ドフラミンゴトリップ

□お別れ会
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※ロー視点





「名前チャンは病み上がりで実際は町を歩かせるのもイヤだったんだぞ、それを偶然出くわしただけの野郎が図々しくアレ作れコレ作れ指図するだと?殺されてェのかテメェ。普通なら労わって座らせておくもんだろうが。無理させてまた倒れたらどう責任取るつもりなんだ?アァ?気遣いも出来ねェクソが名前チャンの友だなんだとよくもデカイ口叩きやがるなァ」

お前が言うんだ?
理不尽大魔王が鷹の目を正論チックに責めまくるのを、名前が言い過ぎだと怒った。無表情でドフラミンゴを見る鷹の目に、気にしなくていい落ち込まなくていいと名前が声掛けしたが、おれには鷹の目が気にしたのか落ち込んだのかサッパリわからなかった。眉ひとつ動かさねェんだぞアイツ。しかし、表情変えずに小さく頷き二人の約束とやらは結局延期になったところを見ると本当にドフラミンゴの言葉に傷付いたのかもしれない。そこで、せっかく会えたのだからと、おれ達と名前の別れの宴会に鷹の目も参加することになった。いいかな…?と遠慮がちにお願いしてきた名前の両隣りには、相変わらず無表情の鷹の目と(こっち見んな)と、ギリギリしながら鷹の目を睨むドフラミンゴが(お前は消えろ)居て名前の苦労が伺えた。こんなめんどくせェ野郎達に懐かれるなんて、おれなら死ねる

そうしてすったもんだあったが宴がはじまり、今はそこそこ盛り上がっていた
「…それにしても」
「なんだ?」
「アレはなんだ」
酒を飲みながらジェイに訊ねる。おれの視線の先を辿りジェイは苦笑した
「ありゃあウチの日常風景だ」
視線の先には名前が居る。だが、名前はドフラミンゴの膝の上だ。ドフラミンゴの膝の上に座り、その隣に座る鷹の目やベポと楽しそうにしている。ちょいちょいドフラミンゴが口を挟み、その度に険しい顔をするものの、膝の上から降りる様子はない
「…あんなの、名前はもっと抵抗して嫌がりそうなモンだと思ったぜ」
「あァ、実際すげェ抵抗するぜ。けどな、それ以上にドフラミンゴさんが諦めねェんだ。だから結局は名前さんが折れてされるがままってわけだ」
「…本当に碌でもねェ野郎だな」
「けどよ、名前さんが本気で有り得ないと思うような場面なら殴って抵抗して好きにはさせねェから、今夜はそこまでじゃねェんだろ」
「ふうん…」
「おっ。まさかヤキモチか?」
「ンだそれ。くだらねェ」
「まァまァ、普段なら他所のヤツらが居る前じゃ絶対にあんなことさせねェよ。ただ、今回は風邪ひいて心配かけちまったって負い目が少なからずあるんじゃねェかな」
ニヤニヤしながらおれの肩を組むジェイに腹が立つ。そうじゃねェと言ってんのにこれだからオッサンは
「気になるなら行ってこいよ」
「うるせェ」
「まっ、ドフラミンゴさんもあんま調子に乗ると名前さんの鉄拳制裁が待ってるのわかってるからバカはやらねェよ」
「…そんな軽いモンでアイツが止まるのか?」
「一切の躊躇無く全身の力を利用して首目掛けて繰り出される張り手には殺気がこもってたぜ」
「……」
「日常風景だ」
どんな日常だよ。殺伐とし過ぎだろ
「なんにしても名前さんが側いるとあの人おとなしいから助かるぜ」
「まァ…いつものウザさは無ェな」
「ゆっくり酒が呑めるぜー」
今までならことある事に絡んできて、ドフラミンゴといると美味い酒を呑めた試しが無いが、今日はこちらを気にして来ないので寛いでいられる。それが名前のおかげな事は明白だ

「うわ、ドフラミンゴさんまたやってら」
「ア?」
見るとどうやら酒を零したようで、名前が怒りながらタオルでドフラミンゴの胸元を拭いている
「…わざとか?」
「見りゃわかんだろ」
ぶん殴りたくなるくらいのニヤけたツラで名前にされるがままのドフラミンゴは、どう考えても確信犯だ
「名前はわかってて拭いてやってんのか」
「いや、気づいてねェ。ドフラミンゴさんが無駄にレベル高い自然を装うからな。ほら見てみろ、名前さんが顔上げた途端に普通の顔しただろ」
「普通の顔も胸糞ワリィけどな」
「名前さん、汚したりだらしなかったりすんのキライだから反射的に動いちゃうんだろうな」
「あの野郎の思うツボじゃねェか」
「それでも結局許しちまうのが名前さんだからなァ。なんだかんだドフラミンゴさんの扱い上手いし、今じゃよほどじゃねェと見限ったりしないだろ。たぶん」
「たぶんかよ」
「おう。たぶんな」
そう言いながらもどこか確信めいた口調のジェイはにやりと笑う。本当にコイツ悪い顔してやがる
「そう言うわけだから、消極的だと先越されるかもしれねェぞ」
「しつけェな。まだ引っぱってんのか」
「コエー顔すんなよ。ま、会えるうちにチャンスは回収しとけよ」
そう言い捨てジェイはニヤニヤ顔のまま、他のヤツらの輪の中に向かう。名前のドフラミンゴに対する態度は淡白だ。風邪を引いてうやむやになったが、今回名前は家出まがいの行動を取っている。なぜドフラミンゴなんかと一緒に居るのか知らないが、本気で船を出たいのだろうか。ベポやおれには朗らかで、ドフラミンゴには違うのだからジェイの言うように離れる気が無いようにはあまり見えない。その気になればいつでも出ていくんじゃ?とは言えドフラミンゴの執着心のえげつなさは、おれもよくわかってる。加えて名前に対するソレは群を抜いてひどい。あれじゃ仮に出て行ったとしても連れ戻されるのがオチだ。まあ、ツラい思いはしてなさそうだからまだ様子見でいいだろう。…ドフラミンゴに気に入られたことがツラいと言われればそれまでだが

