ドフラミンゴトリップ

□お茶会ですよ
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「邪魔するぞ」

「あァ本当に邪魔だな」


昼過ぎ、突如鷹の目ことジュラキュール・ミホークがドフラミンゴの船にやって来た。名前がチーズケーキを焼き上げた直後だった















「ふむ、これはぬしが作ったのか」

『うん、そう』

「美味なり」

『それはどうも。ただの暇潰しの一貫なんだけどね』

「ぬしは暇潰しに菓子を作るのか」

『本読む気分じゃない時とかはたまに』

「ふむ…」

『甘いもの好き?』

「うむ」

『何が好き?今度それ作るよ』

「まことか」

『まことまこと』

「………、……」

『顔険しいな!いや、別に今すぐ言えとは言ってないけど!?』



空になったカップに紅茶を注ぎながら、くすくすと微笑ましいものを見るかのごとく笑う名前をカワイイとドフラミンゴは思う。だがよく見ろと一喝してやりたいとも思う。名前チャン、名前チャンが微笑ましげに見つめるそいつはヒゲを生やしたただのオッサンだ、と

マリージョアに来てからどうも調子がおかしいのだ。鰐も鷹もなんだってこうも名前にかまうのか…いや、鰐と鷹だけではない、あの会議の場に居た全員が名前をかまいたがってるとドフラミンゴは確信している。ちょっと見せびらかして終わりにするつもりだったのに、鷹とくまの思わぬはしゃぎっぷりにより名前を起こすことになったどころか会話までさせてしまったのは果てしなく誤算だったと内心で舌打つ

彼は未だマリージョアの港に船を寄せていた。完全スルーだったが怒られるだけ怒られたし今となっては後悔しないでもない名前のお披露目も済んだのだ、さっさと此処から離れたかったドフラミンゴだが名前が今後の船旅のお供にと本を大量に買い込みたいと望んだので出航を1日遅らせた。それが失敗だった。クロコダイルが昨日のうちに出航した為に油断していたのもあるだろう。そもそも、とドフラミンゴはまた思う

鷹の目は普段ならたまに会議に来たって出された茶と菓子食ったら誰よりも先にさっさと帰ってるじゃねェか、それをなんだって今回はいつまでも残ってやがったんだ…あァ、名前チャン目当てか…とんだ暇野郎だどうしようもねェ

毎度、近所にお茶しに来る感覚で会議に現れては満足したらさっさと帰るミホーク。その実、去り際に「もうちょっと居たらいいじゃん」と引き留めて欲しい名残惜しさ全開なことは誰ひとりとして汲み取ってあげられない現実だった。でも言えない。自分からは言えない。なんか皆雰囲気固くて緊張すんだけど。ミホークは会議の招集をお茶会のお招きと勘違いしていた

それが、今初めて本物のお茶会が開かれた場に居るのだ。楽しくて仕方ない。ポーカーフェイスで良かったと心から思える。…と言っても名前はドフラミンゴとお茶会などするつもりは毛頭無く、本当にただの暇潰しで作ったケーキは今日の船番担当のクルー達に振る舞うつもりでいた



「茶とケーキをおかわりしたい」

「フフフッ…遠慮って言葉を知らねェのか」

『あんた遠慮って言葉知ってたんだ』



テーブルの真ん中に置かれたホールのチーズケーキはもう4分の1ほどしかない。ちなみにドフラミンゴと名前が食べたのは一切れずつ。さらに付け足せば先ほど名前が紅茶を注いでたカップはミホークのものだ。当然のように無表情でケーキに食い付き茶を啜るコイツは頭がおかしい、とドフラミンゴは主張するがミジンコ程も聞き入れてもらえず名前は嬉々として茶を蒸らしケーキを切り分ける

気に食わない。普段ならドフラミンゴの動くままに嫌々ながらも結局は流される名前が今はミホークの為に甲斐甲斐しく動いていて、膝の上に乗ってもくれないのだ。(ムリヤリ乗せようと手を延ばしたらフォークでぶっ刺された)。そのためドフラミンゴは名前が現れてから、多分初めてひとりぽつんと(でもないけど。デカイから存在感だけはあるのだ)ソファに座らされている(と言っても名前の隣はキープ済みだ)。名前を膝に乗せずに座るソファはどうにも座り心地が悪かった

とにかく気に食わない。暇潰しに来ただけの鷹の目ごときが我が物顔で食い荒らしやがって。クルーが号泣しちゃうドフラミンゴの無言の笑顔も、天然と無関心なミホークと名前にかかれば余裕のフレームアウトで会話を弾ませる



「リクエストはひとつしか受け付けないのか」

『え?…あ、お菓子?』

「そうだ」

『…そんないくつもあるの?』

「生クリームをたっぷり乗せた定番のスポンジケーキもいいがチョコはやはり外せない…が、シフォンケーキやタルトも悪くないしそもそもケーキじゃなくともよいのか?」

『あ、はい』



この人こんないっぱい喋れたのかと驚きと圧倒で敬語が出る名前



「…ふむ、そうか。それはますます選択肢が増えるな」

『……』

「…クッキー、プリン、スコーン、ワッフル、マカロン、」

『ぶふっ』

「どうかしたか」

『いや…だって…そんな真顔で…チョコだのシフォンだの、ま、マカロンって…!ぶっ、あはは!やだミホーク可愛いなもう!』

「確かにマカロンは食うのが憚られるな」

『あはははっ!』



ミホークがひとつ頷いたと同時にひときわ大きな笑い声が湧いた。だから真顔…!とツボに入り込んだ名前はけたけたと笑い続ける



「…………上等じゃねェかクソ野郎が…」



もう気に食わないどころの騒ぎじゃない。何もかも持って行かれた。名前が淹れた紅茶も焼いたケーキも、ドフラミンゴだって初めて味わうのに苛立ちで味なぞほとんど覚えていないしこの会話の合間にもミホークはフォークを持つ手を休める気配が無い。ケーキ無くなる

名前チャンどうかしてるぜ、こんなオッサンがカワイイとか名前チャンの元居た世界はどうなってんだ。自分だってオッサンのくせにとんでもないセンスのくせに。すべて棚に上げミホークをオッサンオッサンと罵るドフラミンゴの青筋も二人には効果が無いようだ。ミホークなど正面に座っているのに本気で気付いていないくさい。頭の中はスイーツ一色らしい

ふざけんじゃねェぶっ殺すぞこの野郎。限界、とばかりに隠す気のない殺気全開のドフラミンゴが名前の手を引いた



『…?…なに?』















「つーかおれのがカワイイだろ」



ドフラミンゴの主張とミホークがシュガードーナツと呟いたのは同時だった




















アニマルお茶会



(黙れ鷹の目…殺すぜ?)(ドーナツは嫌いか?)(あはははっ!)
















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天然に勝てないドフラミンゴとミホークがツボなヒロイン



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