ドフラミンゴトリップ

□アニマルクッキング
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ローたちと別れ早数日。ドフラミンゴの船は晴天続きの空の下、のんびり航海している

「腹が減った」
「オウおはようさん、座っとけ」
「うむ」
食堂に来るなり食事を要求したのは鷹の目の男だ。コックは当たり前のように返事する。ローたちとの別れの宴会の次の日からごくごく自然に乗船しているミホークはすでにクルーの一員かのような雰囲気を晒し出していてる。クルーの面々も、もはやミホークの存在を特になんとも思わず生活していた

『馴染み方がすごい』
「帰れよ」
ミホークよりあとに食堂へ来た名前とドフラミンゴは、カプチーノ片手に新聞を読むミホークを見て思わず呟いた
「遅いぞお前達」
『そっちが早過ぎるんだよ。まだ7時前だけど?』
「名前が朝に弱いとはな」
『弱いと言うか…。早起き自体は問題無いんだけどね…』
自分の寝起きの悪さにバツ悪そうにする名前がそのままミホークの前に座ってしまったので、ドフラミンゴも仕方なくその隣に座った。ミホークが乗船してからずっと、ドフラミンゴの機嫌はよろしくない。なぜってもちろん、名前がミホークとばかり過ごしているからだ。とは言え実際はドフラミンゴも名前にくっついて回ってるので、クルー達から見たらあの三人よく一緒に居るなァとの認識だが。だいたい、このヒゲ男はなぜ船に乗ってるんだ。だれも許可してない。ドフラミンゴはそこから謎だった
「今日はなにを作るんだ」
『今日?まだ決めてないなぁ。どうしようね』
不満は山ほどあるが一番腹立つのはミホークが毎日名前に菓子作りさせることだ。おれを差し置きなぜコイツが毎日手作りを振る舞われているのか。意味がわからない。しかしこのあとドフラミンゴにとってさらに意味のわからない展開になる

「おれにも作れるだろうか」
『えっ…』





『不安…』
「フッフッフッ…!」
ミホークがお菓子作りをしたいと言い出したことで、現在キッチンにはエプロン姿の名前、ドフラミンゴ、ミホークが居る。名前は始まる前から疲れた顔だし、ドフラミンゴはイライラしてる。ミホークだけがウキウキとキッチンに並んだ材料を眺めていた。それだけでこれから起こることがろくなもんじゃないと想像出来る
「さて、なにを作るんだ」
『…そうだね。パンケーキにしようか』
「うむ」
力強く頷くミホークに名前は苦笑いを浮かべながら、なるべく作業工程の少ないものをチョイスする。パンケーキなら作ってすぐ食べられるし丁度いいだろう
『じゃあとりあえず卵割ってくれる?』
「うむ」
『大丈夫?割るんだよ?こうパカッて。潰すんじゃなくて』
「問題ない」
『って言ったそばからなぜ包丁を持つ!?』
「黄身まで斬る愚かなマネはせん」
言うが早いか卵を包丁で真っ二つに斬るミホーク。宣言通り、卵の黄身は無傷でボールに落とされた
『ええー!?なにこれ!?ミホークすご…!え、料理得意なの?』
「……」
なにも答えないが、いつもの無表情がどう見てもドヤ顔にしか見えなかった。ちなみにミホークは料理なんて出来ない。今のはただ斬っただけだ。“切る”と“斬る”の違いに名前は気づいていない。ついでに言えば、ジュラキュール・ミホークという男が世界最強の剣士であることを知らない。大きい剣を背負ってるので、剣を使う人なのはさすがに知っている。だけど名前の持つ情報はそれだけである。ドフラミンゴはミホークが“世界最強”なのだと名前が知ってしまうと、ミホークの株が上がりそうなので黙っている。ヤツばかりこれ以上チヤホヤされるのは許さない。そういうわけで、もしかしてコレは期待出来るかな?と気分を上昇させた名前だったが、それはあっさり裏切られる

