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□群れることを許さぬ決別の地。 孤独なる戦いを強いられる永別の地。
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※武器について捏造有り




「死ね…!!」
『!!』
それはナマエが砦を守る兵士の長を斬り伏せた直後のことだ。いく筋もの青白い雷光がナマエの身体を貫こうと空から降り注ぐ。それをすんでのところで回避したナマエの前に、ギャンレルが姿を現した
「チッ…避けてんじゃねぇ…」
『サンダーソード…』
ギャンレルが手にしている大きく波打つ独特な形状の剣に、ナマエを襲った青白い光がまとわりついている。魔導書以外に唯一魔力を宿す武器、サンダーソードだ。剣でありながら稲妻を生み出し遠距離の敵にも攻撃出来るその武器は万能であるが誰しもが扱える代物ではない。だからこそ極めれば凄まじい強さを誇るのだ。厄介な武器だと声に出さず警戒するナマエに、ギャンレルが嗤う
「よお、テメェがちょろちょろ動き回ってくれたせいで予定に随分と狂いが出た」
『そう』
「オレはな、これで気は長いほうなんだぜ?だから一度は見逃してやった…だがな、もう終いだ!テメェは此処でオレが殺す!!」
ギャンレルがサンダーソードを天へ掲げると再び稲妻がナマエ目掛けて降ってくる。躱したが、舞ったマントの端がちりちりと焦げ付いた
「チッ、速ぇな」
稲妻を避けながらギャンレルに詰め寄るナマエの剣が振り下ろされ、刃を受け止める衝撃が互いの肌を刺す。間近で見る女の瞳はやはりペレジアの大地に似ていたが、光り輝く意志が見て取れてソレはこの国の何にも当てはまらないように感じた

「テメェ…イーリスの人間か?」
初めて女を見た時からの疑問をぶつける
『…違う』
視線を重ねたままナマエが剣を振るう
「だと思ったぜ。こぉんな優秀な兵士が居りゃあとっく昔にテメェから殺してた!」
躱して、今度はギャンレルがサンダーソードを剣そのものとして使う。空気を切り裂く音がする。ナマエは軽やかに後ろに飛んで避けた
「名は」
『ナマエ』
剣を構え直しナマエが一気にギャンレルに詰め寄る。刃を何度か弾き合いながらも尚、会話は続く
「傭兵か!?」
『違う!』
「そうかよ!ハハッ!どうでもいいことだったな!テメェは此処で死ぬんだからなぁ!」
『あいにく未だしばらく死ぬ予定はない!』
「テメェの予定も狂わせてやるよ!」






「ナマエ!!」
クロムが叫んだ。ギャンレルが本陣に居ないと気づいて直ぐに後方の砦へ向かったと報せが入り、クロム達は慌てて引き返した。しかし次から次へと襲い掛かるペレジア兵に進行が妨げられ、ようやく辿り着いた時にはナマエとギャンレルの激しい戦闘が繰り広げられていた。稲妻が落ち、刃の衝撃音が繰り返し聞こえるが二人の気迫と砂埃による視界の悪さで誰もが遠巻きに見ているだけだ
「ナマエ…!」
踏み込めない領域での争いをクロムは苦い顔で見守るしかなった

そうして終わりは早急に訪れる

「ガッ!?…ッ、ハッ…!」
ナマエの一閃がギャンレルの肌を裂いた。血を流し地面に膝を着けるギャンレルをナマエが見下ろす。ナマエの身体にも幾つかの傷がついているが、その二足でしっかりと立っている
『降参しろ』
「…ッ、だれ、が…!」
ギッと、噛み付きそうな凶暴な表情でナマエを睨み上げるギャンレル。ナマエが続ける
『これ以上は無意味だ』
「うるせえ!!ッ〜…!!」
『吠えると傷に響く』
「ぐぅ…!…、クソッ…!こんなところで、立ち止まってるわけに、いかねぇんだよ…!!」
『……』
ギャンレルをじっと見詰めるナマエに感情の起伏は無い。ギャンレルは、自身の瞳の中にある渦巻く様々な感情を逃さず見透かされそうでそれが気に食わない。しかし流れ出ていく血液の生温さが己の敗北を告げていた。力が抜けていく
「……こんな、ところで……」
『生きたいか』
「……スカしやがって…」
ずる、と緩慢な動きで振るった剣は何も捉えない。幼子のような抵抗を止めないギャンレルとそこから目を逸らすことないナマエに、やはり誰も割り込めずにいる。異様な空気が流れていた

