ドフラミンゴトリップ
□提案するヒロイン
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「あーん」
『きもい』
「あーん」
『うざい』
「あーん」
『耳障り』
「あーん」
『気持ち悪い』
「あーん」
『気色悪い』
「あーん」
『しつこい』
「あーん」
『……』
「あーん」
『いやだからしつけぇ!鳴き声か!』
世にも恐ろしい雛鳥の襲来がありつつも船は順調に航海していて、今朝には次の島に到着していた。今回はどんな島なんだろう。一度だけそこそこゆっくり見てまわれた島でこの世界初となる友人…友熊?が出来たあたしは密かに今回の上陸に期待してた。もしかしたらまた新しい友達が出来るかも!
ベポにクロコダイルさんにミホーク(と、別枠でおつるさんとセンゴクさん)。全員申し分無いくらい良い友人(一部友熊)で日々のストレスの中和剤的役割を果たしてくれているわけだけどちょっと待って、人外とオッサンて。あたしの友達枠どんだけだだっ広いのこの世界来るまで知らなかったよ。いや、いいんだよ、すっごい満足してるんだ、だってあたしの癒しだもの
でもさ、欲を言えばやっぱりもう少しこう…ピチピチしててハリ感のある…うんごめん、ぶっちゃけ(人間の)若者の友達(さらに言えば女子)が欲しいんだよね…。一緒に買い物巡りしたりランチしたりガールズトークしたりさぁ、そういうのが出来ないんだよね今の現状だと。同年代ノリが欲しい
なんていうかほら…ムサイ空気は嗅ぎ飽きたんだよね…。クルーの皆も海賊とは思えないオシャレさんとか童顔弟属性とかフレッシュ爽やか系とかも居るんだけど、居るんだけどそんな人達だって人数が集まればキツいんだっていうのを身を持って体験してる毎日だからね。基本的にはガチムチ新陳代謝良好野郎ばっかりだからね。どんな爽やかさんや童顔くんでも汗かいて時間経てば“ムサイ”カテゴリーに入るわけ。香水だなんてシャレたものは上陸して女の子ナンパしに行くときにしかつけてないみたいだし
だいたいにして、クルーの皆はあたしに敬語使うし妙に煌めいた瞳で見てくるし(陰で“姐さん”って呼んでるの知ってんだぞこら)で、どんなに近い年齢の人でも“友達”と呼べるような関係は造れないと思う。そんなわけだから、あたしは友達探しも兼ねて街中を散策したかった
そうすると(そうしなくても)ピンク色した怪鳥が邪魔くさくってしょうがない。こんなの連れて歩いてたら(連れて歩く予定は無いが)同年代の女友達なんて夢のまた夢だ。だから絶対に絶対にひとりで気ままに散策したい。そこで、そろそろコイツの扱いに慣れてきてしまった可哀想なあたしは、コイツにひとつ提案をした……ら、今の鳴き声を聴かされるハメになったわけだけど
『今日の夜ご飯あたしが作る。食べたかったら昼間はあたしをひとりにさせやがれ』
「…!名前チャン…そりゃあ…」
『なに。絶対ついてこないでね、絶対だから。だれかに後つけさせるのも無しね』
「……」
『じゃあ行ってきます』
「……」
『…なに、腕放して。文句は受け付けないから』
「…フッフッフッ…!…可愛いこと考えてくれるじゃねェか」
『は?』
「悪ィがバレバレだぜ、これはアレだろう。ご飯にする?お風呂にする?それともあたし?ってやつだろう」
『お前なに淡々と勘違い発言してんの?』
「ひとりでおれが興奮しそうな下着でも選びに行くつもりか」
『バカじゃない?』
「わざわざ隠す必要無ェ、ネタバレしててもおれァモチベーションを維持出来るぜ」
『バカだったね』
「名前チャンだったら何色でも似合うがおれの好みは黒か赤か紫だ」
『そこはピンクって言っとけよ』
「新婚さんごっこたァ燃えるじゃねェか…フッフッフ!」
『あたしの人権を貶すのがそんなに愉しいか』
へらへらと笑いながら謎発言を連発する目の前の男にいい加減うんざりしたあたしはそんなわけないだろと言う代わりにビンタを一発かましてやった。まあそのあと、そんなわけないだろって言ったんだけど。けどこの奇人は頬に真っ赤なもみじを作ってもまったく動じないどころかさらに笑い出す
「フフッ…いまさら照れるな」
『もう一発欲しいわけね』
「飯、風呂、名前チャンの順だ」
『グーのほうがよさそうだね』
「飯は当然だが風呂も一緒だぜ」
『だぜ、じゃねーよそんなわけあるか。ていうかあたし外でご飯食べてくるつもりだからご飯の時点からアンタひとりだし』
「あァ?一緒に食わねェのか?」
『お一人様でどうぞ』
「…そうか」
『そうだよ』
「ンな急かして名前チャンを喰って欲しいのか」
バチンッ
それから直ぐに何人かのクルーが慌てた様子で仲裁に加わり、怒り心頭のあたしの代わりに鳥に一から説明し直してくれた。それもかなり時間が掛かってたけど、コイツの脳内はどんだけ自分主義に物事が進んでんだ。「違いますお頭、名前さんが言う飯ってのは食物のことっス」「飯の支度をするとしか言ってません、それ以外は言ってません」「いやだから、下半身の食事はないですってば」…そろそろ沈めていいかなこの変態
あたしの周囲の空気が冷たくなっていくごとに焦りはじめるクルー達の必死の説明の甲斐があってか、渋々納得したらしい鳥(渋々ってあたりにまた殺意が湧いた)。とは言えこれ以上この話を引きずって上陸が遅くなるのはイヤだったから、そう言うわけだから行ってくる、と言い逃げしてさっさと船を後にしようとしたあたしに向かってコイツはまた(いつも通り)わけのわからんことを言い放った
「なら作った飯はあーんしろよ」
『言ってて恥ずかしくないの?』
どうやったらこんなウザイ生き物が育つんだろう
そういうの全部きみにだけだってことにきみが気づく日は来ないのかなあ
(名前さん、それを承知しないとドフラミンゴさんは永遠に駄々こね続けますよ)(自分の思い通りに行かすまで相手を徹底的に責め抜くのがお頭っス)(えげつないのが売りなんです)(結果、最低野郎ってことね)
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ドフラミンゴ絶好調
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