ドフラミンゴトリップ
□目覚めて
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「ドフラミンゴ、ちゃんと答えな。その子はなんなんだい?」
小さい子供を諭すようにドフラミンゴに声をかけたのはおつるだ。さすがである。尻込みする役立たずな男性陣に内心溜め息を吐きつつ、ドフラミンゴと抱えられている物体X…もとい名前を見据える。その眼差しは僅かに鋭い
「おつるさん、聞いてなかったのか?名前チャンだ」
「ちゃんと聞いてたよ。馬鹿だねそんなこと言ってるんじゃない、アンタとその名前って子の関係について訊いてるんだ」
「関係?関係、ねェ……おれの船に乗ってるなァ」
「クルーなのかい?」
「クルー?…いや、そう呼ぶのはちょっと違うぜ」
「…ならアンタの恋人かい?」
「フフッ…!…恋人…恋人ねェ…!フッフッフッ!」
「どうなんだい、違うのかい」
「…まァ、おれのではあるなァ。フッフッ…!」
言いたい放題である
名前が聞いていたら声を上げるより早く鉄拳制裁がくだっていただろう。フルボッコだろう。いや、鉄拳についてはこれからの名前の寝起き具合によっては会話の内容問わず充分起こりうる。寝ている名前を連れ出した時からドフラミンゴにはフルボッコフラグが乱立しているのだ。地雷だらけの大地をスキップしているのだ
「…まさか奴隷だなんて言うんじゃないだろうね」
「!?ど、奴隷だと!?ドフラミンゴ貴様、」
「おいおい落ち着けよセンゴクさん、おれはまだ何も言っちゃいないぜ。だいたいなァ、例えば名前チャンがおれの奴隷だったとしてそれをアンタら咎めるってのはどうなんだ?ン?」
「っ……海賊風情が…!」
「フッフッフッ、海賊が奴隷を持ってるほうがよっぽど道徳的じゃねェか」
「道徳的だと!?ふざけるのも大概にしろ!」
「うるせェな黙れよ。名前が起きんだろうが」
「黙るのは貴様だ!!そもそも今日お前を呼んだのはお前の傘下と名乗る海賊共が散々暴れた件について話させるためだ!それを遅れて来たばかりか奴隷を連れて来るだと!?」
「…おい、なに勝手に奴隷にしてやがる。あァ?」
奴隷と言う言葉に過敏に反応したセンゴクを嘲笑うようなドフラミンゴの返答に、これまでの雰囲気が一変する。怒鳴るセンゴクに対し、笑みは崩さぬもののドフラミンゴにも思うところがあったらしく一触即発の空気まで流れた。だがまあ、それを我関せずに眺める七武海達はこの空気がおれ達のノーマル時だよなと呑気な考えの中お茶を啜りつつ傍観を決め込んでいる。完全に余興扱いだ。まったりしている。おつるは二度目の溜め息を吐いた
「おやめ。二人共こんなところで暴れるんじゃないよ」
「………………すまない、おつるさん」
「フフフッ…暴れて名前チャンが起きるといけねェか」
これぞまさしく鶴の一声。両者は渋々、放っていた殺気を引っ込める。おつるはドフラミンゴを見て言った
「…ドフラミンゴ、お前が名前と呼ぶその子が奴隷じゃないってことはわかった。深く知る気はないけどやけに気に入ってるってこともね」
「フッフッ、さすがおつるさん」
「けど、だったらなんなんだい?わざわざこんな場にまで連れてきてどうしようってのさ」
「どうもしねェさ」
「…どうもしない…?」
「そうおれは今日、名前チャンを見せびらかせたらそれでいいんだ」
「…見せびらかす?」
「フッフッフッ…そうだ。おれは今日、アンタらにおれの名前を見せびらかしに来たのさ」
「……」
「かァわいいだろう、フフフッ!」
「……」
「おっと、言っとくがおれ以外は触れられねェからそこで指銜えて見てろよ」
おおはしゃぎである
どうやらまたしてもテンションがキたらしい。おおはしゃぎである。対して一同はぽかん顔だ。え?なに?見せ…見せびら…え?なんだって?ほんの2〜3分前に殺気をビシビシ放っていたセンゴクも、ぽかんである
誰も触ろうなど思ってないしそれらしい行動も起こしていない。それでもドフラミンゴは牽制するかのように名前を抱き込みかかえなおした。えぇー…マジか、マジで言ってんのかコイツ。七武海だとは言え各々が深い付き合いをしてきたわけではない、しかし噂を頼りにしか彼を知らない人間よりかは理解せざるを得ない程度にはやってきた…はずだったがこれは…
「…何かの能力の影響でも受けてんじゃねェのか」
「女か」
「しかしただ眠ってるようにしか見えんがのぅ…」
「起こせばいい」
七武海達は気持ち悪いドフラミンゴを前に、不快と興味が入り交じった感情を抱いた。暇で無駄で仕方ないはずの定例会議で、そこそこ暇潰しが出来そうだと思った。だがどう見てもドフラミンゴじゃ会話にならないといち早く悟り、じゃあいい加減に女を起こしちゃおうぜなノリになった。センゴクとおつるが無言なあたり、満場一致なのだろう
いつでもどこでも、名前の預かり知らない時に名前がメインディッシュな騒動が勃発するのがお約束になりつつあるのは今後の展開的にも致し方ないのだ
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