『ひとりでも戦うか』
「な、仲間なんざ…まやかしだ……人間は結局一人…オレは…ひと、り…」
静かに尋ねるナマエに、閉じかけた目を無理矢理 吊り上げて応える。崩れ落ちそうな身体を支えているのは怒りか矜恃か
『ならばその命、私が取っても文句はないな』
ナマエが手にしていた剣が自身の首もとへ宛てがわれるのを目で追った。周囲からどよめきが起きたがギャンレルにはもう分からない。のろのろと瞳が動いてナマエを映して止まる
「……しぬ、のは……てめえだ…」
『……』
往生際の悪いその台詞にナマエが僅かに口角を持ち上げたのは誰も気づかなかった
「…、……」
ゼェゼェと浅い息をしながらも膝を着いたままのギャンレル。ナマエは首もとへ運んでいた剣を外した。そしてようやくギャンレルから目を離し声を上げる

『クロム、此処でお別れね』

「…、……な、にを…」
名前を呼ばれた当人は直ぐに反応出来なかった。そして言われた言葉の意味が、
『私はここまで。それからこの男は私が貰ってく』
「……、……」
まるで朝の挨拶のように、席を外す際の声掛けのように、屋台で食材を選ぶように。先程までの武人としての姿は なりを潜め普段と変わらぬ口調と表情で話すナマエの言葉の意味が理解出来ない
「ッ、ナマエ!!」
声を張り上げたのはルフレだった
『ルフレ…』
「な、なにを言ってるのナマエ…!」
顔色を悪くさせ、ナマエを見る瞳は戸惑いと焦りに揺れている
「ここまでって…、それって……どうして……」
言いたいことは沢山あるのに頭が回らなくて言葉にならない。続ける言葉を探せないでいるルフレを見てナマエが少し眉を下げて困ったように笑った
「ッ!!」
ルフレの前でよく見せるナマエの表情だった
『ごめんねルフレ、私はここまで。私を上手に使ってくれてありがとう。貴方は良い軍師ね』
「…!!」
嫌味のないさっぱりとした声色と微笑みをルフレはいつも好ましく思っていた。そんなの狡い。喉に詰まった。ルフレはその場を動けず押し黙る
『馬を』
「…え、…あ、はっ、ただいま…!」
近くにいたペレジア兵にひと声。唖然としていた兵士はハッと肩を揺らし、一目散に駆け出して素早く馬を二頭連れてきた
『…立てる?』
「……、……ッ…う…」
意識が朦朧としているギャンレルはナマエに支えられ、されるがままにゆっくり立ち上がる。一頭の馬にナマエと、ナマエに抱えられたギャンレルが。ナマエはもう一頭の手網も掴み馬を歩かせる。さざ波のように人の群れが避けていく。クロム達の側まで来て馬の足を止めた
『…私を受け入れてくれてありがとう』
ナマエが嬉しそうに笑う。誰かが何かを言おうとして止めた
『あなた達の進む先に幸多からんことを』
勢いよく走り出した馬の行く末は誰にもわからない

ほどなく停戦の報せが届いた。此処にイーリス聖王国・フェリア連合王国とペレジア王国との戦争の幕が引かれたのだった


























戦争ソナタ



(ときの声が終焉を教えてくれたけれど、)































ーーーーー
もののけひめ かな?

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