ラッキー★ドッグ
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「おはよう、ジャンカルロ」
「よっ、アリシア!ジャンで構わないぜ
俺の名前って長いだろー?」
「ありがとう、ジャン
少し言いづらいって思ってたんだ」
今日は、俺一人で朝の仕事だ。正確には、一人になってしまったので仕方なく、なんだけど。
昨日ジョシュアに細かく教わっていてよかったよ……
ロイドって奴が、ホモなのは態度や身振りでなんとなく分かる。ベットに誘われたから、なんとなく気づくとかそういうオブラートに包まれた問題じゃないんだけど……
だけど、お目当ての囚人とのお喋りに夢中で仕事放棄、後は任せた新人君だなんて…ちょっとあり得ないぞ。いや、俺が居たから放棄出来たんだろうけど、新人の俺を一人で回らせるなんて、なんてやつだ……
しかし、これで接触がだいぶ楽になるのも事実。ロイド、中々いい仕事するじゃないか。いや、仕事はしてないけど……。
「………ところで、俺の事誰かから聞いたか?」
「ふえ?いーや、まったく?
なんかあるのけ?」
くちゃくちゃとガムを看守の前で堂々と食べるのが、出来るのがびっくりだ。ここの看守は甘いんだな、多分。それとも、このくらい緩いのが普通なのか俺には検討も付かない。
……どうやら、ベルナルドやルキーノからは聞いてないようだ。
教えておいてくれれば良かったのに……。気のきかない連中だ
朝、一人の囚人と長々と話す時間は残念ながら無い。
「……見せてやるよ」
「っ!……そ、ゆ、コト」
ばらしてしまえば、これから脱獄の手助けが簡単になる。
手っ取り早く、腕を捲って家族の証であるタトゥーも見せればジャンはにやりと笑った。
「確かに、なーんか変だったもんな。納得納得」
「………変だった?」
「ウン。
歩き方が、ちょーっぴしね」
意識はしてないが、カタギより静かなのは間違いない。
それにしてもジャンカルロ、着眼点も中々見所があるようだ。なんて、買い被りすぎ?
でも、見た感じフレンドリーで楽しそうな奴だから好印象なんだよな。
「気を付けるさ、グラッツェ」
「いえいえー」
こういうのは中々自分では気が付かないものだ。言ってもらえると助かる。
潜入なんてしたことないから、やっぱりカタギの真似っこなんて慣れそうにない。
「あ、あと脱獄を手伝うようにマスターに言われてきたんだ。
逃げるとかは、俺も連れていってくれよ?」
「ワーオ。
………六人の脱走なんて聞いたことねーぜ…」
「いや、おれは塀の外で落ち合えればいい。道中の護衛もマスターから頼まれてるし……
期待してるぜ、ラッキードッグ?」
「………ご期待に沿えるように頑張りマスワ」
いくらラッキードックとはいえ、そう易々と何人も一緒に脱獄させるなんて難しいだろう。俺は囚人ではなくて看守の立場だから逃げるのも難しくないだろうが、後で合流するのはリスク高いし難しい。……きっと、俺は人質かなんかの名目で幹部御一行様と塀をこす事になるんだろうな……。
だから、ジャンもこんな微妙な顔をしてる。
ジャンのひくついている頬っぺたをつついてやりたかったが、時間が無かったから止めておいた。
「ま、必要なもんとか合ったら言ってくれ」
「そいつは助かる!」
囚人よりは、脱獄の道具とかスムーズに集められる。
ジャンが嬉しそうにコクりと頷いたのを確認して、その場を後にした。
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