ドフラミンゴトリップ
□雛鳥現る
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なんとか会議とかいう場に連れて行かれたせいで無性に焼き鳥を作りたい衝動に駆られたものの、そこに連れてかれたことで友達(?)らしき人物を二人もつくることができたあたしは、船が出航してまた馬鹿鳥と二人の日々に戻っても(本も買い込んだし)まぁまぁ気分良く生きていけてる。友達(?)って素晴らしい
実はミホークが帰り際に鳥に内緒で子電伝虫とかいうかたつむりの小さいバージョン(それでもあたしが認識するかたつむりの5倍以上はでかい)を渡してきて(かたつむりの色がショッキングピンクな件には一切触れなかった)、なんと番号交換までしてしまった。通話料金とかどうなってるのか訊いたときのミホークの顔が憎たらしかった。はいはいほんとなんでもありですねこの世界は。でもクロコダイルさんの番号も一緒に教えてくれたから良しとしよう
でも、ミホークはともかくクロコダイルさんは忙しそうだからこっちから意味も無く連絡するのは気が引けるからかたつむりが訴えだすまでそっとしておくことにして、(勝手に用意されていた)あたしのドレッサーの引き出しの中でおねんねしてもらってる(よだれ垂らして寝てるってどうなの)。うーん、早く鳴らない(鳴かない)かな
「名前チャンずいぶんご機嫌だな」
『そう?』
「あァ。何があった?」
『特になにも』
「ふゥん…」
『…なに』
「いや、何も言わねェんだなァと思ってな」
『あぁ…』
なんかやたら訝しんでくる鳥がうざい……が、それでもコイツの言うように確かにあたしは気分が良い。膝の上に座らされ頭上から本を除きこまれ髪を弄られてもそれらを許容してる。なんだろう、どこかに連絡手段(と言う名のオアシス)があるってだけで人はこんなにも心にゆとりが出来るものなんだね
「フッフッ…まァいいけどな」
『うざい』
「ドフラミンゴ!!入る、ぜ…」
「あァ?」
『は?』
うん、やっぱ無理かも。調子に乗って頬を撫でてきたのがうざくてヤツのあご目掛けて頭突きを繰り出したと同時にドアが開いて誰かが入ってきた
え、ノックも無しにこの部屋に入ってくる人間なんてこの船に居たっけ?
「ン?なんだ、ベラミ………」
べらみ?は?なに?だれ?ていうか、ノック云々の前にこの船にコイツを呼び捨てにする人なんていたっけ?なに誰かグレちゃったの?そうだよねお頭がコレじゃあグレたくもなるさわかります。そしてコイツは何を固まってんのどんだけショックなの
鳥の、サングラスの奥の瞳はたぶん不躾に扉を開けた人物に釘付けっぽいけど、あたしはコイツに頭突きをかましたせいでコイツに向かい合う形になっているから扉に立つ人物を確認出来ない。とりあえずコイツには“傷付く”というコマンドは無いはずだけどと考えながら扉へと顔を向けた
『うげ…!』
おいおいこれはどういう事だ。あたしの目がおかしくなっちゃったのかな?
開けられた扉の前に立つ人物。それはあたしが見たことのない人物だった。いやそれはいい、知らない人だろうがなんだろうがそんなのどうでもいい。ノックしないとか呼び捨てとかそんなのもどうだっていい。今あたしを釘付けにしてるのはそんなことじゃないんだよ。目の前で大事故が起きてるんだよ
大柄な体格に褐色の肌、短髪のキンパ、ピンクのタンクトップ。違うのは上着と年齢…と、表情くらい。表情は驚愕と言ったかんじで目をかっ開いてるから笑みこそ浮かんでないものの、これはもうどうみても…
『…まさか…おそろ、』
「言うな」
い。と言い切る前に鳥の手に口を覆われた。チラリと見上げた鳥の顔色が青い。マジで?鳥のこんな顔初めてみた扉の前に立ってる人すげえ。いろいろとすげえ
…や、ていうかアンタも把握してないの?この事態。目の前の子、大事故起こしてますけど?
「…ベラミー…そいつァどういうことだ」
「………」
シカトとかやるなぁ。ベラミーってこの子の名前か?まったくの無反応だけど。そう言えばこの人なんでさっきから固まってんだろう。しかもなんでガン見してきてんの?ガン見したいのは(もうしてるけど)あたしの方なんだけど。そして鳥さえもいつものチャラ男ノリを作れずなんかガチだし。なにこのカオス空間
「……」
「……」
『……』
気まずっ
またしても訪れかけた膠着状態にピリオドを打ったのはお喋りくそやろうに定評のある謂わずもがな鳥だった
「ベラミー…さっさと答えやがれ…。なんだその格好は」
「………え?…あ、あァ?あっ!これか!?」
「それだ」
「どうだ!?カッコイイだろう!?」
『な ん だ と』
「ドフラミンゴ、アンタの真似してみたんだ!」
「な ん だ と」
やべえ。なにもかもやべえ。え?は?カッコイイ?うそだろなんのドッキリなの。真似したうえでカッコイイと?それでそんな嬉しげなの?ちょ、理解出来なさすぎで頭爆発しそう
『……ちょっと…この子アンタのなんかなんでしょ…責任取りなよ…』
「…ベラミー…おめェもう少し髪長かったろう」
「切った」
「ンな黒かったか?」
「夏島の夏の季節に焼いた」
「そのタンクトップは」
「ピンクはアンタのシンボルカラーじゃねェか。それに時代はスマイルなんだろ!」
「『……』」
ドヤッ。まさにドヤッてのがぴったりの顔で誇らしげに言う彼はもうダメだ。このダメな子どっから来たの。実はこの船のクルーでしたってオチじゃないよね。こんな子と船旅してたら失うものが出てきそうでこわいよ
…あとずっと見ないふりしてたけどこの子からのあたしへの視線がハンパない。なんだよ。初めましてはお互い様でしょうが。……まさか…「おれだってドフラミンゴの膝の上に乗っかりたい!」とか思ってるんじゃ……それはもうギャグで終わらないぞ
「……、…アンタ……」
『………なにか』
「…アンタ…、ドフラミンゴの女か…!?」
『なんだよまたそのパターンか』
いやまあ、今回ばかりはこのパターンでよかったのか?
「フッフッフッ…!あァそう、」
『なわけないでしょ止めてよ気色わる、』
「そうか!ならおれも本命の女作るぜ!」
「『…は?』」
「そうかそうか!次はけっこう大変そうだなー!本命かァ、ドフラミンゴが遊んでばっかだったからおれもずっとそうだったもんなァ」
「…おい、ベラミー、」
「ンで出来た女を膝に乗せりゃあいいんだな!」
『いやだから違、』
「よし、女出来たらまた来るぜ!邪魔したな!」
「『……』」
扉がバタンッと勢いよく閉まる直前に彼が見せた屈託の無い笑顔に心が折られました
サーキースはどこだ!と、焦る鳥も初めて見るなぁと思いながらも笑ってやる元気がないあたしは頭痛薬を探すことにした
異国の鳥たち
(アンタの息子すごいね)(ちげェ、マジでちげェ)
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ああやはベラミーに夢を見過ぎてる
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