ドフラミンゴトリップ

□お披露目されるヒロイン
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「……………………」

「……」

「…………………貴様…………その抱えているのは……………」

「名前チャンだ」

「……………………」







マリージョア会議室。本日この場で王下七武海の定例会議が開かれる。しかし今日は定例会議と言っても議題のメインは先日、偉大なる航路のとある海域で海軍に捕らえられた海賊団が七武海の一人であるドンキホーテ・ドフラミンゴの傘下であることについて、本人の釈明を求めることだった

海軍元帥であり会議を取り仕切る立場でもあるセンゴクは毎度集まりの悪い七武海達に苛立ちをあらわにしているものの、彼らが所詮は海賊であることを理解している為に、肝心のドフラミンゴを含め二人でも集まれば良い方だくらいに思っていた。というかむしろ、ドフラミンゴだけ来ればいいぐらいに思っていた。あの若作り野郎めふざけた騒ぎ起こしやがって海軍の船が2隻も沈んだんだぞ造船費用バカにならないんだぞとりあえず青雉は自転車あるだろって言いくるめて船没収したんだぞ。……などの怒りの根源を怒鳴り付けられればそれでいいぐらいに思っていた。というかもはや今日の会議の時間は説教で潰す気満々だった

のだが、こういう時に限って出席率が良いのが七武海だった。無意識にセンゴクを逆撫でするのが上手いのが七武海だった。まず最初に現れたのはサー・クロコダイル。彼が来ることに関しては特に何も思わない。なにせクロコダイルの会議出席率は一番なのだ。彼は案外、律儀でマメなのだ。だが次いで現れた人物にセンゴクは眉を潜めた。鷹の目の男、ジュラキュール・ミホークだ。彼の出席率は女帝ボア・ハンコックに次いで悪い。もともとが出不精で、独りの時間を愛するスナフキン体質のこの男がなぜ。(センゴク以外にとっては)変哲の無い定例会議のはず、緊急や強制ではないのになぜ。まさかよからぬ企みがあるのでは。なんて面倒な

来なければ怒られ、来たら来たで勘ぐられる可哀想なミホークが今日やって来た理由は単純だった。独りで居るのいい加減淋しくなってきたな。これだけだった。センゴクをはじめ、彼を知るすべての人々は彼を出不精で無愛想で寡黙で孤独を愛する男と思い込んでいるが、蓋を開ければ本当の姿はただの人見知りな緊張屋で喋り下手な淋しんぼだったりするのだ。おれは独りが好きなどとは言っておらん、ぬしらがもっとしつこく声を掛ければいいだけよ。エセスナフキンは心の中で常に叫んでいた。おっさんの口から、淋しいからかまってくれとは流石に言えないのだ

そうこうしているうちに人はどんどん増えていき、ジンベエとバーソロミュー・くままでもがやって来た。会議開始時刻ぎりぎりにやって来たおつるは、稀にみる集まりのよさに驚くと共に、なんだかとっても居心地悪気にしているセンゴクに首を傾げた。居らんときばっかり集まりやがって、これだから海賊は。センゴクはでかくてむさい面々を見ながらそう思っていたし、そのくせ会議開始時刻が過ぎても肝心のドフラミンゴが現われない辺りには、もうこれお前ら口裏合わせただろわざとだろそうなんだろとあらぬ疑いまで抱いている始末だった

それでも会議は会議だしこの面々にもうちょい待ってくんない?などと言えるはずもなく、仕方無しに始まった会議が20分ばかり過ぎたとき、扉の向こうがにわかに騒つきをみせ会議室に居る一同がそれに気づき扉へと目を向けたと同時にそこが勢いよく開かれた



「あァ?今日は随分集まりいいじゃねェか……まァおれとしちゃあ都合がいいけどなァ。フッフッフッ!」



開口一番ハイテンションなドフラミンゴくんの登場である。扉を開けたのは部屋の外で扉番をしていた二人の海兵で、言わずもがなドフラミンゴの能力による強制だった

観音開きの扉の真ん中に立つのはセンゴクが待ち望んでいた桃色の大きな塊だった……が、センゴクはもちろんのこと、おつるや七武海の面々の視線と思考はある一点に集中してしまった。ドフラミンゴの言葉には誰もが沈黙のまま動かず、なんとも言えない空気が流れる中、意を決して声を上げたのはセンゴクでそれが冒頭の会話なのだが。結局なんとも言えない空気のままだった

人の神経を逆撫でする笑みを浮かべるドフラミンゴの腕に抱えられている物体X……そう、名前だ。彼女こそがこのなんとも言えない空気を作って居る原因なのだが、まさか彼女自身が望んでこの場を訪れるはずがない。全力で拒否るだろう。それなのに何故。答えはひとつ、彼女は今眠っていた。ドフラミンゴに抱えられた状態ですやすやと眠っているのだ。まあ真相は寝ていた名前をドフラミンゴが無許可で抱えて連れてきたのだが。マジ連れてくんスかやばいっすよ起きたら殺されますよ。クルー達の制止も強行突破だった

かなり気を遣ってこの場まで運んできたらしく、名前は気持ちよさそうに眠っている。それだけでも満面の笑みが浮かぶドフラミンゴだが、予期せぬ大人数の前に名前をお披露目出来てさらにご機嫌のようでそっと名前の髪を撫でる。その仕草は妙に優しげで、しかしコイツがやると下心しか見えないと全員が思った

そんな一同を余所につかつかと入ってきたドフラミンゴは我が物顔で椅子に座りテーブルに足を乗せる。なんだかやたら偉そうに、さっさと会議の続き始めろよ的な雰囲気を出してる

え?いやいや、え?このまま会議続行なの?いいの?これいいの?このままなの?まさかスルーする方向?ちょっと、ねぇちょっと。ドフラミンゴ以外がセンゴクを凝視する。いやだってなんかすごい堂々と紹介されちゃったし席着いちゃったしなんか今更感出てね?タイミング無くしてね?センゴクは目だけで返した

空気はいつまでも悪い
















ごらんよボクのとびっきり



(…センゴク…てめェがなんとかしやがれ…)(…何を言うかクロコダイル…貴様がよくドフラミンゴと会話してるのを知らんとでも思ったか)(胸クソわりィこと言うな、鳥野郎が一匹で喚いてるだけだ…ジンベエ)(!?わしか!?…いや無理じゃろう…なんか無理じゃろう…鷹の目、お前さんはどうじゃ)(却下)















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わざと遅刻する目立ちたがり屋



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