フリーザ様
□フリーザ様と一緒に映画沿い
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※ベジータ視点
※映画“神と神”
トレーニングルームで鍛練していたら界王から破壊神ビルスが地球の、此処へやってくると連絡が入る。ガキの頃に惑星ベジータにやってきたビルスを思い出せば、ヤツは今まで出会ってきたどんなヤツらとも比べられぬほどの強さを持っていた。蟻を潰すかのごとく地球を潰せるのだ。今日はブルマの誕生日パーティーをやるだとかで庭で大勢が騒いでいる。万が一、その中の誰かがビルスの気を悪くさせたら…と考えたらゾッとして、慌てて庭へ向かった
「…ベジータ……。あなたも聞きましたか」
「…フリーザ……その様子だと、貴様にも界王から連絡が行ったか」
外へ出た途端オレにかかる声。返事をすれば、ええ、と静かに頷くフリーザ。顔にはうっすらと冷や汗が浮かんでいる。どうやらフリーザもビルスを知っているようだ。それは当然、その恐ろしさごと
「よりによって地球にいらっしゃるとは…。これは困りましたね」
「チッ、どうする…もうすぐやってくるぞ」
「あの方は気まぐれや遊びで簡単に星を潰しまくるとんでもない方です」
お前がそれを言うのか
「ですが、礼節を欠かなければきちんと話を聞いてくださいます。…こちらの話が通るかは別として」
「礼節…。ようはお行儀よくしてりゃいいってことか…やらねぇよりはマシか」
「ええそうですね。余計な怒りを買わないようくれぐれも気をつけてくださいねベジータ」
「ヘッ、貴様に言われるまでもねぇ」
「ホホホ、それは失礼」
こんな野郎と、まるで共闘してるみてぇで胸クソ悪いがしかたない。まあそれも、カプセルコーポレーションで共に暮らすことになった今となっては、今更すぎる話だが。しかし、過去に散々、宇宙を支配しているともてはやされてきたフリーザでさえ恐るようなヤツなのだ、破壊神ビルスというヤツは。出来る事なら、オレ達以外には会わないまま帰ってくれりゃいいんだがこうも人数が多いと難しい。…クソが、カカロットの野郎はなにしてやがる。考えてたって解決はしない、オレ達は揃って気を引き締め直す
『あっれー?ベジータさん鍛練終わったんですかー?フリーザ様とふたりでいるなんて珍すぃー!こりゃあ地球が滅ぶかな!?なんつってー!あっはっは!』
「名前さん…」
「名前てめぇ…」
引き締め直した気持ちを容赦なくほぐしてくる女が現れた。まったくシャレにならねぇシャレをかましてヘラヘラしてるこの女は、よくわからんがフリーザに飼われている(※ベジータの偏見です)。この女、かなり頭が悪い。勉強が出来ないわけではないようだが、今の発言だけでもほとばしるバカさがあったろう
「名前さん…、なにか御用ですか?」
『いやなんもー?ただ珍しいコンビだなーって思ったからおちょくりにきた』
「そうですか…」
『あ、フリーザ様これ食べます?すっごい美味しいですよ!』
「いえ、私はけっこう、」
『どうぞー』
「ちょ、やめ、やめなさい!」
『はいこっちもー』
……。
手に料理を載せた皿を持っていた名前は、フォークに料理をぶっ刺してフリーザに押し付け強引に食わせては笑ってやがる
『あ、ベジータさんも、』
「いらねえに決まってるだろうが!」
『えー?美味しいのに。ねっフリーザ様!』
「アナタよくその満面の笑みで私と目を合わせられますね」
……。
フリーザの額に浮かぶ青筋が見えてない、ということはないはずだがこの女にはお構いなしのようだ。しかし今のオレ達はこの女にかまっているヒマなどない。と言うか、コイツが側に居ると碌なことがないからさっさと消えてほしい。被害がフリーザだけのうちに早く
『てゆーかベジータさんっ!』
クソッタレ!
『ベジータさんてば!』
「……なんだ」
『あれあれ、あれ見てくださいよぉ〜!』
「アァ?」
バッシンバッシンとオレの腕を叩く名前のニヤけたツラがうざい。だが促されるままに名前が指差す方向を見ると、そこにはトランクスと見知らぬ少女が並んで座り何やら楽しそうにしている
「…あんなガキ居たか?」
『それがなんと、トランクスのカノジョなんだってー!マイちゃんってゆーんですけど、可愛いですよねー!てゆーかトランクスって年上がタイプなんだー!あっ!?ちょ、近い近い!すごい急接近してるあのふたり!ヒュ〜!トランクス肉食ぅ〜!さっすがサイヤ人の王子の息子だもんなー!ねっ!ベジータさん!』
「…」
「…楽しそうでなによりですよ」
フリーザの渇いた微笑みにはさすがに同情する。ブルマやトランクス、カカロット共はこの女とよく意気投合してバカをしている。この女はバカだからバカな行動しか取れないのだが、オレの身内を巻き込むのは止めさせたい。しかしフリーザの言う事すらたまにしか聞かない女がオレの言う事を聞くなど皆無に等しい。知り合った当初、バカ過ぎる名前にむかっ腹立って軽く体を突き飛ばしたら10メートルほど吹っ飛んで全治2ヶ月の大怪我を負わしたことがある
そう言う人種なのか異世界人だからなのか、名前は極度に弱かったのだ。フリーザが過保護過ぎて気持ち悪いと思っていたが、これが大きな要因らしかった。フリーザ・ブルマやトランクスはもちろん、だいたいのヤツらからバッシングを受け四面楚歌になったオレはあの時から名前に必要以上に強く出れない。しかし、だからこそ今は一刻も早くこの女を俺とフリーザの側から離さなければ。ビルスが現れたらおしまいだ。バカだからあっという間に怒りを買って殺されるに違いない。コイツならビルスに息を吹きかけられただけで体が霧散しそうだ
「…名前さん、用が済んだのなら席へ戻りなさい。歩き回って食事するなんてみっともないですよ」
『はあい』
言いながらやんわりと名前の背を押して人の輪の中へ帰そうとするフリーザ。トランクス達が気になるらしく素直に方向転換した名前。これで名前が立ち去ればあとは気を探り警戒していればなんとかなるだろう
………そんなオレの考えなど、バカの前では通用しないのだ
『あれ?お客さんじゃない?あっどうも〜!フリーザ様、ベジータさん、あたしちょっとブルマさん呼んでくるから待っててもらって〜』
何者かにぺこりと頭を下げて小走りで去って行った名前が見ていた場所には、気の感じられないふたりの男が立って居た。その出で立ちと幼い頃の記憶から、背の低い猫のような姿をしたほうが何者かを知る。震えと冷や汗の止まらないフリーザを嗤うことは出来ない
地球オワタと瞼をそっと閉じたオレは、ビルスとその供らしき野郎が揃って名前の姿を目で追っていたことに気づいていない
宇宙の審判
(ねえウイスあの子…)(ふむ、これはまた珍しい)
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悟天ください