ドフラミンゴトリップ

□ここから夢主のターン!
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※クルーが若呼びを始めました



あれから本当に宴会が始まりそうだったのであたしは遠慮させてもらった。すっごくしつこく引き留められたけど明らかに歓迎されてない男が連れにいるのでね。ミホークは宴会に参加するそうなので、此処でお別れした。今まで知り合った人達の中でもダントツで暇そうなので会いたくなったら勝手に会いに来るだろう。ところで、“ドンキホーテファミリー”とか言う聞き慣れない言葉を知ってしまったあたしはコレについて名称の持ち主でもある男に訪ねてみた。それによるとこの海賊団はファミリーと呼ぶことのほうが多くて、世間的にもファミリーとして浸透していたりするそうだ。…マフィアかよ。しかも今この船に乗っているクルー以外にもファミリーは存在し、幹部とその直属の部下たち主力勢は別の場所に居るのだとか。じゃあこの船のクルー達の立場とは…?となるのだが、そこはまあギャグだし連載開始時期が早かったし特別枠ということで済ませなければならない。彼らもファミリーなのだ。いやそんなメタっぽい話はどうでもよくて、問題はあたしもファミリーの一員に組み込まれているという事実だ。ドフラミンゴさんの連れ合いなんだから当然ファミリーですよ、とはクルーの発言である。いつの間にかファミリーだった。ショックだ。あと、マイルドながら連れ合いと言う表現を使われたのもショックだ。否定したところで今さら感があるのは自分が一番わかってるけどさ。でも納得いかない。たとえ現在進行形で膝の上に乗せられて抱きかかえられていても、納得したくない気持ちが溢れ出る

「フッフッフッ…。あのクソ鷹野郎、ようやく消えたか」
こいつはさっきからコレばかりだ。ミホークが降りたのがよっぽど嬉しいようでご機嫌がとまらない。ミホークってこの男とは違うタイプで自由人だからね、相容れないのだ。振り回される姿を見られるのは悪くなかったけど、これ以上ミホークが滞在していたら爆発してただろうから丁度良かったかもしれない
『ねえ、ところで次の島まではどれくらい?』
「すぐに着く。赤髪の船とかち合ったのも、そのおかげだ」
『おかげって…』
人の髪で三つ編みを作ろうとしながらの答えにもミホークへの棘が残っている。ミホークはぼっち気味なんだから優しくしてほしい。鳥同士仲良くしろよ
「島で何か必要か?」
『あぁうん、少し冬服を買い足したくて』
この間の冬島で風邪をひいたせいで、冬服を買うヒマがなかった。ここからすぐ島があるってことは多分秋島になるだろうから、少しくらい冬服が売ってる可能性がある。ほしい。この男やクルー達は夏服の上にコートを羽織るだけで冬支度完了でも、あたしはそうはいかない。だって寒い
「名前チャンは寒がりだからな」
『あんた達の代謝が良すぎなだけ』
あたしの手足を触って、ヒエヒエの実でも食ったんですか!?とわけわからない発言を本気でしてくる人達と一緒にしないでくれ。元の世界では感じたことなかったのに、この世界ではやけに体力が低下してるように感じる。いや、こんなビックリ人間たちと比べるのがそもそも間違いなんだけど。基準がおかしくなってる。しかも風邪をひいた以来病弱認定まであと一歩みたいな気遣いが続いている。寝る前に出される生姜湯とかぶっちゃけ苦手なのでやめてほしいけど、心配ゆえの行動だとわかるから断れなくてつらい
「ならお買い物デートだな、フフフフ」
『……』
下手くそな三つ編み作りを繰り返しながらウキウキしてる様子を見るに、今回は逃げきれないだろう










上陸した島は活気に溢れていた…というか溢れ過ぎていた。バーゲンセールがまるでフェスティバルか何かのごとく大盛り上がりを見せる変わった島だった。島中がセールやプライスダウンのポスターだらけで、はしゃぎまくる人の群れ。タイムセールや叩き売りの声もあちこちで聞こえる。聞けばこの島では春と秋の年2回、島をあげてのバーゲンセールが開催されるらしい。近隣の島どころか遠方からも大量の人が押し寄せ、ゴミでも売れると揶揄されるほどだそうだ。でもこのお祭り騒ぎを見ればそれも頷ける。みんな抱えるほどの紙袋を手にしてるし。ドンキホーテファミリー(笑)はこの島に来たことがあってもバーゲンセールに重なるのは今回が初めてらしく、セールを漁る人の群れに震え上がっていた。そうね、わかるよ。女の逞しさがこれでもかってほど出し尽くされてるもんね。8割は女性で埋め尽くされてる島の中で、残りの2割にカウントされてしまった男性達は見る限り全員目が死んでいる。虚ろな目にふらふらの体で全員漏れなく大量の荷物を抱えて女性の後ろをついて回っている。あ、隅のほうで屍のように倒れている男性もちらほら。反対に女性陣は活き活きして走り回っていた。こんなの目撃したらそりゃあ屈強な海賊も震え上がるわ

「え…、名前さん、行くんですか…?」
蒼い顔したクルーのひとりがおそるおそる訊ねてくるが、あたしの視線はこのフェスティバルに釘付けだ
「そんな…まさか…名前さんも…」
ぎらりと光ったあたしの目をうっかり見てしまったのだろう、半泣きであたしと島とを交互に指さして震えてる。この世界に来てけっこうな月日が経ったけれど、まさかセールショッピングが出来る日がくるとは思わなかった
「フフ…、な、なァ名前チャン…。金ならいくらでもあるんだぜ…?」
『お金の問題じゃない』
そう、これはお金の問題ではない。フェスに参加することに意味があるのだ。元の世界に居たときは人混みを避けたいし、シーズン突入前に先取りで買っておきたかったのでセールショッピングはあまりしなかった。だけどなんだろう、今は懐かしさからか燃え上がるようなヤル気に満ちてる。女の人達が年齢問わずに溢れていて楽しそうなのも要因かもしれない。是非とも加わりたい
『じゃあ行こうか』
「…!?」
パッと隣に立つ男へ向けた顔は隠しきれないよこしまな笑顔だったはず。お前荷物持ちな、と笑顔が告げたはず。激レアな、冷や汗垂らしたドンキホーテファミリー(笑)のボスはあたしに笑顔を向けられて肩をビクつかせ、慌てたようにクルー達を見渡した。誰も目を合わせなかった
「てめェら…!」
仲間の華麗な裏切りに青筋を立てているが、今回ばかりは皆この男の怒りよりもおそろしいものがあると知ったので沈黙を貫いている。だがしかし、そこは何様俺様王様男だ
「ラーク、お前が行け」
「若ァァァ!?」
「骨は拾えねェかもしれんが名前チャンを守って散れよ」
「しっかりやれよ」
「若様直々に名前さんを守れってんだ、名誉ある死だぜ」
「生きて戻ったら…飲みたがってた高い酒開けような」
「滋養強壮に効く薬だ、飲んでけ」
「うわァァァん!!」
ご指名を受けたラークの肩に、それぞれが手を置いて別れの言葉を述べていく
『ラーク…』
「名前さん…!おれムリです!」
涙ながらに訴えるラークの必死さは胸にくるものがある。いい子なんだよこの子は。失いたくない。そう、失いたくはない、が、

『スニーカーに履き替えるから待ってて』
ごめんね、これからあたしはハンターになる





















来世はきっと美しい



(フフフフ…あいつはいいヤツだった)(ドフラミンゴさんでも名前さんの願いを聞いてやれないことってあるんだな…)
























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生け贄

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