ドフラミンゴトリップ

□乙女化したドフラミンゴ
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「…で?どんな奉仕をしてあの野郎を落としたんだ?」

『あ゙?』

「悪かった」



寸前までの成りと声はどこへ行ったのかと疑問を抱くくらい一瞬にして変貌を遂げた表情と声に、滑るように謝罪の言葉が出てしまったクロコダイルは言ってすぐ眉間に皺を寄せた…が、それ以上態度を変えることはしなかった

なんというか、ここで彼女を煽るような何か(例えば某鳥野郎の事とかピンクい生き物についての事だとか)を言えば此処は一瞬で戦地と化すと悟ったからだ

名前の目が先ほどまでドフラミンゴに向けられていた、氷点下の眼差しに変わりつつあった。わざわざドフラミンゴが見付けられなさそうな堅苦しい高級レストランまで連れて来たというのに、あんな野郎と同等の位置に置かれるのは御免だとクロコダイルは内心で舌打ちをするに留まる

場に居た全員が興味を惹かれていた

無理もない、七武海…いや、数え切れない海賊達の中でも群を抜いてツラの皮が厚いあのドンキホーテ・ドフラミンゴがああも簡単に感情を表に出した。そうさせたのが海賊でもなんでもないらしい1人の女となれば、ドフラミンゴを知ってる奴なら誰だって興味を惹かれるだろう。だからクロコダイルはさっさと他の連中を出し抜いてやったのだ



『…あ、いえ…すいません、あの生き物のことになるとつい…』

「かまわねェ、気持ちはわかる」

『本当にっ!?』

「!?…あ、あァ。会議ぐらいでしか顔を合わせねェがそれだって胸糞悪くなるには充分過ぎるんだ、四六時中一緒に居たらそりゃ相当だろうよ」

『…!!』

「…………」



しおらしくなったかと思った瞬間にテーブルから身を乗り出しそうな勢いで前のめりになった名前に反射的にたじろぐクロコダイル。それから感じたままを述べると名前の瞳がきらきらと輝きはじめた。頬も僅かに紅潮しており、興奮しているのがわかる

え、なに、そんなに?クロコダイルがなんとも言えない顔をした

名前からしてみれば、ここまでドフラミンゴに否定的で名前の味方的発言をしてくれる人物に初めて出会った。そりゃ興奮もする。なんだかんだ言ったってクルー達は自ら望んでドフラミンゴについてきているのだ、最後の最後にはドフラミンゴを擁護するような発言をする

「ただそうしたかっただけなんだと思います、悪気が無い…ことは全然ないだろうけど名前さんなら大丈夫です!」「なんだかんだ言ってもお頭って格好良くて(邪心まみれの)優しさだってありますよ!」「だから平気っす!」と言われたときの裏切られた感というか押し付けられた感は痛すぎて忘れられない。擁護…というか、みな平和に過ごしたいが為に必死だった



「…お前…苦労してるのか…」

『ハゲそうなくらいには…』



遠い目をしながらも間髪入れず答える名前に言い知れぬ憔悴を感じ取り、クロコダイルは彼なりに精一杯の労いの声を掛けたのだった
















「…どこ行ってやがった」



笑うその顔の眉間に刻まれた皺の数が、いまは一段と多かった

ドフラミンゴがマリージョアを離れることが出来たのは、クロコダイルと名前が去って一時間も経ってからだった。すぐさま追いかけようとしたドフラミンゴをその場の全員が抑えにかかり、センゴクとおつるの説教が終わってからは名前のネタで七武海達(主にミホーク)から質問攻め(という名のバトル)にあったのだ

大騒ぎして半壊した会議室を普段より大股で後にして二人を探そうとしたものの、時間が経ち過ぎていた。しかしこれだけ時間が経っているのなら余裕で船まで送り届けられているはず。そう思い船まで戻ったのだが、予想を裏切り名前はまだ帰っていなかった。のちにクルー達は、あの瞬間に自分達の余命を悟ったと語る

