ドフラミンゴトリップ

□傍観するクルー
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※クルー視点





うちのお頭は本当に懲りない人だとしみじみ思う。懲りないっていうか、ある意味これはハングリー精神というものなんだろうか。感心の域だ。何がってそりゃあもちろん、名前さんへのアレコレだ

お頭をどうにか言いくるめて一人上陸に成功したはずの名前さんが早々と船に戻ってきた。もっとのんびりして来るものだと思っていたので名前さんに尋ねてみれば『見ず知らずの上半身裸の男の人とフラグ立ったっぽくなった上に尻拭いまでさせられてこわくなって帰ってきた』とのこと

…え?裸?男?尻拭い?こわかった?え?…え?軽いノリで尋ねたらとんでもなく恐ろしい単語の羅列が返ってきた。な、なにがあったんスか名前さん!思わず名前さんの肩をがっしりと掴み前のめりで責めてしまったおれ悪くない。だってそんな、裸・男・尻拭い・こわい のワードから導き出される答えってそれってそんな…!お、おれ達の姐さんが…!そんな…!

うちのお頭ですら守り抜いてる名前さんの禁断の花園的な部分にどこの馬の骨…つーかブツとも知れねェモンがアレコレしちゃったとかそんな…!両手で顔を覆いおれが泣き騒げば『完璧すぎる勘違いだね』と名前さんは呆れた表情でおれの頭をぺしりと叩いた

ぺしり。クルー同士ふざけてどつき合うよりも優しい。ぺしり、だって。ご存知の通り名前さんがハードプレイを施すのはお頭限定なわけで、おれ達クルーなんかには絶対にプレイしない。冗談を言ったりふざけたりした時も基本は ぺしり とか ぺちん とかそんなもんだ

実はこうやって名前さんに突っ込まれて相手してもらうのがクルー達の中でステータスになっている。この船では、お頭へ抉るほど鋭いツッコミをかます名前さんに突っ込まれたら一人前的な雰囲気が生まれつつあった。でもまあ、これがお頭だったなら べちん でも済まないだろう。べきょ とかそんなレベルだろう。そこへ到達するのは不可能だし一切目指してもいないけど

その後、おれの勘違いを訂正した名前さんはキッチンが空いてるかと訊いてきたのでお頭に飯作るんスねって言ったらすんげェ渋い顔された。ブルドック並みに皺寄せてた。どうやら首を縦に振るのがイヤらしい。でも事実だし約束したからにはきちんと果たすつもりらしい。流石です!名前さんのそういうところが漢らしくてカッコイイ!キッチンへと向かう名前さんの後ろ姿がカッコイイ!

少しだけ浸っていたら背後から声をかけられた。今この辺りに名前チャンが居なかったか。お頭だ!お頭には名前さんレーダーが付いているため、名前さんが何処に居るのかすぐわかる。精密さパネェ。今もダレにも何も言われなくても帰って来たのを察することが出来たようだ。やはりお頭は格が違う!でも流石にこわいっス!と思うのは内緒だ

キッチンに向かいましたよと答えたらみるみるうちにお頭の機嫌とテンションが上昇していく。お頭の周りで花が咲き誇るのが見えるはっきりと見える。こわいっスお頭!おれの心情など微塵も気にしないお頭は独特のあの笑い声を出しながらそうかそうかと呟きながらキッチンとは別の方向に進もうとした

おや?お頭なら自分のために料理する名前さんを見てはしゃぎそうなのに。覗いてかないんスか?と思わず訊いてしまった(こんなこと訊いてお頭がキッチン行きになったことが名前さんにバレたら怒られる!)。しかしお頭は以外にもこれを拒否。「わかってねェなおめーは。料理を持ってきたときのいじらしい姿のほうが見てェに決まってんだろうが」だそうだ

曰く、調理中に覗きに行って『んもう!まだ出来てないんだから見ちゃだめぇ☆(ぷんぷん)』よりも、ノータッチでいて料理が完成したときに『ドフラのこと考えながらひとりで一生懸命作ったの…食べてくれる…?(うるうる)』のほうがイイとのこと

そ ん な バ カ な !これまで一緒に過ごしてきた中で一度でも名前さんがお頭にそんな態度を取ったことがあったとでも言うんですか!ていうかおれ達にすらあり得ない態度っスお頭!そもそもキャラじゃないっス!名前さんが ぷんぷん うるうる ☆ ……うん、間違いなく船医呼ぶ

お頭って名前さんのことになるとちょっとおかしくなるから困る…。おれ程度ではわざとなのか素なのか判断出来ないから本当に困る。突っ込むべきか乗るべきかどうすればいいんだ。ひとりでは捌ききれない。ご機嫌で部屋に戻るお頭の、やはり後ろ姿を見つめながら現実は良くてせいぜい『残したらはったおす』くらいじゃないかと思ったけど言えるはずなかった

だけどなんだかんだお頭が羨ましい。だってきっと、名前さんはお頭の要望を叶えあーんで食べさせてくれるんだろう。なにをしても懲りないのは、最終的に総てを許容してもらえるとわかってるからだ。間違ってもお頭の妄想通りにはならないけどそれは妄想よりもお頭をご機嫌にするだろう

たとえ出来上がった料理がクルー全員分量産されていても。内容が鶏の唐揚げだとしても。肉汁弾ける熱々を問答無用で口の中に突っ込まれていても。そうだとしてもお頭が羨ましいと思ってしまうのも、内緒だ




















願わくはぼくだって



(うわァ…名前さん無理矢理お頭の口閉じたぜ)(ひいーこわっ!あれ口ん中大火傷だろ!なんでお頭はそれでも満足気でいられるんだ!?)(……やっぱ羨ましくないかも…)















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まさか羨ましがられるとは



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