進撃の兵長

□その怪我を癒すのは
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「ぜぇ…はぁ……ぜぇ…はぁ……。」
「おいお前!!!」
「ちょっとこっち来い!!」


兵長が肩で息をしながら部屋に入ってきたかと思うと、作業中の私の腕を突然掴み、部屋から引っ張り出す。



「ちょっ……兵長……痛いんですけど…。」


兵長は私の腕を掴んだままずんずん先に進んでいく。


「うるせぇ。」
「たまには黙ってついて来い。」


兵長は振り返りもせずに、早足で私を引っ張っていく。


「たまにはって……。」


兵長にも一応、普段私を無理やり連れ回している自覚はあるんだ……。


私は、そんな余計なことを考えながら、兵長の後を追った。


ーーーーーーーーーーーーーー



バタンと大きな音を立てて部屋のドアが閉められる。



すると兵長は、私をすぐさま壁際に追いやると、片手を私の肩の脇の壁について立ち塞がる。


「おい。」



兵長が真顔で私を直視して言う。


人類最強の視線である。
いたたまれない威圧感を感じる。


「な……何でしょうか…??」


答えは自然と吃ってしまった…。


「…お前、今日がキスの日だって知ってたか??」


「し……知りません…。」

どう押し殺そうとも、声に緊張が現れてしまう。



「嘘つけ…。」
「お前が俺がそんなこと知るはずがないと零していたと周りから聞いた。」


「そ……それは………。」


わたしは口を噤むしかない。


私は、兵長がキスの日を知ってるなんて思いもしなかったので、諦めていたのだが、やはり寂しくなってポロっと不満が出てしまったのである。


私が気まずくなって顔を背けて視線を背けると、兵長は私の顎に触れ、強引に自分の方に向け直す。


そして唇同士が触れ合えそうな距離で…。


「欲しいなら欲しいと直接言え。」
「言わねー奴には罰だ。」

と、囁いてくる。


「そ…そんな……無理ですよ……。」


「うるせぇ。」
「とにかく俺にちゃんとキスして欲しいと言えばいい。」

と、そう言った矢先に唇を重ねてくる。


私は兵長の肩を両手で押して押し返すが…びくともしない。


兵長のキスは甘く甘く重ねられ、私はそれを受け入れることしかできない。


兵長の舌が私の舌を絡め取る度に私の指先に力が篭り、兵長の服を掴んでしまう。

「やっぱり欲しいんじゃねーか。」


「ち…ちが………。」


「違わねーっつってんだろ。」

もう一回するぞ?


「え?ちょっ…ダメ……っんん!!!」


私が拒否する間も無く、またもや深いキスを何度も受ける。

そして、

「今度はベッドに移動するか?」

と、キスの余韻が残る私の肌にそっと唇を這わせながら言う。

「へ…ちょっ……え?何それっ…ちょ……困る〜!!!!!」


私は兵長に抱えられるようにして部屋の奥に消えて行くのだった。
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