ドフラミンゴトリップ

□…はじまらなかった
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『はぐれた…』

あまりにも人が多過ぎて…いや正直になろう、想像以上に楽しくて満喫し過ぎた。あっちこっち行き来してるうちにはぐれてしまった。両手いっぱいの荷物を持ちながら立ち尽くす。きょろきょろ見回してみてもラークの姿は無い。そりゃ無いよね、あの子も両手いっぱいに荷物を抱えてたもの。もちろん全部あたしが買った荷物を…。あー…申し訳ないことした。今頃焦ってるよね絶対。だけどこのひしめき合う人の中で再会しようって無謀すぎ。携帯があればなぁ…。バーゲンに参戦したせいか元の世界の感覚が蘇ってしまう。沢山歩いて疲れたし、車が恋しい。…まあそうも言ってられないんだけど
『探さなきゃなあ』
だいたいの船の停泊場所はわかるけど、まさか一人で帰るわけにもいかないし。探してダメそうなら一人で帰るしかないけど、そうなるとラークが責められて可哀想なことになる。あたしのせいで責められるのだけは阻止したい。あの子すぐ泣くから見ててツラいし。まずは来た道を引き返すべく歩き出そうとしたあたしの背後で、おそろしい大声が響いた
「今からタイムセールをはじめまーす!付いてるセール価格からさらに半額!30分限定ですよー!」

道行く女の人達の目が一斉にこっち…と言うかあたしの背後を見た。やばい。彼女らの目と、あたしの身がやばい。避けなきゃ…!慌ててそう思ったけど、彼女らの動きのほうが圧倒的に早かった。やばいやばい逃げ遅れた。いっそこのままあたしもタイムセールを見に行こうかなんて思いも過ぎったけど、場違いな低い声が思考を遮った
「うわ!?な、なんだよい!?」
『えっ!?』
どっから現れたのこの人!?押し寄せる女の人達の大群に紛れて一人、浮きまくってる男の人まで迫ってきた。待ってあなた、流れに逆らおうとしないで、危な過ぎるから!
『あ、ちょ…っ、…うそっ!?』
「ッてェ…!」
「ただいまタイムセール開催中で〜す!」
流れに逆らおうとして失敗した男の人がバランスを崩しあたしに倒れ掛かって、支えられるわけもないあたしも一緒に勢いよく転んだ。店員さんの一生懸命な声出しとそこへ群がる目の色変えた大群のキャーキャー言う声が近いのに遠い…。転がるあたしと男の人を気にかけてくれる人なんていないよね、知ってた

『…っ、つ〜っ…!』
「イテテ…ひでェめにあった……ん?あ!?オイ!?大丈夫か!?」
あたしを下敷きにしてることに気づいた男の人が驚いて飛び起きたみたいだけど、それどころじゃない。両手いっぱいに握った荷物のせいで受け身を一切取れなかったのでされるがまま転んでしまった
『っ痛い…』
全身痛いけど特に足が痛い。左足に激痛
「あんた、立てるか!?」
『……う、だ、大丈夫です…』
全然大丈夫じゃないです。まさか言えるわけないです。とりあえず大丈夫アピールしたらさっさと立ち去ってくれるだろうと思ったのに、そうはいかなかった
「擦り傷だらけじゃねェかよい…!おれのせいだろ!?」
『…いえ、あの…、大丈夫ですから…』
「そうはいかねェ、あァひとまずアッチに行くよい」
『いえ、本当に大丈夫です…』
「……あんたまさか、立てねェのか?」
『……』
そうですよい。上半身だけ辛うじて起こして大丈夫だと言ってたらあっさりバレた。責任感じてるのだろうけど、放っておいてほしい。痛みで喋るのがしんどい。それなのにあろうことかこの人は険しい顔で問い詰めて来てなんと
「ちょっと大人しくしてろよい」
『えっ!?』
抱き上げてきた。ウソでしょ
『あ、あの!』
「すげェ荷物だな」
『あ、すいません…じゃなくて、大丈夫ですから!』
「そんなわけあるか」
転んでも抱き上げられても離さない大量の荷物ががっさがさ男の人にぶつかってて居た堪れない。気だるげな目もとをしてるくせにハキハキと男らしいこの人は、荷物付きのあたしを抱き上げてもものともせず歩き出す。鍛えてるのか、ずいぶん逞しい体だ。それはいいんだけど、どうしてこの世界の人はこう露出が多いんだろう。シャツのボタン全開なんですけど。着てるだけマシだと思うべき?




