ドフラミンゴトリップ番外編

□膝枕をしよう(ドフラミンゴ編)
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今、名前チャンの機嫌が良いのはおれがそう仕向けたからに他ならない

手に入れた映像電伝虫には芝居が記録されていて、その内容は名前チャンがいつだったか読んでいた本が原作になっているらしかった。名前チャンがその本の内容を気に入っていたかは覚えてねェが、名前チャンが映像電伝虫の存在を今のいままで知らずに居ることはわかってる

だから内容はどうであれ絶対に気を引くであろうことも



「名前チャン、気に入ったか?」

『……』

「…フッフッフッ」



ソファに並んで座りおれは名前チャンを見る。用意したスクリーンを夢中で見つめる名前チャンは無表情ながらも目が輝いている。どうやら内容も当たりだったらしい。本を読む時も気に入ったものを読んでいるときは誰が声をかけてもまったく耳に届かなくなって、そうなれば名前チャンが満足いくまで本を読み込むか無理に本を奪う以外振り向かせる手段は無ェ

名前チャンが満足するまで付き合えばこっちを向かせるまでにダリィほど時間がかかるし、無理に振り向かせれば暫く機嫌が悪ィ。それでも普段はこのどちらかを選んでいるが、今日は違ェ



「名前チャン、名前」

『……』

「ンな面白ェか」

『……』

「おれァ暇だ」

『……』

「膝に乗るか?」

『……』

「抱いていいか?」

『……』

「フフフフ……やっぱ寝ることにする」



スクリーンの中では芝居が佳境を迎えているらしい。何を言っても無反応な名前チャンに思わず笑みが深くなった。ソファに手をつけば、きしりと鳴る。そしてゆっくりと身体を名前チャンへと傾け静かにその膝に頭を乗せた。けど名前チャンはぴくりと一度だけ身じろいだだけでやはり何も言わない。おれは居心地の好い位置を探しあててからスッと力を抜いた

少し身体を落ち着けてから名前チャンを見上げる。不規則に繰り返す瞬き、時折微かに変わる表情。相も変わらずおれを見ようとしないが、その目に宿った煌めきはおれが造ったのだと思えば悪くねェ。なにより、こうしておれの行動を黙認してくれるのがイイ

ある程度気の済むまで眺めてから、ごろりと名前チャンの身体のほうへ寝返る。今日は香水をつけていなかったはず。服から香る洗剤とほのかな潮の匂いはおれと同じなのに、それらに混じる名前チャン自身の匂いのせいでやたらと甘く感じる。おれの膝に抱えたときにも同じ匂いがするしそのまま首筋に顔を埋めた時のほうがより強く香るが(ソッコー殴られる)、控えめに香るこれも良いもんだ

横向きに寝るとサングラスが邪魔くせェと思いながら外すのがひどく面倒でそのまま目を閉じた















『……で、なんだっていうのあんたは』



芝居が終わりエンディングの曲が止んでからようやく名前チャンはおれに声を掛けた。機嫌が良いのか呆れた声音に憤怒は混じっていない。でも芝居が終わっちまっていつまでもこのままで居たら最終的には怒り出すんだろうなァと、返事を返さずその様を想像する



『寝たフリしないで』

「…フフフッ…バレてたか」

『バレバレ。もう終わったから起きて、寝るならベッド行ってよ』

「一緒に行こうぜ」

『やだ。だいたいあたし眠くないし』

「ならおれも此処に居る」

『どっちでもいいけど頭退けてくれない』

「フッフッ、いやだ」

『……』



わざわざ顔を見なくてもムッとして眉間に皺を寄せおれを睨み付けてるのがわかる。ここまでか。おれは煽るように名前チャンの腹に顔を押し付けた。きっとこのあと名前チャンはキレておれを殴り飛ばし部屋を出てくはずだ。まァ今日のところはこれで充分満足したからいいだろう。そう、おれが密かに口角を吊り上げると同時に短い溜め息がひとつ頭上で吐かれた



『……まあいっか…』

「……………アァ?」

『あ、起きんの?』



欠片の想像もしていなかったセリフにらしくなく理解するのに時間が掛かり、理解したと同時に顔を上げ名前チャンを凝視した



「……正気か?」

『…それ言ってて悲しくならない?』

「……」

『なんでもいいけど起きるならさっさと起きてくんない』

「……フフッ…フッフッフッ…!」

『は?なにいきなり。気持ち悪いんだけど』



当の本人は普段となんら変わらぬ表情とトーンでいる。なのに起きろと言いつつ頭を上げてるおれを押し退け立ち上がる素振りを一切見せない。なァ、いつもの名前チャンだったら問答無用でおれから離れるじゃねェか。なんだってわざわざおれの返事を待ってんだ。思わず笑っちまっても訝しげにするが立ち上がる気は無いらしい



「起きねェこのまま寝る」

『…あ、そう』

「…フッフッフ……なァ名前チャン…」

『…なに』

「そんなに気に入ったか」

『……』

「フフフフッ…!」



名前チャンの太ももに頭を預け直して堪えきれない笑い声を上げる。またムッとした雰囲気を感じたがもうダメだ、止まらねェよ。しょうがねェだろ、だってこれは名前チャンが悪ィ

なんだってオメェはこんなにも、



『…すごい楽しかった…………ありがとう…』

「フフフッ!可愛い可愛い名前チャンの為ならわけ無ェな…!」

『よく言う』

「フッフッフッ!…おれァ寝るぜ…」

『勝手にどうぞ』

「良い匂いすんなァ。甘いが、キライじゃねェ」

『黙って寝ろ変態が』

「オヤスミ、名前」



次は観たいモン教えろよと付け足せば、返事の代わりにそっとサングラスが外された。腹に顔を押し付けても引き剥がされることはない。本気で寝ちまうなんざ勿体ねェのに少しずつ意識が遠退いていく

きっとおれを見ているに違いない名前がいったいどんな表情をしているかはわからなかった




















静けさはほほえみつつ



(だけど耳を掠めたオヤスミは)(ただただ心地好かった)















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膝枕をしてもらう為だけに映像電伝虫を調達するミンゴ。こういうことにばかり全力であればいい

ちなみに当サイトの桃鳥は甘いものがあんまり好きではないらしい



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