ドフラミンゴトリップ

□生贄化したヒロイン
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※クルー視点





名前さんがこの船に現れた詳しい経緯をおれは知らない。多分、クルー全員知らない。名前さん曰く『起きた(起こされた)ら此処に居た』らしいがそれ以上は口を開こうとはしない。えっそれって…まさかお頭アンタ…。とか思ったのはおれだけじゃないはずだ

しかし、いまさらどんな経緯や理由があろうが関係無い。名前さんはおれ達の中ですっかり姐さんポジションに君臨し、クルーの一員になっている。ウチのお頭へあんな凄まじい態度を取れるヤツなんてほとんど見たことがないし女なら尚更だが、それよりも何よりもお頭が名前さんをめちゃくちゃ気に入ってるところがおれ達には重要だ



「フッフッ…名前チャン、名前」

『……』

「名前、返事しろよ」

『……』

「名前、名前」

『………やかましい』

「ダレが」

『あんた』

「そうじゃねェだろ」

『……』

「名前」

『…チッ……………ドフラ、永遠に黙ってて』

「フッフッフッフッ…!」

『黙れっつったろ』



言葉と平行して鋭過ぎる水平チョップをお頭の喉元へ繰り出す名前さんは、怒りを越えてもはややつれ気味だ。対してお頭のご機嫌ぶりといったらもう。名前さんを膝に乗せ覆い被さるように抱きすくめて超笑顔。普段の5割増で笑顔。ぶっちゃけこえェ

だがお頭がここまでご機嫌になるまでには若干の道のりがあった。むしろ不機嫌でマイナススタートだった。なんてったって名前さんがお頭の名前を覚えて無かったんだもの

ほんの数時間会って話しただけのサー・クロコダイルの名前は呼べてもおはようからおやすみまで会い続けてるお頭の名前を呼べなかったことに、お頭が不機嫌になった。不機嫌なお頭もマジこえェ。だがまあ、そりゃそうだろ、四六時中一緒に居る(居させられてる)のに。片時も離れない(離されない)のに。(一方的に)お喋り沢山してるのに

ていうかおれ達が毎日お頭の名前呼んでるのを聞いてるはずなのに。それなのになぜ思い出せなかったんですか名前さん。いやまず、思い出す思い出せないの次元ってどうなんですか

流石に今回ばかりはおれ達もお頭側についた。そりゃないですよ名前さん名前くらい覚えててくださいよ…って訴えた…のが、今のこの状況を作り出してしまったのだ

お頭が不機嫌になる程度じゃ一切心が揺れない名前さんだが(前にそれなら蟻が一生懸命に食料を運んでる姿のほうが胸打たれると言ってた)、おれ達が言うとなると話が変わってくる。基本的に名前さんは押しに弱いし、お頭以外には普通に優しい。ある意味お頭が特別対応だ。まったく羨ましくはないけど

だから、おれ達からの少しのブーイングがかなり効果的だったらしく、断腸の思いですみたいな顔をしながらお頭の名前を呼んだのだ(クルーに耳打ちで名前を教えてもらっていた。まさか本気で覚えていないとは)

『………………………………ごめん…………………………………………ドフラ、………………』

間が長ェ!どんだけ言いたくないんだ!!とか、ドフラで止まっちゃった!覚えきる気無ェ!?とかおれ達の心の叫び(口には出せない)に反して、不機嫌だったお頭の背後に花が舞う錯覚が見えた

「…フッフッ……ドフラ…ドフラ、か…。フフフッ、フッフッフッ…!悪かねェな…!」

どうやらアダ名的な解釈をしたようだ。さすがです。確かにお頭のことをドフラと呼ぶヤツなんてこれまで居なかった。それが尚更お頭の機嫌を上昇させたらしく、うわやっちまったよ、な顔して青ざめている名前さんには気づいていない(いたとしてもスルーするのがお頭だけど)

それからお頭は(無理矢理)名前さんを膝に乗せ甲板のど真ん中を陣取り、ひたすら名前を呼ばせている。名前さんは名前さんでおれ達が責めてしまったことで負い目を感じてしまっているらしく、比較的されるがままだ。…おれ達のばか!すいません名前さん…!

ちなみに、お頭が甲板にしかもど真ん中に座った理由としては、名前さんに名前を呼ばれているのをおれ達に聞かせるためじゃないかと予想してる。お頭なのになんだか微笑ましいなァと思いたいのだが、そんなお頭に貼り付かれている当の名前さんの顔に影が差しているのを見るとやっぱりお頭だなァと思い直してしまう

キングオブ自己中、それがお頭なのだ



「名前、次からは必ず名前で呼べ。じゃねェと返事しねェから」

『返事が無くても支障は無いからわかった、呼ばない』

「安心しろよ、他のヤツにゃ同じ呼び方はさせねェ」

『一気に不安になったんですけど』

「フッフッ…名前」

『……………』



皺、名前さん、眉間の皺



「名前」



言わすまで止めないのがお頭ですよ名前さん



『……………ドフラ…用も無いのに気安くあたしの名前を呼ばないでください』



うわァ敬語だ



「フッフッフッフッ…!!」



うわァ聴いてないし効いてねェ…!そして超笑顔!

嬉しそうに楽し…愉しそうに笑いながら名前さんの首筋に顔を埋めるお頭(…に名前さんは引き千切る勢いでお頭の耳を引っ張ってる)を見てまた思う















お頭以外はとっくの前に名前で呼ばれていただなんて死んでも言えない、と






























墓場まで持って逝きます



(だからずっと此処に居てくんねェかな名前さん)(なー、おれも思う。名前さん来てから機嫌の良い日しかねェもんなドフラミンゴさん)(前なら暇になるたびにおれ達に無茶ぶりしてきたもんな)(おれなんて、代わりにマリージョア行って会議出てこいって言われたんだぜ)(おれは赤犬に膝カックンしろって言われた)(………)(名前さん…サー・クロコダイルのとこなんか行かねェよな…)















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うざいドフラとまた勝手に株が上がった…上がった?ヒロイン

ドフラミンゴうざす(^O^)/



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