ドフラミンゴトリップ
□白熊と再会
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「冬島ひさしぶりだねキャプテン!」
「そうだな」
ログを辿り着いた島は冬島で、ここしばらく暖かい気候が続いていただけに新鮮に感じ、ベポがはしゃぐのも頷ける。ジャンバールは寒いと言うがおれを含め北の出であるクルー達からすればたいしたことはない
「キャプテン、おれ腹減ったなー」
「アァ…シャチ、この島の治安はどうだ」
「いまンとこ同業者に荒らされたりってのは無さそうだな」
「そうか。…ならテキトーに飯屋にでも入るか」
一足先に町を軽く見廻りしてきたシャチの発言を受け、まずは腹ごしらえすることにした
「い、いらっしゃいませ……ももも、も、申し訳ございませんが本日は貸し切りでして…」
町の端にこじんまりとしているがどことなく気を引く店を見つけ入った矢先ウェイトレスに止められた。ウェイトレスと言っても普段着にエプロンを着ているだけでかしこまった装いではないので、店の雰囲気のわりには気兼ねしなくてよさそうなことにも好感を持てたのだが
「貸し切りだと?」
「ひ…!、はいぃ…!」
ビビりながらもしっかりと肯定するウェイトレス。だが店内はそこまで賑わっているように思えない。見える範囲内には空いたテーブルもある。人の声はするが貸し切るほど人数は多くなさそうだ
「…VIPか何かか」
「え、えぇと、あの…は、はい…!」
「…フン…まァいい。場所を変える」
「おれはどこでもいーよー」
「…あ、ありがとうございました…ま、またのお越しを、」
「オイねえちゃん、揉め事か?」
「ひいっ!?」
VIPかと言う問いに歯切れの悪い返しをされたがいちいち気にするほどでもないので早々に店を出ようとすれば、律儀にも職務をまっとうしようとするウェイトレスの背後から男がひとり現れた。ブルーのテーパードチノにサーモンピンクのムートンブーツ、室内だからか白地にイエローグリーンのタイダイ柄のTシャツを着ていて、ネックレスやバングルなどもじゃらじゃらと合わせた派手な出で立ちもさることながら目付きの悪さと腰に下げた銃が男をさらにカタギから遠ざける
航海の中で派手に着飾る奴等はそれなりに見てきたがここまで鮮やかな身形をしている奴等というのはおれが知る範囲ではさすがに限られる。そしておれより先にシャチが隣に来て言う
「ジェイさん!?」
「ん?…あ、ンだァ?シャチじゃねェか…つーかお前達…久しぶりだな」
「…アァ」
「お久しぶりですジェイさん!」
おれの生返事に被さるようにペンギンが声を上げる。ぽかんと口を開けジェイとおれ達を見つめるウェイトレスにお構い無しでシャチとペンギンはジェイと会話を弾ませる。おれはと言えばこの男がここに居ると言うことはとうぜん、アイツも居ると言うことでそれがおれの機嫌を急激に下降させていく
「注文した酒がおせェから来てみたんだが、まさかお前達が居るとはな」
「!もっ申し訳ありません!今すぐお持ちします!」
「あァ頼む…怒っちゃいねェんだ、そんなにビビることもねェよ。…それとコイツら通してくれ、知り合いだ」
「はっはい!かしこまりました!」
「…おれ達は他へ行く」
「おいおいロー、久しぶりに会ったんだから付き合えよ」
「……」
「ンだよノリ悪ィ…あァ、ドフラミンゴさんなら心配いらねェぞ、あの人いま他にかまってらんねェくれェのお気に入り居るから」
「…?お気に入りだと…?」
「見たらビビるぜ、物見遊山のつもりで一杯くらいいいじゃねェか」
なァ、とおれの目を見て妙に何かを含んだ笑みを浮かべた男に溜め息を吐く。だがそれが承諾の意であると理解したウチのクルー達は楽しげな声を上げた。そうして一歩店内に足を踏み入れたところで、店の奥から女が出てきた
真っ黒のゆるめニットセーターに薄いブルーのクラッシュデニムスキニー、黒のショートブーツといった、ジェイを見たあとでは随分と地味な格好に思えるその女は、やけに顔色が悪い。酒にやられたのだろうか?具合も悪そうだ。店内から現れたということはコイツもドフラミンゴの一味か?おれの知る限りでは記憶に無い
ジェイが後ろを振り返り女に対して何か言おうとした時、女がこっちを凝視しながら口を開いた
『…………ベポ?』
「えっ……あ、あーっ!名前!?」
『やっぱり!ベポ!ベポだ!うそー!すごいすごい、ほんとにまた会えた!』
「名前!本物だ!名前久しぶり!おれすっごく会いたかった!」
『うんあたしも!ベポかっこよくなったね!』
「ほんと!?」
『ほんとほんと!オレンジのつなぎも似合ってる!』
「へへっ!ありがとう!」
両手を握りしめ合い再会を喜ぶベポと女にぽかんとしたのはおれやクルー達だけでなくジェイも同様で、ベポとはしゃぐ女を唖然と見ている。心無し顔色が悪くもなっている。逆に女は血色が良くなった
「…名前さん…知り合い…?」
『そう、友達!』
「友達………その熊以外も?」
『え?あ、いやベポだけだよ。ベポ、もしかしてこちらのみなさんはベポの仲間なの?』
「そうだよ!この人がキャプテン!」
『あの、初めまして。突然すいませんでした、名前と言います』
「……いや……おれはトラファルガー・ローだ…」
『ベポから少しだけ話を聞いてます。よろしくお願いします』
「…あァ…ベポ、お前いったい、」
「名前さん!よく知りもしねェ野郎とやたらとヨロシクしちゃだめスよ!」
『え、ジェイくんいきなりどうしたの』
お前いったい何があっておれも知らねェクルーと知り合った。ベポに訊ねようとしたらジェイが血相変えて女を制した。実質ドンキホーテ・ドフラミンゴの船のNo.2が敬語を使うとはこの女何者なんだ
『ベポは友達だし、トラファルガーさんは初対面なんだから知らないのはしょうがないって』
「つーかなんでこの熊とダチ!?いつのまに!?この熊だって海賊っスよ!?おれ達の知らないところで危ないことしないでください!」
『え、え?ごめん?いやでも、ベポ良い子だから危なくないから大丈夫なんだけど』
「大丈夫って名前さんンな呑気な…!…つーかその熊オスですよね。例え熊だろうと豚だろうと知らんところで名前さんが野郎と仲良くなってたなんてドフラミンゴさんが知ったら、」
「フッフッフッ…おれが知ったら?」
「ッ!?ドフラミンゴさん…!」
『げえっ!』
「久しぶりだなァロー。そっちの熊も名前チャンの友達ってならゆっくりしていきな、フフフフッ!」
チリチリと肌を焦がす覇気をおれ達に浴びせながら女を後ろから抱き込むドフラミンゴの様子に、女が何者であるか自分の中で答えを出す。有無を言わさぬ威圧感に戸惑いながらベポがおれの耳元で呟いた
「ふたりはつがいなのかな?」
瞬間、女の裏拳がドフラミンゴに炸裂した。そしてこのわずか5分後にはおれは自分が導き出した答えとベポの発言を心の中でそっと訂正するのだった
越えられない壁と一方通行
(あーあ、せっかくドフラミンゴさんご機嫌だったのになァ)(…おいなんだアレは)(ア?まあ今のウチの日常風景だ)(……)
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ベポやジャンバールの時間軸とかもろもろはスルーの方向で
ギャグの魔法(^O^)/
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