ドフラミンゴトリップ

□ピンクが嫌いになったヒロイン
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「よく似合ってるぜェ名前チャン」

『お前はチンピラか』







なんやかんやで此処があたしの生きてきた世界とはパニック起こしかけるほど違ってるわ大海賊時代とかなんとか称されてるわ、中二病野郎だと思っていたおっさんも漏れなく海賊なんだわということがわかった。結構お喋りなコイツのお加減で上辺だけとは言え現状をしっかり把握出来たあたしだったが、把握出来たが為にあたしこの世界じゃ即死じゃねーかと話を聞きながらうなだれた

…が、なんか知らないがあたしを異様に気に入ったらしいコイツがさらりと「俺の居る場所が名前チャンの居場所だぜ」と言ってまたあたしをイラッとさせてきたのだが、話し合いの末にあっさりお世話になりまくることにした。もうさくさく行こうよ

そんでなんだかナチュラルにあたしを膝に乗せべたべたしてきたコイツにさらにイライラッとして、風呂に入らせろ服を寄越せと図々しく要求したあたしは悪くないと思ってる

ついでに言えば部屋に備え付けてあるシャワールームに案内され、コイツがまたもナチュラルに自分のズボンを脱ぎだして一緒に入ろうとしたことにイライライラッとして急所を蹴り飛ばしたのもあたしにはまったく非が無いと思ってる。お風呂から上がると、脱衣場にあたしへと用意してくれたと思われる衣類が山積みされていたとしても。だって、全力で蹴り飛ばしたのにちょっと屈んだだけで「フッフッフ…じゃじゃ馬か」とのたまった奴に何を悪びれっていうの

そして今現在、苛立ちを通り越してあたしをげんなりさせているのはやはり、座り心地の良さそうな真っ白いソファにふんぞりかえっている鳥男だ。男の前にあるガラステーブルには豪勢な料理が並んでいて、すごく良い匂いがしてるけどまずはこの怪鳥野郎をどうしてくれよう



「なんだァ?服が気に入らねぇのか?まァ待てよ、島に着きゃあ好きなもん買ってやる」

『……』



へらへら笑う鳥のおっさんの目元は今、サングラスで隠されている(余談だけどコイツの瞳の色は黒というよりダークブラウンだった)。さっきまで上裸だったが白だの赤だのオレンジだののド派手な柄のシャツとボトムを着て、極めつけはド派手なまっピンク、いっそ鮮やかな羽毛のような羽織物を着用している。ガチで鳥だったのか。髪の毛の金色も相まって目がチカチカするんですけど。冒頭でのあたしの発言は正しい

だけど別にコイツがどんな格好をしていようが興味は無い。規格外の体格に規格外のセンスだけど離れて歩けばいいだけだし…と思えない状況なのはあたし自身の服装ゆえである

山積みの服はどれもこれも露出度MAXで過激なのばかりだった。でもまあ可愛いし嫌いじゃないので一枚一枚ウキウキした心持ちで手にしていて気が付く

色使い派手じゃね?

いや嫌いじゃないけどね。とかなんとか思いながら一通り見終わってまた気が付いた

9割ピンクじゃね?

いやね、その時点でなんとなく勘付いてはいたけど…いたけどでもさ



『ペアルック気取りか』

「なかなかクるもんがあるだろ」

『その羽毛弾けろ』



9割りピンクの衣類の中からあたしが選定した只今の服装

白無地に赤いの大きめのボタンが胸元に3つ一列に付く、ホットパンツタイプのタイトなオールインワンに、まっピンク地に大判のオレンジの花柄がいくつもプリントされたお尻まですっぽり隠れるビッグサイズの緩めブラウス

……この沸き上がる殺意をどうしてくれよう



「つっ立ってねェでこっちに来い。食うだろう」

『……』



イヤに決まってるだろ。あたしはペアルックな色使いに目眩がしてんだよ、イヤに決まってるだろ。てか色使いどころか服の着こなしも若干被ってんスけど。泣きたい…とかぶつぶつ考えてたらいつの間にか鳥男が目の前に立っていた



『うわぁっ!』

「おれも腹減ってんだ、焦らすなよ」

『は、ちょ、やめ…!』

「フッフッフ」



知らんわだったら先食べとけよ!一緒に食べたがるとかうっざ!おっさんだろお前!等の抗議をする前にあたしはコイツに抱き上げられ(しかも片手…だと…)ソファに連行された。ふざけんなおいくっ付くな、アンタとくっ付いてたら体格差と服の色具合であたしが完全にカメレオン化してんだよ。どんな保護色だよ

てかさ、この人デカすぎだよね。猫背なのにまったく縮こまってないし身長だけじゃなくてパーツ全てがデカイ。なんだこの胸筋半端ない…これは無罪、うん。というか、こんな人間アリなの?人間じゃないの?やっぱりガチで鳥なの?と、またしても悶々としてるうちにあたしの手は飲み物の入ったグラスを握っていた。あっアイスティーだ美味しい…や、じゃなくて



『膝から降ろしてよこのバカ』

「どれが食いてェんだ?これなんか美味いぜ」

『聞いてくださいます?そして肉を近付けんな自分で食べる降ろして』

「ンだ、肉はイヤか?だったらこっちのはどうだ」

『だから…!』



だからさぁ!聞けよ人の話!コイツまじスルーの天才ね!ちょ、だから口元に食べ物近付けんなって!ばっか!付いてる付いてる!すっごい良い匂いしてるふわふわパンケーキだけど、それシロップ超かかってるせいであたしの口周りねっちょねちょなんですけどあたしシャワー浴びたばっかなんですけど死んでよもう!

しかも切り分けてフォークに刺してるけど切り分けたそれがまだデカイからね。お前これあたしに一口でいけってか。アンタの無駄に大きい口と一緒にすんなよ無理だろ。だから自分で食べ、



『むがっ!?』

「どうだ美味ェか?」

『むーむー…!!』

「フッフッフッフ…そうかそうか、あァ口にシロップ付いちまったなぁ。今取ってやるよ」

『むー!?』








近付いてきたキモいくらい長い舌に焦ってこの男の顔にパンケーキを吹き出したとしても、あたしは悪いことなんてしてないって叫んでいいと思ってる

















バカップルごっこも大概にしろ



(なんだよこいつもお気に召さなかったかァ?)(馬鹿か!キモいんだよ!)(あァあァ、落ち着けってまずはお前をキレイにしてやるよ)(舌しまえ!汚ない顔近付けんな!)














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すごいことになってきた



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