ドフラミンゴトリップ

□チャリ漕ぐのっぽ
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ドフラミンゴがスモーカーに着いて行くとはしゃぎだしたところを全身全霊を込めたボディブローで黙らせた名前だったが、彼女は、彼女に立てられたフラグはどうしたっていずれは必ず回収されるものだと言うことを知らない









『……』

「……」

『……』

「……」

『……』

「……」

『………こ……こんにちは……』

「はいこんにちは」

『……』



スモーカー達が乗っていた海軍船が島を出航した数日後、ログが溜まりログの指し示す方角へと船を進めたドフラミンゴの船。それは、エターナルポースを辿るスモーカー達の行き先とは異なる方角だった

これでまたしばらくはウザくてムカつきながらもそこそこ静かな時間が過ごせると、名前は油断しきっていた。船を出して直ぐはドフラミンゴが調子にノってスモーカー達を追おうとするのではと警戒していたが、流石にログの示す方角を無視することはなかった。それから何日か経った今日、晴れ渡る空に穏やかな気候を感じるべく名前は船尾の隅で一人海を見渡しのんびりしていたのだ。しかしその油断が身を滅ぼすのだとその時の名前が気付くはずもない。そうして今ようやく、油断していた自分を叱咤するのであった

海原をチャリンコで船と並走だと……!?

捌ききれないボケ(?)を前に、ごくり、と喉を鳴らす名前の眼下にはこの果てしない海を青いチャリンコで漕ぎまわるスーツを着たアフロのおっさんが居る。ぼんやり海を眺め天気のせいもありふわふわした気分でいた名前がふと船の真下あたりに視線を落としたら、居た。何か居た。いや、何か、と言うかチャリ漕ぐおっさんが居た。しかも名前をめっちゃ見上げてた

この世界に訪れてからハイスピードで培われた危機察知能力により反射的に目を逸らした名前だったが時すでに遅し。相手の視線がざっくざく突き刺さる。無念を噛みしめながら相手に視線を戻した名前だったが、目が合っても尚なぜか無言を貫く相手に根負けして思わず挨拶してしまったのだった



『…い、いいお天気ですね…』

「こんな日に仕事なんてやんなっちゃうねー」

『………サボりですか』

「休憩休憩」

『……はぁそうですか』

「あ、疑ってる?ひどいなウソじゃないのに」

『……。(いえ別にウソだろうがホントだろうがどちらでも構いませんが)』

「ここは休憩らしくティータイムがしたいなー」

『……。(誘えって振りじゃないだろうな)』



チャリンコで偉大なる航路を彷徨うことが休憩の一環だなんて言ってのける人物の、周囲で働く顔も知らぬ人々に名前は同情した。この海に詳しくない名前だが、そもそも海をチャリンコで彷徨う時点で沢山間違いがある。そしてなんかめんどくさそうな人っぽいなと名前は男を見下ろす



「…ところで」

『…はあ』

「きみが名前チャン?」

『!!』

「お、その反応だとアタリみたいだね」

『……』

「あららそんな険しい顔したらせっかくの美人さんが台無しだよ」

『……』

「あれ?更にシワが深くなっちゃった」

『……』

「えええーおれなんかした?」



眉間にありったけの皺を寄せ相手を見下す名前。男が自分は怪しい者じゃないと弁解らしき発言をユルい口調で述べてるがそんなものどうでもよかった。捉えどころの無い話し方、女慣れしてそうな軽い発言、成り立たない会話そして極めつけは“チャン”付け。名前が思うことはただひとつ

なにコイツ鳥なの?なんなの?フラミンゴなの?

概ね正解である。男の名はクザン、またの名を“青雉”、海軍大将のひとりだ。そして名前が回避したはずのフラグを自ら手に取り届けに来た男である。名前の話をセンゴクから聞いたクザンはその日から名前に会うべく普段以上に偉大なる航路を徘徊していたのだ。名前にとっては迷惑以外の何物でもない事実である。そしてこの時から対鳥モードに入りつつある名前のクザンへの対応は冷え冷えしたものとなる



『…あたしに何か用ですか』

「いや?何も無いけど?ただ会いたかっただけだよ」

『じゃあもう会ったんでどうぞお引き取りください』

「えっそりゃ会ったけどでも…」

『どこであたしの事を嗅ぎ付けたか知りませんがあなたストーカーって言葉知ってます?』

「嗅ぎ付けるってそんな…てゆーかストーカーってちょ、違う違う!おれはそんなんじゃなくてね、」

『いいですわかってます、自分がストーカーだと理解してるストーカーなんてあまり居ないでしょうから』

「だからストーカーじゃないんだってば!海軍、おれ海軍だから。名前チャンのことはセンゴクさんに聞いて知ってたの」

『なるほど、帰れ』

「なんも納得してない!」



実際のところ名前は海軍とセンゴクのワードが出た時点である程度クザンの話を理解していた。だが、タイプが違えどベクトルがドフラミンゴと同じ方向を向いてると認識されたクザンは冷ややか眼差しと態度を浴び続けたのだった



「…ねェ、おれセンゴクさんから名前チャンのことすげェイイ子だって聞いてたんだけど…」

『悪いことはしてないと思います』

「おれへの当たり方!」

『……』

「無言は肯定だよね!おれへの当たり方悪いって自覚あるわけ!」

『…はぁ』

「た、ため息……おれが吐きたいよそれは…おれ職場以外で女の子にツラく当たられたことないんだけどなァ」

『(職場でツラく当たられてるのか)』

「…ま、いいや。ひとまず今日は顔さえわかればそれでよかったし、面倒なのキライだしそろそろお暇するわ」

『?なに、』

「名前チャンどこ行った、おやつの時間だ一緒に食おうぜ」

『……』

「ね、面倒でしょ(おれンときより皺が…)」

『…そうですね』



さんざん鬱陶しく絡んだでおいてなにを今さら面倒だと言うのか、と尋ねようとした名前は少し離れた場所から面倒中の面倒、キングオブ面倒の声を聞く。まだ姿は見えないがもう間もなく名前のもとへ現れるだろう。ていうかおやつってそれあたしがさっき作っておいたプリンのこと言ってんじゃないだろうなお前なに自分も食べる前提で喋くってんだ。名前の表情は光の速さで険しくなっていた



「じゃあね名前チャン、次会ったらお茶しようね」

『嫌ですけど?』

「別れ際までそんな!」



そこは社交辞令でしょうがとブツブツ言いながらも手を振り遠ざかって行くクザンに律儀に手を振り返し見送る名前は、きっと肯定してもしなくても会うハメになるのは分かっていたが対鳥モードなのでどこまでも否定的だった



『結局ダレだったの』




















海原サイクリング



(ンなとこに居たのか…って、ダレと居やがった…)(チャリンコに乗ったアフロの人)(あァ…?青雉の野郎が来てやがったのか?)(は?雉?人間にしか見えなかったけど)















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職場でツラく当たられるのはサボってばかりだから



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