハンジさんは私が暴れているのをよそに、腕の力を強め、ニコニコしながら兵長と話を進める。

「断る。」
「だいたいさっきも言ったが、俺はお前から貰ったわけではない」
「本人から直接貰い受けただけだ
。」

「えーー!!ケチ!!!」
「団長も何か言ってくださいよ。」

「リヴァイ、お前、部下に手を出すのは服務規程違反だぞ。」
「まぁ…相手の同意があれば別だが。」

団長がちらりと私を見る。

私は既に抵抗する力もなく…ゆでだこ状態になっている。

「ふん。そいつに聞け。」

兵長がその場から立ち去ろうとする。

「どこへ行く。」

団長が兵長に問いかける。

「今日は誕生日休暇だ。部屋に帰る。」

兵長が団長に背を向けたまま答え、さらに、

「何をやっている。行くぞ!」

と、兵長は私に声をかけるが、私は団長に肩を抑えられ、引きとめられた。

「それは認められない。」

兵長が始めて振り返る。

「なぜだ。」

「この有様じゃ、有事の際出動できない。」
「従って、今日動ける者の休暇は許可できない。」

「ちっ。めんどくせぇな。」

兵長が吐き捨てるように言う。

「さぁ。片付けを開始するぞ!」

団長の声が部屋に響く。

部屋の中で寝込んでいた酔っ払いが少しずつ動き出す。


そして…そんな時に私の肩を後ろから掴む者がいた。

私が振り返ると…。

「せん……ぱ…い。気持ち悪い……。」

エレン君が真っ青な顔で立っている。

そして、さらに逆の肩も掴まれる。

「お……俺も……。」

「オルオさん?!」

オルオさんも、口元を手で押さえ今にもな状況。

「ちょっ!」

私が助けを求めようと周囲を見回すと、兵長はフラフラと部屋から出て行こうとしているし、団長は周囲の団員を起こしにかかっている。

ハンジさんはそそくさとその場から退散……。

「ちょっとーーーー!!!」
「みんなの薄情者ーーーーーー!!!!」

………今年は…忘れられないクリスマスになった…。

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