文章

□鶴丸国永の最期
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※捏造過多

本丸が強襲されて、戦争の中で唯一平和であったはずのそこはまたたく間に戦地と化した

『鶴丸、刀身に亀裂が…!』
「いいんだ。いやなに、今更これくらいどうってことない」
本丸の最奥、審神者の部屋に一人と一振 息を潜めている。本丸の隅から隅まで禍々しい空気が立ち込めているが、この部屋だけはまだ僅かに神聖さを残していた。しかしそれも、つかの間の気休めでしかない
「落城するな」
片腕を失い、傷だらけの姿で、扉から見えぬ位置に審神者を置いて跪く鶴丸国永は言葉と裏腹に落ち着いた声で言った。亀裂の入った刀身はそのまま人の形に影響する。他の刀剣はもう居ない。鶴丸国永にはもう審神者を守りきれない。悔しさが胸を埋めた時は過ぎ去り、今 胸の内は酷く凪いでいた
『鶴丸…さいごにもう一度だけ言う。…本当に、これでいいんだね』
否と言うはずないとわかっていて、それでも審神者はいま一度問う。それに対し鶴丸国永は躊躇い無く口を開いた
「俺だけじゃあない。他の奴らもすべてだ。俺たちは主とさいごを迎えると決めている」
顕現されたその日から続く契約の為なんかではない。刀でありながらもひとつの意思をもつ存在として、自ら選んださいごだ

圧倒的な数を前に勝機はなかった。これがさいごのときだ。次々折られていく刀剣を目にして嘆く暇も、駆け寄る隙も与えられぬ審神者はそれだけを悟る。審神者に逃げ場所など無い。さいごは本丸と共に朽ちるだけ。此処に放り込まれたときに既に与えられていた最期なのだ。それでも、刀剣達を逃がすことは出来る。しかし審神者の言葉に首肯するものはいなかった。引くものはいない。それは人に扱われる道具の、おそらくは本能のようなものかもしれない。刀であるのなら、主と呼べる者がいるのなら、人の身があるのなら。さいごまで守るために刃を振るい散っていきたい。守られる側に回るなど考えられなかった
「貴女は俺たちの過去の主と自分をときどき比べて劣等感を抱いていたがな、貴女だって紛れも無く俺たちの主だ」
鶴丸国永ほどの太刀など振り回せもしない華奢な体躯に、刀剣男士より遥かに大きな覚悟を抱いて戦場を見ていたと知っている。いま此処で命の終わりを受け入れようとしている、その覚悟だってみんな知っている
「使ってくれよ、さいごまで」
人の身を得て手に入れたものは数多ある。引き換えに失ったものだってあったかもしれないが、それはもう日々の果てだ。この唇が「あるじ」と形を作り、音を出した日の喜びを忘れはしない。そしてその音に応えてくれるのはたったひとりがいい

「俺は貴女の墓に入って二度と出て来んぞ」


























満ち足りた棺の中で眠るよ



(貴女がくれたすべてがこの身にとっての最期でありたい)

























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鶴丸に最後のセリフを言わせたかっただけ。

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