ドフラミンゴトリップ

□愉しいドフラミンゴ
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名前、と名乗った女にドフラミンゴはかつてない興味と執着を示した

忽然と己のパーソナルスペースのど真ん中に現れ、折角だからと味見をしてみたところ今までの人生の中で女からは受けたことのない仕打ちを受けた。軽く会話をしてみると、ドフラミンゴの存在を知らず現状を理解出来ていなかったにしたとしても(知って理解した後はより過激になったが)不遜で、嫌悪や冷たさを包み隠さず全力で自分を貶してくる女に自然と口元は吊り上がった

それだけでも事足りるくらいドフラミンゴを愉しませていたのに、挙げ句、異世界から来たかもしれないのだ。いや、十中八九そうだった。此処は偉大なる航路、そんな奇想天外な事象が起こっても首を縦に振れる場所。ただ、それが己の身に降り掛かる確率というものを考えた時、それはもう雲を掴むほうが簡単なんじゃないかというくらい低い確率になるだろう

名前を前に彼の胸中は、新しい玩具をショーウィンドウ越しに眺める子供さながらに色めき立った

もし、もしも、最初のキスで名前が何らかの理由で流されそのまま致してしまっていたとしたら。覚醒してドフラミンゴと向き合った際にただただ恐怖して怯えていたとしたら。彼女が異世界からのお客様だろうがなんだろうが関係無く、ドフラミンゴは即刻名前を殺していただろう。もしくは百歩譲ってもヒューマンショップ行きだ

後に二人がこの話をする機会があったとしたら、名前はヒューマンショップに売られたほうが精神面ではイイ生活が送れたのでは…?と小一時間は悩んだことだろう。対してドフラミンゴは、抱かなくて良かったと稀に見る率直な言葉を述べて真顔の名前に病院へ行けだのお前は偽物なのかと腫れ物を見るような怯え混じりの視線を浴びせられただろう

それでも彼はきっと、名前に対して怒りを覚えはしないのだ。これは処理や多方面へのひけらかしのみでしか女を扱ったことのないドフラミンゴからしたら、異世界云々などの言い訳は意味を成さなくなるようなとてつもなく大きな意味合いを持つのだが、その事に彼自身が気がつくかどうかはわからない

とりあえず今現在の彼は、自分と形違いで色がお揃いのサングラスを名前に渡し、渡した瞬間に叩き割られていた



「フッフ…つれねぇじゃねェの」

『カッとなってやった』

「そうかそうか…フッフッフ」

『チッ……………チッ…』



ドフラミンゴを睨み上げて二度も舌を打つ名前の様子を見て益々笑いが零れる。というか、名前を見ているだけで笑みが深いものになる。一応今は、プチ騒動的な食事を取り終え一息吐いている最中。名前は結局、食事中も食べ終えた今もドフラミンゴの膝から降ろされることはなく、顔にでかでかと不愉快の文字を貼りつけている

名前は横抱きの形でドフラミンゴの膝に座らされ、身体は強制的に彼へと預けさせられ髪の毛をいいように弄られているが、疲れのせいもあり早くも諦めの境地に立ち不可解なこの状態について考えるのは早々に止めている。そしてとにかく心を閉ざすことに意識を集中させていた

ドフラミンゴはドフラミンゴで、彼女の髪に手を通しながら出会ってまだ数時間しか経ってないのに色々と凄い女だなと自身を棚に上げまくって軽い驚きと感心を抱いていた。口に出せば、お前は寝込みを襲っただろうがと今度はゴミ虫を見るような視線を受ける事はわかっているので言わないが



(こんなに甲斐甲斐しく世話してやってんのによォ)



住居は当然の事、風呂や服、食事の提供なんざやったことがない。それ以前に、自分がこうして理由も無く女を膝の上に乗せるなんて初めてかもしれない。しかも自ら好んで抱き込んでいるとは。そもそもバーやベッドの上以外で女と長時間二人きりになったことがあったか?思い返す限りでは浮かばない。だが実際に過ごしてみると案外悪くない

これは良いことを知ったぞ島に上陸して女を抱く時に試してみようと、ドフラミンゴは音には出さず喉で笑った(実は直前に、いい加減煩いと髪を弄る方と反対の、名前を抱いている方の手をつねられ…いや、ねじられていたのだ)。そしてまた、意識を見も知らないこの先抱く予定の女から胸の中におさまっている名前へ向ける

そういえば、今朝のキスはなかなか好かった。紛うことなき一方通行だったが、吸い寄せられるような感覚を味わった。あれはなかなかだ。最後まで致したら結構愉しめるかもしれない。だが名前がそれを全身全霊を持ってして拒むだろうことは、出会ってたった数時間だが簡単に予想出来た

名前が、なんだかんだで最終的には押しに弱いというか面倒くさくなって現状に甘んじてしまう女だとも既に気付いてる。しかし、身体を許すかとなればそれは有り得ないだろう。無理矢理組み敷けば一発なのだが、彼はどうしてだかその選択肢を選ぶ気にはなれない



(なんかこう…違ェな)



嫌がる名前をちらりと想像したらそれもまぁクるものがあったが、まずはそうではなく普通に抱いてみたい。まぁ、どうしてもと強く思うほど溜まっても女に困ってもいないが



(焦る必要なんざどこにも無ェさ)



だって彼女はもう、誰かに触られる前に己が一番に手に入れた玩具なのだから








「まァ今はまったく躾のなってねぇ子猫チャンだがな…!」

『ぶたれたいんなら素直にそう言えばいいのに』



結局ドフラミンゴは笑い声を堪える事が出来なかった
















たぶん特別なボクだけの玩具



(子猫ってェよりかは野良のボス猫か)(パーよりグーのほうがよかったみたいね)















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なんだこれ…なんか甘ったるいぞおいおい…



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