フリーザ様

□審神者してるフリーザ様の周りをチョロつくB
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※へし切り長谷部視線
※シリアス



時の政府と審神者による会合に出席されていた主が唐突に席を立ち上がり、周囲の声に一切耳を傾けず部屋を出て本丸へ戻ろうとするのと、血だらけのこんのすけが転送システムから飛び出して来たのは同時だった

歴史修正主義者による本丸襲撃。それは審神者と言う指揮官が不在の時を狙いすましたように起こった。主の後を追ってきた政府の者や審神者の幾人かはこんのすけの姿を見て悲鳴を上げた。こんのすけはウチの本丸のこんのすけで、血は返り血だった。本丸が襲撃されたと声にならない声で言う。後方で息を呑む音を聞いた。後ろに控える俺には、帰りますよ と、いつもと変わらぬ口調の主のお顔は見えないが、こんのすけが小さく身震いした。主と俺たちが転送システムの中に入って行くのを見て我に返った人間達が大声で何か叫んでいるが、関係の無いことだった。静かな主の後ろで、俺も静かに抜刀した

それはひどい有り様だった。空には暗雲が立ち込め、所々破壊された本丸からは怒号と刃のぶつかり合う音が響く。こちらから と、こんのすけに促され裏手から入る。正門に比べればやや平常を保ってはいるものの、血があちこちに飛んでいる。逸るように駆けて行くこんのすけを追った先には破壊された歴史修正主義者が無数に散らばっていて、その中にひと振り、知ったものの姿があった。小夜左文字さん。主が名を呼べば地に伏していたソイツは鈍い動きで顔だけ上げた。焦点の合わない瞳は、それでも主を探している。握られた刀は血塗れで刃こぼれしていて、使い物にならないのは一目瞭然だ。散らばる歴史修正主義者たちを沈めたのは、その小さな刃だった。
―――あのひとは あっち
あっち とはおそらく大広間を指しているのだろう。この先にあるのは厨とソレくらいだ。指も動かせない小夜左文字が、蚊の泣くような声で続ける。
―――復讐の、つもりなんかじゃない しなないで
言い終えて、小夜左文字の姿は弾けて消えた。残された彼が握っていた刀は小さい亀裂を幾つも作り、静かに折れた

折れた小夜左文字を見届けた直後、俺の心臓が早鐘を打つ。玉鋼で出来ただけのちっぽけな心臓が、恐ろしいまでにざわめき出したのだ。抜刀した刀を握りしめる手は一気に冷えて、背筋が粟立つ。呼吸をしていたかも定かではない。行きますよ。主のお声が無ければ動けぬままだったかもしれない。あの人はあっち。小夜左文字の言う“あのひと”が脳裏に浮かび上がると今にも駆け出してしまいたくなったが、足早に、しかし走り出すことの無い主の後ろに必死で控えていた。途中、厨を横切ると甘い匂いがした。それは嗅ぎなれた優しい匂いで、いつもの本丸の匂いだった。日常はすぐ傍にあるのに、先を走るこんのすけが落として行く血だけが現実のようで道標のようで、空恐ろしくてたまらない

胴を深く斬り付けられた姿は絶命を意味している。それは脳裏に浮かんだ姿とは似ても似つかないものだった。血の池地獄の中に沈んだその人は、今朝方たしかに笑いかけてくれていた人だった。壊れた歴史修正主義者だらけの、激しい戦闘を物語る大広間の隅で、赤黒く染められ横たわる名前様と折られた刀が居る。その刀はこの本丸でいっとう古く、そしていっとう強かった。折られてなお、その刀身は名前様の前で守るように床に刺さり鈍く光っていた。こんのすけが息をするのも苦しそうにひいひい鳴いている。俺は目の前の光景を受け止められていないのだろう、血に汚れた服を早く洗って差し上げないと とおよそ場違いなことを考えた。主はじっと見据えて動かない。このお方の思考は俺になぞ測れるはずもないが、常ならば誰に誘われずとも名前様の居られる場所を迷うことなどなかったのだ。それが、こんのすけに誘われて此処までやって来たと言うことは、つまりそう言うことなのだ

さほど時間は掛かっていなかったと思う。主がふいに手をかざすと、まずは折れた刀が床から引き抜かれてゆらゆらと俺の前にきた。それを受け取ると、主は次いで名前様の身体を浮かばせ、己の手でそっと抱える。なにをなさるのです。こんのすけには返事せず、主はまた 行きますよ とだけ告げた。どこへ。反射的に出た言葉は渇いた喉を通ってがさついた。みっともないソレを主は拾い、帰るのです と言う。かえる。それが何処を指すのかわからない。帰る場所は此処ではないのか。このお方の思考は俺になぞ知るすべもない。動き出せずにいる俺とこんのすけを見遣り、主は続けた。折れたものが幾つかいます。連れて行かなければ名前さんが悲しみますから、他のものも含めて全て連れて来なさい。振り返ることをせず歩き去る主の背を見つめる。咄嗟に浮かんだのは目の前で折れた小さな刀だった。自らの意志で復讐以外の為に刀を振るったあの小さな子

主の言葉を何度も何度も頭の中で反覆する。わからないことばかりだった。姿形が異なる主に、俺たちの歴史を知らない名前様。何と比べても異質な二人は、しかし俺の主で守るべき方で、お傍に置いて欲しいと願ってやまない方々なのだ

連れて行ってくださるのなら、地獄だろうが奈落だろうがかまわない。大昔 俺を下げ渡したあの男も、素晴らしいお方であった長政様にも、御目通り叶わなくなろうともかまわない。零から俺を見てくれたこの方々のお傍に居られるのなら、俺は――――





主には摩訶不思議な力がある。付喪神のソレでも審神者のソレでも無い、禍々しく恐ろしい力だ。主と名前様に帰る場所があるのだとしたら、此処は要らない場所なのだ。一見優しく見える名前様を抱える手でもって、此処を破壊するなど訳無い。主の手のひらから、名前様が綺麗だと言って憚らぬ鋭い光の球体が造られたが、それをどうしたのか知ることも無く俺の世界はいまここから生まれ変わるのだろう























明日にはきっと泣いている



(哀しい)(嬉しい)(そのどちらとも、拭ってくださる手がそこに在るのなら)(他には何も望みません)























ーーーーー
・夢主の気が感じられなくなって慌てたフリーザ様
・ビルス様あたりに迎えに来てもらって悟空たちの所に帰る
・ドラゴンボールで復活
・でもムカついたから刀剣の世界の地球は破壊したフリーザ様
こんな感じ。
ちなみに夢主の側で折られた刀は蛍丸です。

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