「キャプテン!キャプテンも来なよ!」
「んー…おう」
ひとりで居る姿を見てベポが呼ぶ。それに反応して名前が笑顔で手招きするからドフラミンゴの視線がうざい。日頃の行ないが悪過ぎるから笑いかけてもらえねェんだよ。ジェイとの会話の手前、行くのがはばかられるが無視するわけにもいかずノロノロと名前達のもとへ歩く
『楽しんでる?』
「まァまァだ。お前は飲みすぎるなよ」
『大丈夫、さすがに病み上がりに飲む気になれない』
「そうか」
『ローくんは?お酒以外に何か食べた?』
「あァ、ほどほどにな」
「キャプテン、これうまいよ!」
「ン、なら食うか」
『仲良いねぇ』
名前の正面に座りベポに薦められた料理に手を付けるが、ドフラミンゴのしつこい視線と鷹の目の窺うような視線が邪魔で味わうもクソも無ェ。やっぱり近寄るんじゃなかった。めんどくせェ
『明日は早くに出航するんだってね』
「ア?あァ、気候が安定してるうちに距離を稼ぎたいからな」
『そうだよね。この島にいる間バタバタさせちゃってごめん。ゆっくり出来なかったでしょう?』
「気にするな。ベポは楽しんでたみてェだし、おれも他の奴らも迷惑に思って無ェ」
『そう?そう言ってくれると嬉しい。ありがとう』
「おう」
「キャプテンと名前が仲良くなっておれも嬉しい!」
ベポの満足気な言葉に合わせてギリギリするような視線が増した。いや今のはベポだろ。なんでおれを睨んでくるんだコイツら。ドフラミンゴはともかく、悪意は感じられないが鷹の目の視線はなんだ。名前はともかくベポもコイツらに慣れてしまっているようで平然としてるのが少しこわい。馴染むなよ。熊の本能とか働かないのか。名前と平気で話を弾ませてるが、ベポが何か言って名前が笑うたびに、名前の腹に回ってるドフラミンゴ腕に力が入っている。たまにその腕を名前が叩くがまったく懲りてなさそうだ。鷹の目のは何考えてるかわからん顔で名前とベポを凝視してる。なんだよココは。究極にめんどくさい

それでもこの輪から抜け出せず少しずつ時間が経つ。主に名前とベポが話して、それをおれや鷹の目、ときどきドフラミンゴに振りつつほどほどに普通と言える状況が続いた
「あ、見てキャプテン、ペンギンが潰れてる」
「ン?あァ、なんだ、他も限界じゃねェか」
よくよく見渡せばおれのクルーもドフラミンゴのクルーも寝転げていた。ジェイに至っては姿が無い。部屋戻って寝やがったなアノ野郎
『これはそろそろお開きだね』
「あァ。ベポ、戻るぞ」
「ペンギン達は?」
「ほっとけ」
「アイアイ」
『ウチの人達も放置かなぁ。声掛けて起きた試しないし』
ブランケット取ってくると苦笑しながら立ち上がる名前に、おれも行くとドフラミンゴが我先に続いた。荷物持ちにでもさせる気か、否定しない名前は連れ立って行ってしまった。……オイ、鷹の目を置き去りにするなよ。まったく読めない顔でいまだに黙々と酒を飲む鷹の目に、ドフラミンゴとは違う疲れを感じる。名前はなんだって仲良くやってんだ。アイツもたいがい変わってるだろ。言ったらものスゲェ嫌な顔しそうだと、想像したらちょっと笑えた
「…貴様は」
「…ア?」
ふいに鷹の目がおれに声をかける
「貴様は名前とは長いのか」
「ハア?」
これまでほぼ黙っていた男が何を言うかと思えば
「いや。この島で初めて会った」
「そうか」
それだけかよ。どうにもこの男は言葉数が少なすぎる。ドフラミンゴみてェに鬱陶しく喋れとは言わないが、もっと情報を提供しろよ
「…まさかアンタ、名前に惚れてンのか」
名前の事となるとほかより興味を示してるようにも見えなくもない鷹の目に、ひとつの可能性が浮かんだ。この男が惚れた腫れたの感情を抱くのかがそもそも疑問だが、ドフラミンゴもやけに牽制しているしそう言うことなのか?
「?名前は友人だが?」
「あ、そう…」
無性に恥ずかしい。なんなんだよ、なんでおれが浮ついてるみてェになってんだよ。相手にするんじゃなかった。早く戻って来いよ名前。おれコイツ苦手だわ
「…友人の友人は友人…そうだろう?」
「いやなにが」

このあと戻ってきた名前が鷹の目の様子の変化に気付き、結果、おれが怒られることになった。なんでだよ



















重なるのは君の影



(あたしだけじゃなく、おれともこれからも仲良くしてくださいってことじゃん)(わかるわけねェだろ)
















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ローは苦労人

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