ラッキー★ドッグ
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「よう、キティ」
廊下を歩いていたら、やたら艶のある声に呼び止められた。
あまり豊かじゃない胸も潰して隠してはいるが、顔と小柄な体格だけはどうにもならないせいで俺はかっこいい男には見えていない。男に見えているのかも怪しいラインだと自分で思う。見えたとしても、精々可愛らしい男の子止まり。
だから、囚人にからかいを含んだ声をかけられるのはしょっちゅうだが、ドン・グレゴレッティに話かけられるのは想像してなかった。
「ルキーノ・グレゴレッティ………俺に何か?」
「んなに警戒しなくても人払いはきちんとしてあるさ」
肩をすくめてルキーノは言った。つまり、看守の真似事をして固い口調で話さなくてもいい、ってわけ?
それにしても、人払いをもう済ませてあるなんてなにか用事があったのだろうか。
俺がここを通るのかも分からないのに、人払いとはご苦労なことだ
「あぁ、勘違いするなよ?
用事があるのには変わりないが、いまさっきまでジャンと話をしてたんだ」
「あぁ、なるほど。
……それで、用事とは?」
タイミングよく俺がこの廊下を通ったって訳か。言い方はよくないけど、つまりはついでってことだ。
ベルナルドから俺のことを聞いたらしい。
「手紙、確かに受け取った。」
「仕事が早いんだな、ベルナルドは」
「あぁ、可愛いキッティがむさ苦しいとこまで出向いてくれたって上機嫌だったぜ?」
「よく回る口……」
口説かれているのかからかわれているのか分からないが、どちらにしたって不快きわまりない。
冗談でも思わずむっとしてしまう
「お前、どこの隊なんだ?」
「あー、……俺は隊ってよりはCR:5専門のなんでも屋さんだから…」
俺に決まったコマンダーは居ない。
カポから直接任務を与えられてそれをクリア出来ればゲームセット。
「あえて上げるなら、カポがマイマスター……になるんじゃねぇの?」
「なるほど……
じゃあ、ボスのお抱えの黒猫、…ブラックキャットってのはお前の事かアリシア」
ブラックキャット。随分と安易だが馴染みのある通り名だ。
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