命の終わりをひしひし感じるクルー達を余所に、名前が帰ってきたのはそれから二時間後で、ドフラミンゴそれまでずっと甲板で待ち構えていた。さながら門限を破った娘の帰りを待つオトンである



「答えろよ、どこ行ってたんだ?」

『ご飯食べに行ってたけど?』

「…ひとりでか」

『いやクロコダイルさんと』

「……」



それがなにか?と謂わんばかりに、今のいままでクロコダイルと居たことをさらりと言う名前にドフラミンゴの笑みが深くなる。特徴的なあの笑い声を出さない、無言の笑みがこわすぎると冷や汗をかいたのはクルー達で、名前レベルになるとそんなドフラミンゴに気付く気もない



「…で、送ってもらったのか」

『じゃないと場所わからなかったからね、誰かさんのせいで』

「そのついでに飯でもってか?フッフッ…手くせのわりィ野郎だ」

『それアンタが言う?』

「……」

『少なくとも出会い頭でディープキスかますような人ではなかったね』



名前の中でクロコダイルの評価はうなぎ登りで、しかも見た目に反して(いやある意味見た目も)なかなかに紳士的であったのもかなりの好印象を与えたようだった(一番はドフラミンゴへの熱い同心に変わりはないが)

スマートなエスコートに適度な距離感。隙間あらばべたべたねっちょり触れてくるどこぞの鳥との違いに感動したのは云うまでもない



『…あ、そうそう。あたし明日の夜もクロコダイルさんとご飯食べに行ってくるから』

「……」

『今日連れてってくれた以外にもオススメのお店あるんだって』

「……」

『今日は此処で停泊でしょ?それに急ぎの予定無いよね?だから明日も、』

「呼べよ」

『…は?』

「呼べよって言ったんだ」

『……は?なに?…クロコダイルさんを…?』

「ちげェ、名前だ」

『……え?なに?…ナマエ…?』

「フッフッ…そうだ」



ぽかんとする名前に早くしろと急かすドフラミンゴ。意味が理解しきれない名前は、ナマエさんて誰だよあたし知らないよと頭の中は謎だらけだ。脈絡の無い会話は彼の十八番だったがいつも以上にわからなさすぎる。考える名前は、ここでようやくドフラミンゴがなんだか機嫌が悪いということに気がついた



『てかなんで機嫌悪いの?皆がこわがるしうざいからやめてよ』



…が、気がついたがどうでもよかった。ちなみに、皆とはクルー達のことであり、こういった態度や発言が周囲からドフラミンゴを押し付けられる一因となっている事実を彼女はよくわかっていない



「いいから呼べ」

『しつこ…ん?ナマエって………名前…?』

「フフフッ…鰐野郎じゃねェ、おれだ」

『………』



やっと意味を理解した名前だったが、やはりぽかんだ。…え?名前?おれ?え?まじ?本気でそれ言ってんの?もはや疑念しかない名前ではあるが、サングラスで見えないはずのドフラミンゴの瞳が異様にガチっぽく感じられて言葉を失う



「フッフッフッ…!」



固まったままの名前を普段通り抱き上げ、彼女の顎に手を添えながら親指でその唇をなぞるドフラミンゴに貼り付いた笑みはやはり余裕が無い。その理由が名前がどうこうというただそれだけだったとは、さすがの名前も驚きのあまりされるがままになってしまう

そんな二人のやり取りを見守るクルー達が、クレイジーの代名詞とも言える自分たちのお頭もちゃんと人の子だったんだと止まらない冷や汗の中で僅かに和んでいたことを本人達は知らない

















君の声で聴かせてそして鼓膜を震わせて



(…えっきもい、どこの乙女ですか)(呼ばなけりゃ二度と外に出せねェなァ)(はぁ?なに言ってんのふざけないで)(フッフッ、本気だぜ)(…チッ…、……)(これ以上は待たねェぞ?)(……)(名前)(……ねぇ)(あン?)(……名前………なんだっけ…)

















ーーーーー

いきなり乙女化したドフラと興味無さ過ぎて名前が出てこないヒロイン



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