ドフラミンゴトリップ

□怪我してぐったり
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「名前チャン、もうダメだ。これから先 絶対におれ無しで外には出さねェ」
『……』
医療室でほとんど羽交い締めと呼べる抱きしめ方をされながら治療を受ける名前は、珍しく返す言葉が出て来ず頭を悩ませていた

風邪引きイベントを終えたと思ったら直ぐまたこんな事になってしまった。しかもタイミング悪いことにどちらもドフラミンゴの居ない場所でだ。怪我をした時点でこの状況は予想出来てたが、言いくるめられるような台詞が思いつかず今に至る
「おれも若に賛成ッスね。風邪の次は足にヒビ入れて、打ち身もしてるしボロボロじゃないッスか」
船医のガルがテキパキと処置しながらドフラミンゴに加勢する。そんな、あなたまで…と目で訴える名前を見ながらさらに続けた
「だいたい、虚弱なのなんでおれに言わないんです?この船の医者はおれで名前さんはこの船の一員なのに、なんでローから知らされなきゃならねェんスか」
『……』
どうやらローに名前は虚弱体質だと伝えられたことが気に入らないらしくむっすりしている。うわ根に持ってる…。困る名前だがそもそも虚弱体質の事実は無いから言うことなんてなにもない。それをそんな、重要事項にされても困る。これではもはや詐欺師だ。しかしそれを言っても高熱からの骨折という虚弱な実績を作ってしまった為に、否定したところで逆に嘘吐きだと思われるだけだった
「おれがいいって言うまで歩かないでくださいね。移動はすべて若に任せて」
『え、いや、松葉杖…』
「ウチには無いッス」
『でもアレ、』
「無いッス」
『……』
無いわけないだろ。棚の上に雑に置かれてるアレはなんだ。名前は棚の上を恨めしそうに見たがガルには効果無かった。当然ドフラミンゴにも。この場に味方は存在しない

『…はあ〜……』
治療が終わって医療室を出たらあっちこっちから心配された。気持ちは嬉しいが、若干手のかかる子を相手にするような気遣われ方だったのが納得いかない名前だが今は何も言えない。自室に戻され思わず深い溜め息が漏れた
「痛ェか」
『…痛み止め飲んだから今はわりと平気』
名前の左足を庇うように位置を調整して膝に乗せるドフラミンゴに、どうしたものかと考える。おれ無しで外に出さない発言は本気だ。名前だっていつも一人で好き勝手出歩きたいわけじゃない、見知らぬ場所へ行くのだから身を守るすべを持たない彼女は立場を弁えている。けれど、たまには一人になりたいのだ。船上生活をしているとプライバシーが無い。特に名前なんておはようからおやすみを経てもドフラミンゴが常に視界に映るのだ。桃色と金色が自分の一部になりそうで恐怖を覚える。息抜きに、たまに一人で外を歩くくらいなぜまともにこなせないのか。ヒロインゆえの理不尽さに振り回されているが、ヒロインゆえに回避するのは不可能だと彼女は知らない
『そう言えばマルコさんとエースどうしたかわかる?』
悩むことを放棄した名前は違う話を振る
「ジェイがテキトーに相手してる」
『丁寧に相手してほしいんだけど…』
「……」
この件に関しては言いたいことが山ほどあるドフラミンゴだが、ぐったりしている名前を前に口を閉じたままだ。と言うのも、この男は実はいま機嫌が良い

