ドフラミンゴトリップ

□すごい世界に来てしまったと改めて思うヒロイン
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鳥野郎が、この世界には悪魔の実なるものが存在し食べると摩訶不思議な能力が備わる代わりに泳げなくなるのだというメルヘンな話をあたしに聞かせてきたのは、ヤツがあたしを抱えてベッドに潜り込んでからだった。コイツほんっとうに…!







「さて…。島にゃついたが名前チャンはおれが仕事から戻るまでちっとばかりお留守番だ」

『服屋に連れてってくれんならなんでもいい』

「お利口さんだァ」

『……』



…あぁ一刻も早くコイツを海へ還してやりたい

一夜明け目的の島とやらに着いたけどあたしは昨晩、苛立ちのままに寝入ったせいか朝からずっと機嫌が悪い。いや、此処に来てから機嫌が良かったことなんてまだないけど。そのせいか、初めて見る島というものにもたいした感動を覚えず、とりあえず服屋に行けたらそれでよかった

コイツは鳥のくせに金なら有ります、って感じなので目一杯買い込んでやろうと思ってる今日のあたしの格好は当然の如く、まっピンク地にオレンジのエスニック模様が全体にプリントされていて、裾がフリルになってるマキシワンピ。季節は夏らしいので羽織が無くても平気だった…まぁ羽織物はピンク一択しか無かったけどね

そして現在、船を降りた桃色の鳥を冷たい目で見送り、暇潰しにと渡された双眼鏡を手に甲板から島を眺めている。本当は船の人達と親交を深めたいとこだけど、彼らが明らかにあたしにビビってて近寄って来てくれない。彼らはあたしを勘違いしてる。あたしが絶対零度で接するのはあの変態だけであって、自分的には常識もあるし節度も弁えた部類の人間だと思ってる

…まあヤツと一緒に居るってだけで常識と言う名のカテゴリーからは外れるんだけど

男しか居ないのが不満だけど仲良くお喋り出来る人物を早く作りたい。とはいえ、ビビっちゃってるものは仕方がないしビビってる人達にこちらから向かって行くのも悪い気がするから、とりあえずはこのままで居るしかないだろう。…ほらね、こういう事考えられるあたしって常識人でしょう皆早く気付いて

それにしても、この島はどうやら避暑地にも似た所らしい。金持ちの別荘ですって主張しまくってる豪邸がいくつも並んでて、その住宅街からちょっとそれた場所にメインストリートがある。ここから見る限りだと、他にお店が立ち並ぶ場所は無いからあたしの買い物もあそこへ行くことになりそうだ

そこそこ賑わってるメインストリートと言ってもそんなに大きくないし、食事処の看板が目立つ。服屋は一件あればいいとこかな。大丈夫、ピンクを着ないで済むならワガママ言わないよ、なんてぐだぐだしながらも町を眺めてたらなんかスゴいのを見つけた







……なんだあのデカイの

町中に、異様な存在感を放ってるでっかい黒い塊が居る。全身をすっぽり包む真っ黒なマントでフードまで被っちゃってるし後ろ姿だから顔はわからない。ただ、とにかくデカイ

…なんだアレ。…人?え、ほんとに?ウチの鳥よりさらにデカイけど?周りの人達めっちゃ見てる。チラ見じゃなくてガン見ね、二度見してる人とかいないから。みんな一度で釘付けだから

えー…かなり気になる。どんな人なんだいったい。いや本当に人なのかも疑わしい。だってなんだかフードの面積が半端なく広い。あのフード面積から考えると等身がおかしいことになるけどいいのか?あの大きさで、バランスも考慮すると3等身くらいになっちゃうけど大丈夫なのか?3等身て…。やっぱり人間じゃないのかもしれない。この世界は随分とメルヘン要素が多いみたいだから、あれは妖怪か何かかもしれない。いやどっちかって言うと妖怪であってくれたほうが本人の為にもいいんじゃなかろうか

あたしがああだこうだ思いながら観察していると、ふいに真っ黒マント妖怪(希望)が足を止めた。どうやら何かのお店に入るらしく、身体を横にしてくれた。あっ、もしかしたら顔が見えるか、も………



『…!?』



……ごくり……スゴいものを見た……一瞬息が止まった。マジでか…。本当にあたしの考察通りだ…あの人…じゃないか、あの生き物は正真正銘の妖怪だ…!

ちらりと見えた横顔はあたしの危惧した通り、フード面積分丸々顔だった。フードの隙間から見え隠れする髪の色はなんと紫。マダムか。もしゃもしゃして見えたからアフロなのかもしれない。だけどそんな紫アフロヘアーなんて序の口だと言わしめるのはその顔

まつ毛が眉毛を越える…だと…?眉毛を隠すほどのまつ毛はなんと上下各4束くらいのバカデカイ塊になってて、紫のルージュが引かれた唇…なんだそのデスメタル的なメイク…。そしてその口がこれまたバカデカイ。もしかすると人喰い妖怪なのかもしれない。人一人丸呑みするくらい造作も無ェぜって雰囲気がひしひし伝わってくる

スゴいのは顔だけじゃない。マントを翻した時に一瞬見えた体はやっぱりどう庇っても3等身しか無さそうだった。…や、そんなのちっぽけな驚きで、スゴいのはその服装ね。アレ多分レオタードだった…しかもハイレグ…しかも真っ赤…しかも網タイツにガーターベルト……ごくり……

スゴいものを見た…。刺激強すぎて目が痛いかもしれない…夢に出るかも…男か女かわからなかった…あぁでも妖怪なら性別くらい軽く超越しちゃってるか。っていうか、あの妖怪さんはいったい何の店に……



『…!?』










「あ?部屋から出て来ない?」

「は、はい。しばらく双眼鏡で島を眺めてらっしゃったんですが、突然走って船室へ行かれて…」

「…町で騒動なんざ無かったと思うが…?」

「え、えぇ…。俺達も確認したんですが変哲も無い町並みでした」

「…?」

















あなたと同じ世界にあたしは行けない



(おーい名前チャンどうしたってよ)(……)(遅かったからって拗ねてんのか?今から行ったって充分時間取れるぜ?)(…や、やだ!)(あン?)(服いらない!此処じゃ絶対買わない!我慢する!)(?)















ーーーーー

島に一件しかない服屋にイワ様がご来店なさったようです

ギャグなのでいろんなキャラがいろんな場所をちょろついてます(^ω^)

以下おまけ















その夜

『…うぅ……うあ……』

「…?…名前…?」

『……か、顔……顔が…』

「…おい、寝言か?」

『…顔が………ハイレグ……』

「あァ?」

『……た、食べないで…』

「……おれに喰われる夢でも見てんのかァ…?」

『……う〜んう〜ん……』



3日はうなされる

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