「うわ…。ものすげェ腫れだな」
運良く見つけたベンチに座らされ傷の確認をしてたのだけど、一番痛い左足を裸足にして見たらひどいことになってた。足首から赤黒い内出血が広がってパンパンに腫れてる。いやこれは痛いわ
「本当に悪かった」
『いえ、あの状況じゃ仕方ないですよ』
「…アレは…なんだったんだよい」
転んだ時のことを思い出してまた顔が険しくなった
『タイムセールでしたから…』
「女ってのは…ハァ…」
あたしの荷物を見て溜め息吐かないでほしい。この島でだけですから
「あァそうだ、おれはマルコだ」
『あ、はい、あたしは名前と言います』
「おう。じゃあ手当てさせてもらうよい。ちょっと触れるぜ」
『はい…、…?』
手を取られ、擦りむいていた箇所をそっと触られた。すると触れた箇所がほんのり温かくなる
『…ん?なんか…赤みが引いたような…?』
「…?治りきらねェな。そんなひでェ傷じゃないと思うんだが…」
正反対の疑問を浮かべるが、マルコさんはそのまま別の箇所にも同じように触れた
『やっぱり赤みが引いた…』
「やっぱり治りきらねェ…」
互いに首を傾げる。明らかに治ってるのにこの人は何を言ってるんだろうか
「いつもならこのくらいの擦り傷、跡形も無く治せるんだがな。おかしいな…」
跡形も無くって凄いな。そんなこと有り得る?
『…よくわかりませんが、良くなったのは確かです。ありがとうございます』
「…いや…いいんだこれくらい。さて、足もやるよい。この様子じゃ効果は薄そうだが」
今までより長めに足に触れ、そっと手を離したマルコさんはパッとあたしを見た
「どうだ?」
『あー…痛みが和らいだような…?』
「…つまりろくに効いてねェんだな?」
『…ですね』
「…そうか…」
不満がありありと顔に出てる。でも擦り傷はいいとしても、足首のここまで酷い怪我を触っただけでどうこう出来るほうがおかしいと思う。あ、もしかしてこの人も悪魔の実の能力者で医者なの?それなら納得かも

「名前、お前さんこの島の人間か?」
『え?いえ、違います』
「そうか。ひとりでこの島に?」
『ツレが居ます。一緒に買い物してたんですけどはぐれちゃって』
「…この人混みじゃ見つからねェだろ」
『そう思って困ってたとこだったんです…』
そうだった、ラークと合流しないと。だけどこれ…もう無理じゃない?そもそも会える気してなかったのに、まともに歩き回れなくなったらゲームオーバーでしょ
「宿とってるのかよい」
『どうかな…あたしが買い物に出るときはまだだったんですけど』
「なら船の場所はわかるか?って言っても観光船が停泊する港は一箇所しかねェか」
『……』
あ、これまずいやつだ。観光船…。マルコさん、あたしのこと観光客だと思ってる。そうだよね、買い物しまくってる女で島民じゃないなら観光客だと思うって。…困った。どうしよう。正直に言っても大丈夫かな…。でもな…ぶっちゃけマルコさんの職業が疑わしいんだよな。見た目と雰囲気とチラ見えしてるタトゥーがもう完全に裏の人。親切な人だけど…
「よし、船まで連れてってやるよい」
『え』
「歩けねェだろ?おれのせいなんだし、ツレに謝罪もしてェ」
『いい、いいですよそんなの!』
「よくねェ。おれに責任があるからな。それに女に怪我追わせて傷もろくに治せず送りもしねェでのこのこ船に帰ったら、オヤジにどやされるよい」
『は、はあ…』
これ逃げられないわ。今すぐ歩くのはたしかに厳しいし、腹を括ってどんな船に乗ってるか言うしかないか…。ラークは…ひとまず置いておく。あぁ、そうだとしても怪我して男の人に連れ添ってもらって船に戻るってそれ、あの男がどれくらいウザくなる?と言うかいきなりマルコさんに攻撃したりしないでしょうね。こわい。ありえそうでこわい。それにマルコさんの素性もわかってないし。裏の人…詳しく言えば海賊っぽいんだよこの人。あいつの名前を出したらあたしまで変な目で見られないかな。不安
「さ、背中乗れ」
『……あの、マルコさんあたし、』
「ア?…待てよい、アイツ、」
それでも話さねばと口を開きマルコさんの名前を呼んだとき、見知った人が猛ダッシュしてこっちへ向かってくるのが見えた。そしてマルコさんも、あたしとは反対を向いて何かに気がついたようだった

「名前さんッッ!!やっと見つけた!!無事ですか!?」
「よォマルコ!この島やべェな!さっさと戻ろうぜ!」
『ラーク…』
「おうエース」

えっ?

満身創痍でベンチに座るあたし、あたしの足を取り跪くマルコさん、両手いっぱいに荷物を抱えて半泣きのラーク、エースと呼ばれた笑顔の露出魔。全員がぽかんとしたまま固まった。あーうん、もしかしてこれって最悪の奇跡?































なんてったってヒロイン



(こいつはドンキホーテファミリーの!?)(白ひげの不死鳥!?名前さんに何を…!?)(アッ!お前!)(え?…えー…なんかどこかで見たような…)



























ーーーーー
再会!

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