Starry☆Sky
□蠍座的雨の日の過ごし方
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蠍座的雨の日の過ごし方
▷射場で2人…道着のまま床に座り込み、土砂降りの雨の向こうの的を眺めている。
▷お前は…つまらなそうに的を見つめ、
「まだ練習したかったな」
▷と、つぶやく。
▷犬飼を始め、木ノ瀬や白鳥は、雨による練習の中止で、喜んで帰って行ったというのに…。
(本当に…一生懸命な奴だ。)
▷その一生懸命さには、俺も叶わない…というか……。
▷目を奪われる。
▷眩しくて…透き通っていて…そして…強い。
▷いつからだろうか。
▷お前から、目が離せなくなったのは。
▷恋愛経験が少ない俺にでもわかる…。
▷明らかな恋心だ。
▷でも、こいつの周りには、幼馴染を始め、俺よりももっとお前を喜ばせることのできる男がたくさんいる…。
▷そう思うと…。
▷情けないことに、怖くて自分の気持ちに向き合えない自分がいた。
▷だから…。
▷せめて…雨が止んだらお前の練習に付き合うという名目で、射場で2人…雨が止むのを待っていた。
▷黒く低い雲から、滝のように落ちてくる雨粒を見つめている。
▷こんな天気でも、こうして、お前の横顔を眺めているのは悪くない。
▷…悪くないが、的を見つめるお前の顔が寂しそうで、切なそうで…。
▷そんな顔をさせたくない等と思っていたら…。
▷気が付けば、自分の手の甲でお前の頬に触れていた。
▷不意に向けられるお前の視線に、心臓が跳ね上がる。
▷俺は即座に手を引っ込め、それと同時に、起こしてしまった自分の行動に気付く。
わ…悪い……。
▷お前は不思議そうな顔でおれの顔を覗き込むので…。
▷赤くなった顔を隠すために俺はお前から顔を背けた。
▷すると、お前は俺の手を取り…。
▷俺の手を撫でながら
「練習のし過ぎで手が荒れてるね」
▷と言って撫でる。
▷俺は恥ずかしいのと、緊張するので、耐えられず、手を引こうとするが、意外に強いお前の力で、抑えられてしまう。
▷そして、お前は道着の合わせに手を差し入れると、ハンドクリームを出して、俺の手に塗る…。
「この練習好きな手、私は好きだけど…」
「部の勝利を担う、大切な手だから、大事にしてね。」
▷と、優しく俺の手をさするおまえが…あまりにも愛おしくて…。
▷お前の優しい笑顔が見たくて…。
▷お前の顔がよく見えるように、顔にかかった髪の毛を反対の手でそっと脇に避ける。
▷雨で湿気た空気が少し高めの気温が相なり、お前の顔は、少し汗ばみ、独特の色気を漂わせている。
▷上目遣いで俺の表情を伺い知るお前が俺の理性をかき乱す。
▷息苦しいほどの雨で、俺の思考回路もまともではない。
▷気付けば…。
▷俺はお前の腕を掴み、お前を引き寄せると、
▷おまえの唇に、自分の唇を重ねていた。
▷一度触れてしまうと、もう、自分の欲望を制御することなどできず…。
▷何度も…何度も何度も、お前を求めるようにキスをする…。
▷初めは身を硬くして、自分に起きたことを理解できていなかったお前も…
▷次第に力は和らぎ、俺を受け入れ…時折声を漏らす。
▷その声に反応するかのように、キスは激しくなり…。
▷やっと、唇を離すと…お前は、恥ずかしそうに俯いた。
▷……でも、いつの間にか握っていた俺の道着の袖口を、ぎゅっと握ったまま離すことはなく…。
▷その手は少しだけ震えていた。
すまない…。
▷そう俺がつぶやくと、お前は俯いたまま、首を横に振る。
じゃあ…。
ありがとう…。
▷俺がそう言うと、お前は真っ赤になった顔を上げ、俺に抱きつく。
▷俺はそれを受け止めると、お前の頭を撫でながら耳元で言う。
▷雨でかき消されないようにしっかりとした口調で…。
俺は…おまえが好きだ。
▷お前はその言葉に、俺の肩に顔を押し付けながら、コクリと頷く。
▷お前のその反応があまりにも可愛くて…。
まだ足りない…。
▷俺はまだまだお前にこの気持ちを伝えたいと願い…
▷俺は、抱きついているお前を少しだけ離すと、顎を上げさせ、顔を近づけた。
「誰かに見られるかも。」
▷そう言うお前に、
この雨がすべてを消し去るから問題ない
▷と答え、お前に口づける。
▷そう、この雨で、外に出てる奴なんていない。
▷たとえいたとしても、この雨で、俺たちが何をしているかまでは見えない。
▷おまえが漏らす吐息も、息遣いも…。
▷すべては雨が消し去ってくれる…。
▷俺は、このまましばらく、雨がやまないことを願った。