ドフラミンゴトリップ

□クルーに挨拶
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女物の服をあるだけ持って来いとか、食事は二人分で女が好みそうな物も用意しろとか。それはそういう事なのだろうと勘づいてはいたがまさか

だって島から島の距離はさほど離れておらず、その為今回は女を乗船させなくていいと何を隠そうドフラミンゴ自身が言ったのだ

いやそこは気にすべき点ではない。重要なのは、あのドフラミンゴが女の為に動いているという一点に尽きる

偉大なる航路を進むドンキホーテ・ドフラミンゴの船の上、クルー達は騒めきたっていた









『…………』



…うんわかってる。わかってるからお願い、そんな目であたしを見ないでほしいんだけど







不本意だけどお世話になるんだから、船に乗ってる人達に挨拶がしたいとあたしが言ったのは十数分前。あたしを膝に乗せしつこく髪の毛を弄る鳥は必要ないと言ったけど、お前ふざけんなよって話だ

部屋から一歩も出てないあたしはまだ実感が無いけど、此処は船の上であたしの身元引き受け人は海賊。ってことは、基本が船上生活になるんじゃないかと思ってる。そんな逃げ場の無い閉鎖的な場所でこれから生活していかなきゃいけないのに、挨拶のひとつしないでどうして人間関係が良好に進もうか。コイツ絶対友達いないな

あたしの髪を弄る手をバチコンと払い退け、いいから連れてってと言えばあたしを抱えたまま立ち上がりだしたこの野郎に(やはり片手…だと…)ふざけんなって結局声に出した…が、「照れる必要もねェぜ」とお得意の胡散臭いスマイルを向けながら却下してきた瞬間にあたしの額には青筋が入った

これから初めましての人達に挨拶するっていうのに、コイツはあたしを般若にでもしたいのか。印象悪すぎ。お前以外には友好的に行きたいんだよあたしは。頬っぺたをぎっちぎち引っ張ってやったけど効果無し。力で適うはずもなく、そのまま部屋の外へ連れ出されコイツの「おめェら集まりな」の一言で公開処刑が執行された。甲板から見える大海原が眼中に入らなかったのは当然だと思う

で、だ…。今あたし(と鳥コノヤロー)の目の前には手が空いてるらしい船乗員達が(漏れなく海賊)わらわら居るんだけど…ね



『………』

「「「………」」」



いたたまれない

なんだろう、この女何者だとかいつの間に船にとか怪しい野郎だとか…そういう類いの視線じゃない気がするのは気のせいって思っていいかな。そういうの全部すっ飛ばして目の前の人達が皆揃って、コイツ正気かって顔で鳥男を見てからこの世の終わりだみたいな顔であたしを見るのは気のせいって思っていいかな



「なんだァ名前、挨拶しねぇのか?」

『空気読んでよこのバカ鳥』

「「「!!?」」」

『えっ』



…えっ。なんか今一瞬にして皆さんがどよめいた気がするんだけど…。ちょっとやめて!あたしそんな鈍い人間じゃないからね、なんでどよめいたのかとか分かっちゃったからね。これアレだ、鳥男に言い返したからだ。よくそんな口聞けるなっていう驚愕のどよめきだ

……えぇー…コイツそんな厄介な人なの?いや、まぁ確かにウザイし胡散臭いしウザイし腹黒そうだし変態だし変人だしウザくてウザイし。だけどこれは……



『もしかしこの船で一番偉い?』

「フフフッ…さぁな」

『じゃあ違うってことで……あとなに当然のように人の太もも撫で擦ってんのコラ』

「かまわねェさ、名前チャンの好きに思ってりゃいい」

『後半部分キレイにシカトするなヤメロろくでなし』



とか言ってる間にもどよめきが激しくなってる。えぇー……そうか…そうなのか…まぁそりゃね、此処は船の中だって言われて嘘吐きって言いたくなるくらい豪華な部屋や、豪勢な料理とかを見てたらそうなのかなーって。でも認めたくなかったのは他でもない相手がコイツだったからで。あたしの神経を逆撫でしまくるコイツがブルジョワとか…!さらにイライラさせられるんだけど!海賊って随分と儲かるお仕事なんですね!

…はぁ。落ち着け…とにかく今は挨拶だ。この反応を見る限り鳥男一人がクレイジーなだけで他の船乗員達は常識を持ってるはずだ。じゃなきゃあたしと鳥男の会話にこんな過敏に反応しないよね頼むよ皆さん



『…あの』

「「「ッ……!!」」」



……いやなんで息を呑むの



『…あの私、名前と言いましてこれっっっっぽっちも本意ではないんですが、訳あってコイ……この人のお世話になることになりました。誤解の無いように言っときますが、恋人でもなんでもない真っ赤な他人ですし今この体勢で居るのもあたしは同意していませんし、着てる服の色使いがモロ被りなのはどの服も似たり寄ったりでどれを着てもこうなっていたので断じてペアルックではありません、誤解しないで下さい』



……今日からよろしくお願いします

最後にそう締め括ったあたしに、無数の同情めいた視線が送られた気がするはもう気のせいでは済まされない事実だった








この挨拶から僅か数日で、馬鹿鳥のイカれ具合や奇行に日々怯え悩まされていたクルー達からメシアと捉えられ慕われると共に、ことあるごとに鳥の世話をさせられるハメになるとはあたしはまだ知らない














ようこそ飼育員さん



(ついでに船ン中案内してやろうか)(一羽で徘徊してろ)(((すげぇ人が来たぞ…!!)))















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ドフラミンゴってビジネスライクで海より陸に居る時間のほうが長そうだけどね



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