女の買い物が長いと理解してるつもりだがそれにしては遅すぎたし、帰るまでのんびり待つほど気は長くない。こと名前に関しては逐一様子を把握しておきたいストーカー予備軍男だ。痺れを切らして女性の群れなす島を歩くことにしたドフラミンゴが、女性の波に何度か呑まれながらもなんとか見つけた名前の姿は予想外もいいところだった。男(しかも白ひげ1番隊隊長)に背負われ満身創痍なのだ。少し目を離すとだいたい様子がおかしくなって戻って来るのはなぜなのか。この男もある意味で名前のヒロイン補正に振り回されていた。しかし今回ばかりは悪い結果じゃない。マルコから引き渡された名前を抱き上げた途端、名前はその身体をドフラミンゴに預けた。船の中での一日の大半、名前はドフラミンゴの膝の上か抱えられるかして過ごしているが、その背を望んで預けてくるなどほとんど無い。仕方なくか、何かに集中していて気にしていないかの二択だ。それを、マルコに背負われてる時には見せなかった気の緩みを見せたのだからあっという間に機嫌が良くなるというものだ。まあ、力を抜いて自分にもたれ掛かる名前に少し動揺したのは言うまでもない。それくらいレアだ。今も名前はドフラミンゴに寄り掛かり、バツ悪そうにしゅんとしてる。こんな機会はまず滅多に訪れないので、名前を気遣う気持ちも無くはないがそれ以上に美味しい状況になっていた。しかも船医であるガルのあの様子からするとしばらくは松葉杖を持たせる気が無さそうなので、必然的にドフラミンゴが名前の移動手段となる。愉しくて漏れ出そうな笑いをギリギリで隠した

『それにしても疲れた…』
「そりゃそうだろ。フフ、今日は早めに休んどけ」
『…そうする』
「よし」
『ん…?え?なに?』
名前の返事を聞いてスッと立ち上がるドフラミンゴ。もちろん名前を抱いたままだ。会話との繋がりがわからない名前は訝しげにドフラミンゴを見るが、ドフラミンゴはキッパリと言い切った
「風呂に入れてやる」
『死にたいか?』
名前から表情が消える
『今はあんたの冗談に付き合う気力無いから勘弁して…』
「冗談なんか言ってねェ」
『なお悪いから』
「打ち身もしてるしひとりじゃ無理だろ」
『問題ないです。手はしっかり動きます。簡単にシャワー浴びるくらい出来ます』
「洗ってやる」
『結構です』
「フフフ、丁寧に扱うから心配するな」
『そう言う話をしてるんじゃない』
隠しきれない浮かれ具合が漏れ出てるドフラミンゴに名前の頭痛は増す一方だ。そうだこいつ頭おかしいんだったと、わかっていた事実を再認識した





「名前チャン、いまどこ洗ってる」
『……』
「名前チャン?足が痛むのか?」
『違うから入ってこようとすんな』
「返事が無ェから心配したぞ…で、いまどこ洗ってる」
『………頭』
「腕上がるか」
『大丈夫です』

「名前チャン、いまどこ洗ってる」
『……』
「名前チャ、」
『体洗ってます』
「足は大丈夫か?動かせねェのは不便だろう。打ち身も辛いならおれが手伝ってや、」
『だから!入って来ようとするなってば!』
結局、死ぬほどしつこい押し問答の末に、シャワールームの前でドフラミンゴが待機することで折り合いがついた。名前としてはまったく折り合ってないがどんなに振り切ろうとしても振り切れず、ココが限界だったのだ。そして黙って待てば済むものをこの男、やたら声を掛けてくる
「そろそろ終わるか?」
『……まだもう少し』
「名前チャンはいつも風呂が長ェな、なにしてんだ」
『ねえだからさ…』
そしてとにかく侵入して来ようとする。あまりのウザさに辟易してる名前はもういっそ扉を開けたままシャワーを浴びてやろうかと考える始末だ。出会ってから今まで散々ベタベタまとわりつかれているのだから、なんかもう裸を見られるくらいどうでもいいのでは?と真剣になってしまう辺り、かなりの疲労を感じる
『でもそんなことしたらあたしと言う人間の何かが終わる』
「ン?なにか言ったか?」
『……もうあがるから出てって』
「拭いてや、」
『出てけ』

そうこうしてる間になんとか侵入を防ぎきりシャワーを終えてみたものの、予想はしていたがドフラミンゴ好みの下着が用意されてる現状に久しぶりに血管が切れそうになった。本当に、なんだってこうも鬱陶しい展開になるのか。ひたすら愉しそうなドフラミンゴを見て名前は当分ひとりで出歩くのを止めようと決めたのだった





























ぼくだけのキミでないと許せないよ



(うわ!?若その顔!?)(フッフッフッ!名前チャンの髪を拭いてたらムラムラした)(……返り討ちにあったんスね)




























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夢主はおそらくドフラミンゴの裸なんて見慣れてる。フルじゃなくともパンイチでうろうろしてそう。

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