ドフラミンゴトリップ

□ふたりでひとつはデフォ
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ドフラミンゴと名前を乗せた船が島を出て早数日。名前に衝撃とトラウマを植え付けたニューカマーとのニアミスの翌日、必要最低限の物資を調達して船は早々に出港した







――人間の友達も出来てないのに妖怪と友達になるのはまだ敷居が高過ぎるし、あの生き物がご用達のお店で買い物するのはちょっと

ドフラミンゴからすれば訳がわからないの一言に尽きるが、とにかく島に上陸したくないとの事らしかったので彼自身も用事を終えいつまでも滞在する理由は無いので彼にしては素直に、茶化さず名前の意見を聞き入れた。幸い、ログは一日で溜まる島だった

というも、名前がニューカマーの存在に頭を唸らせていた為にドフラミンゴが彼女の身体を抱えて膝の上に乗せても一切抵抗せず、されるがままになった事が彼の機嫌をすこぶる良ろしくさせたからである

しかしこの5分後には調子に乗ったドフラミンゴが名前の首筋へ顔を埋めようとして、こめかみへ容赦無い垂直エルボーを落とされる

そして現在。気候は真夏、天気は快晴である。暑いには暑いが空気がカラッとしている為ロケーションとしては最高と言えた。そのため名前は甲板にパラソルを立て部屋から持ち出した真っ白い大きなクッションにもたれて本でも読もうとしたのだが



「おれを置いてこんなところで寛ぐたァ酷いじゃねえか」



ご存知ドフラミンゴくんの登場である。登場である、と言っても名前がクルーに頼んでパラソルを用意してもらったり、クッションを運んだりしている時からずっと名前の側をうろちょろしていた。まったく置いてかれていない。途中、名前からクッションを奪い甲板まで運んだが名前がお礼を言うことはなかった

そして、酷いと言いながらいつものスマイルを見せるドフラミンゴの状態はと言うとパラソルの下まで運んだクッションに上半身を預けだらしなくもたれかかり、横に立つ名前を見上げている。もちろん俺も一緒に此処で寛ぐぜ、と全身で伝えいた。自分の太ももをポンポンと叩き、お前の席は此処だぜアピールも忘れない

名前は手に持っていた本(偉大なる航路に生きる謎の生物百選)の角でドフラミンゴの頭を殴った



『今すぐ消滅して』

「パラソルなんてもん、この船にあったんだなァ。知らなかったぜ」

『邪魔くさい』

「いいもん見つけたな名前。偉大なる航路だから保障は無ェが夏の気候はまだ続くからな」

『鼓膜破れてんのアンタ』

「せっかくパラソルあんのにそこじゃ焼けるぜェ」



言いながらドフラミンゴは、名前の腕を引っ張り、あっさりと膝に乗せた。もはや二人のこの体勢はクルー達の間ではデフォルト化している。名前の額に青筋が走り目元にパラソルの影とはまた違う影を作っているが、それすらクルー達にはデフォルト化されつつある

島から出港して数日の間に、名前とクルー達の距離は急激に近付いた。それは、名前と居るドフラミンゴが自分達に害を成す可能性は極めて低いと認識され、しかも当の名前は自分達と丁寧に会話してくれてさらには笑顔まで見せてくれるなんだかとっても好い姐さんだったのだ

彼女に任せておけば平和は守られる。初対面の挨拶で名前に同情した事など既に忘れ、クルー達の中で名前は“猛獣使い”ならぬ“お頭使い”とされ慕われ始めていた。名前からしてみれば怒りを通り越し悲しくなるくらい不本意だが、ドフラミンゴに構われれば構われる程に彼女の株はうなぎ登りだった



「お頭、名前さん。飲み物持って来ました」

「おぉ」

『ありがとう、でもコイツの分は要らないから下げていいよ』

「え…で、ですが…」

「なんだァ?口移しで飲ませてくれんのか?」

『とっとと去れって事だよ』

「それともおれが口移ししてやろうか?」

『ストロー喉に突き刺すよ』

「つれねェなァ。恥ずかしいってんなら部屋戻るか」

『一人で戻ってそしてそのまま一生引きこもってろ』

「なァ本なんて読んでんじゃねェよ。つかこんな本よく見つけたな」

『本読んでるって分かってんなら話掛けてこないで。口閉じて息止めといて』

「こっち寄せろよ、読めねェ」

『……』

「……お頭の分……一応置いときますね……」



名前が手に持つ本がみしみしと音をたてるのを聞きながらクルーは恐々とドリンクを置いて素早く立ち去り、遠巻きに二人を見るクルー達の輪に戻った

こういったやり取りもクルー達の中で日常化しつつある。二人の会話の果ては、名前が苛立ち過ぎて何もかも面倒くさくなり放置し、形としてはドフラミンゴの成すがままなるのだ。もうストレスで血ぃ吐くかもしれないと名前は思う。だが、このやり取りもまた名前の株を上げるひとつだったりもする



「スゲーあのお頭にタイマン張ってるぜ」

「ドフラミンゴさんを見る時の名前さんのあの眼差しヤベー」

「昨日甲板を張ってたフナムシにだってもう少し優しい目を向けてたぜ」

「おれ次に敵船とやり合う時までに名前さんくれェ冷たい目が出来るように練習しよう」

「おれもおれも」

「いやあの冷えきった声音もスゲー痺れるぜ。間近で聴いたらヤバかった」

「お前いーなー」

「おれも直ぐ側で聴いたことあるがもし戦闘中にあんなん聴いた日にゃあ戦意喪失だな」

「おれそれも練習しよう」

「おれもー」

「それにしても名前さんスゲー」

「あァ、パネェな」

「かっけー」

「あぁヤベーぜ」

「まじで姐さんだぜ」

「あぁ姐さんだ」

「姐さん!」

「姐さん!」










『……なんか悪寒が…』

「おい日射病か何かじゃねェだろうな」



本人の預かり知らない所でまったく望まないポジションが確立されつつあった
















姐さんが出来た日



(え、部屋に戻るんですか?)(あァ名前が日射病になったかもしれねェ)(えっ!)(いや大丈夫だからほっといて)(人肌恋しいならおれがいるぜ)(アンタと居るより具合が悪くなることってない)(((スゲー切り返しださすが!)))















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最後のカッコ((()))←これ。甲板に居て観戦してる沢山のクルーの声です。三人とかじゃないです。なんかわかりにくくてスイマセン



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