『!?ねえどうして包丁で掻き混ぜてるの!?』
「いちばん手に馴染むのだ」
『でもさすがに混ざってないって!』
「ほかは使いにくい」
ボールにガツガツ傷を付けるミホークに名前は恐怖を覚えた。ヘタに褒めてしまった弊害で、わりと自分は出来るのだと思わせてしまったかもしれない。とんだ ひとりでできるもんになってしまった。これなら、大人しく言うことを聞く分ドフラミンゴのほうがまだマシだ。どうしよう
『…じゃあ混ぜるのはあたしとドフラでやるから、ミホークは小麦粉をふるってくれる?重要な作業だよ。零さないように気をつけて』
「良いだろう」
「フフフフ!名前チャンもやっとおれじゃなきゃダメだと気づいたか」
『……』
完全におっさん達を掌握している名前に死角は無かった。彼女の中の何かがちょっとだけ失われたかもしれない。それでも、この時間を早く終わらせる為には仕方ないのだ。意地を張っていては名前だけがツラくなる。早くこの場を片付けたい名前の決意は固い。手早くドフラミンゴに泡立て器、ミホークには ふるいを渡して指示を飛ばす
「名前チャンどこ行く気だ」
『どこって…あんたの斜め後ろにある冷蔵庫にだよ』
「一緒にヤるんだろう」
『先始めてて』
「フッフッフ。つれねェじゃねェか」
『ねえ、すぐ斜め後ろに行くだけなんですけど』
「おれも行く」
『ずっと前にもあったよね。調理中にあたしの隣から離れたら死ぬの?なんなの?』
「冷蔵庫になんの用だ。材料は全部出てるだろ」
『あぁ。あんたメープルシロップじゃ甘すぎるでしょ。冷蔵庫にベリー系のジャムあったはずだから、ってちょっと!?動けない…!あんた何やってんの!』
無感情に喋りながら冷蔵庫へ向かおうとした名前に、突然イトイトを仕掛けたドフラミンゴ。イライラしながらドフラミンゴの顔を見たら、これでもかと笑っていてギョッとした
「フフ…フフフフフ…!ンな可愛いこと言われちゃあな…!パンケーキなんざもうどうでもいい。来いよ名前、部屋に戻るぞ」
『はあ!?行くわけな…っばか!こんなところで抱き抱えないで危ない!』

家出に風邪、ミホークの無断乗船。このところ続いていたイベント全てでドフラミンゴは、名前とふたりの時間をほとんど作っていない。これまでずっと抱き抱えて膝の上に乗せて過ごしていたのに、それもあまり出来ていない。あくまでもドフラミンゴの基準だが、まあ我慢していたのだ。それがいま限界を迎えたらしい
「残りはストークに任せりゃいい」
『そんな負担かけられるわけないでしょ!』
「責任感あるとこも魅力だが…今日はもうダメだ」
『ダメじゃない!てか待ってミホーク!あんたどれだけふるってる!?』
「む?」
『む?じゃなく!どうして用意してた分以上の小麦粉ふるってるの!?』
「量がおかしい。明らかに足りない」
『焼いたら膨らむの!』
「…?」
『理解して!ちゃんとおかわり出来るくらいの量はあるんだってば!』
「鷹の目ェ…てめェが居ると名前チャンがてめェばかり構いやがる…。とっとと船を降りろ。じゃねェと今すぐぶっ潰すぞ」
「断る。パンケーキがまだだ」
「フッフッフッ!死ね…!」
「貴様におれは殺れん」
『こんなところでケンカすんな!いいから!わかったから!パンケーキ作ったら今日はあたしもう夜まで部屋から出ないから!ミホークはデッキで寛いでること!ハイ決定!』
「……」
「……」
『ミホークには夜にマシュマロ入りのココア作ってあげる。あとあんたには…あんたは…あー…膝の上に居るよ…今日…ずっと…』
「焼いたマシュマロも別で付けてくれ」
「本ばかり読むのは許さねェ」
『……わかったって』

そう言えばこの船で生活するってこんな感じだったなぁと、死んだ目になる名前は、やっぱりローの船に乗せてもらえば良かったと心の底から思った。心が折れる音を聞いたと、クルー達はのちに語る





















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(ミホーク…!生クリーム多すぎシロップかけ過ぎ!糖尿病になるよ!)(ドフラミンゴは逆に少ないようだ)(かけんな!殺すぞ!)































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ミホークに勝てる人はこの世界に居ないかもしれない。

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