ハイスコア×ワンピース
□天然ファンシー嵐士
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「あれっ、名前!?」
『えっ?あっ、……………だれだ…!!』
パッと見は爽やかファンシー王子だったはずのクラスメイトがこってこてのパンクロッカー野郎にフォルムチェンジしていたらどう接すればいいのでしょうか
「誰だってまさか忘れたとか言わないよね!?オレだよ、嵐士嵐士!」
『いや……うん……うん、覚えてる、けどさ…』
上陸した島で友達によく似た人に会いました……と言えたらどれだけ良いだろう。大変残念なことに目の前に居る人物はただのそっくりさんとかじゃない
タイトな黒の革パンにエンジニアブーツ、黒のクラッシュTシャツ(ZURUMUKEって書いてる…)ゴツいスタッズや有刺鉄線、スカルをモチーフにしたアクセを至るところにつけて髪の毛も若干跳ねさせてセットしてるコイツは、爽やかベージュチノパンにデッキシューズ、サーモンピンクのTシャツ(GEROGUTYAって書いてたな…あれ?今と変わらない?)を着ていた人間と同一人物なのだ。嘘だろ。すごい反骨精神だ。何があったんだ
認めたくないけどコイツは嵐士だ。嵐士そのものだ。嘘だろ何があったんだ。………いや、わかってる…わかってんだよ、かおりの為にも現実を見ろあたし…!
「なんだ安心した!紛らわしい返事するからもう!ていうか会えてよかった、オレ結構みんなのこと探してたんだよ?」
『はあっ!?ほか誰に会ったの!?』
「んーん、名前が初めて」
『あ…そう』
やっぱ海広いしねーと眉を下げ呟く嵐士はあたしの知る嵐士だけど嵐士じゃない。なんだか既にわけわかんなくなってきたな。あたしガンバレ。いろいろ考えなきゃいけないことはあるけど、まず一番に触れなければいけないのはコイツのこの格好だ。…一番触れたくないな
確かに嵐士は血とかグロいのとか大好物だよもぐもぐな沙夜に次ぐ猟奇野郎で、こんな草食系な顔してるくせに音楽はロック(特にデス系)が好きといういらないギャップを持ってる男だけども。でもそれをファッションにまで全面に押し出してはいなかった。だって花柄とかウサちゃんとかなんかそういうのだって大好きじゃないか。なのに今じゃファンシー要素ゼロじゃないか
『嵐士…なんか…服の趣味変わったね…』
「えっそう?」
『(無自覚だと…!?)…向こうじゃ革パンとか穿いたことなんて無かったんじゃない?』
「あー、そう言われたらそうだった。こっち来てからずっとこんなカンジだから忘れてたな」
『(ずっと…!?)』
「え、変かな…?」
『……いや…まあ似合ってるよ…』
「ほんとー?なら良かった」
『うん…よかったね…』
負けた…。嵐士の潤んだ目に負けた…。久しぶりだったから耐性が…。無念…。似合ってるのは事実だから余計タチ悪い…センスなんて個人の自由だしさ。……いやでもコレはなぁ…元の世界に戻った時がなぁ…嵐士ママは喜びそうだけど首高での嵐士の体裁もあるしなぁ…困った
ていうか、コレ間違いなく引き取り先の影響受けてんだろ。多分あたしが察してる予感は正しいのだと思う。だからこそ訊きたくないんだけど、流石にこの姿の嵐士をかおりに会わせるのはちょっといただけない。乙女フィルターに掛かってワイルド!とか言う可能性もまぁあるけど、どちらかと言えばファンシーファニーな嵐士に恋してるかおりだし、むしろそのままでいてほしい。グロ要員はさよだけで定員オーバーだし反骨精神掲げるのはめぐみだけでお腹いっぱいだ
…うん、やっぱりこれは引き取り先様に物申して嵐士に爽やか系の服を着させてもらうしかないな。すごい言い難いけど。だって嵐士をこうもロッカーに仕立て上げる人だよ、絶対見た目こわいだろ。…頼みますからこわいのは見た目だけでありますように…
『…で、嵐士はまさか一人で生きてるわけじゃないよね?お世話になってる人居るなら挨拶したいんだけど…』
「あ、うんいいよ…ってかオレにまでオカンみたいにならなくてもいいのに」
『(いけしゃあしゃあとコノヤロウ…!)…まあ、そうだけどでも挨拶くらいは、ね…』
「あぁ確かに。じゃあ名前がお世話になってる人達も後で紹介してね」
『……うん』
「てゆーかオレはすぐソコに居るんだけどね」
『えっ』
「みんなで買い物してたんだけどさ、他のお店も見たいって言ったら先行ってていいって言ってくれて」
『(良い人…?)へー。じゃあこの近くのお店にまだ居るってこと?』
「うん、ほらあそこの雑貨屋さ、」
「あらしィィィィ!!」
『ひっ!?』
「あっキッドさん、丁度良いところに」
ひいいい…!なにごと!?嵐士が指差した方角から嵐士の名前を叫びながらめっちゃおっかない人が走ってきてんですけど!何か手に持ってるけどブンブン振り回しててよくわかんない。え?まさか武器とか言わないよね?あっキッドさん、調度良いところにじゃねーよ!暢気とか言ってるレベルじゃなくないこれ!?しかも発言的に100パーあの方が嵐士の引き取り先様だよね!?こわあああ…!
『あ、嵐士…あの人…』
「あ、うん、キッドさんって言うんだけどオレがお世話になってる船の船長さんだよ」
『……めっちゃキレてない…?』
「うーん、そうだけどわりといっつもあんな感じだから恐がらなくても大丈夫だと思う」
『そ、そう…』
えええー…!キレてるのが基本スタイルとかそれあたし服がどうとかなんて言っちゃったらガンギレして殺されるんじゃないの!?嵐士なんで平気なの!?暢気っていうか肝座り過ぎ!とか言ってる間に超近付いて来てるうー…!あのブンブン振り回してるやつで殴られるんじゃ……って、ん?もしやアレは…
「嵐士ィ!!てめェまたくだらねェもん買おうとしやがったな!!」
「あっそれオレが選んだやつ。えー?ダメでした?」
「ッたりめェだ!何が悲しくてンなもん買わなきゃなんねェんだ!」
「でもオレの部屋に置くし…」
「そのてめェの部屋がそもそも問題なんだよ!ベッドカバー花柄じゃねェか!」
「可愛くないですか?」
「おれの船ン中で可愛さ求めんじゃねェ燃やすぞクソ野郎!」
「でも部屋の中だけなら好きにしていいってキラーさんが…」
「キラアアァアァァ!!」
「あっ待ってキッドさん!じゃあソレは買ってもらえないんですか?」
「ア゙ァ!?バカかてめェ商品勝手に店の外に持ち出せるわけねェだろ!!」
「えっじゃあ…」
「大事にしねェとブッ殺す!!」
「ありがとうございます!」
『………』
イエローチェックのリボンを首に付けたパステルピンクのテディベアを握りしめながら怒鳴る“キッドさん”を見て、服装くらい“キッドさん”の好きにさせようと決意した。どうしよう、“キッドさん”超良い人なんですけど
あなたはあなたのままいつまでも変わらないのね
(それとキッドさん、この子が名前ですよ)(ア゙!?なんだと!?)(ひい!?すいません初めましてすいません!)(てめェの話は聞いてる!てめェおれの船に乗ってコイツをどうにかしろ!)(えっ!?)(この前なんて自作のレース編みのテーブルクロスを食堂に敷きやがった!!)(すいませんすいません)
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常識人キッドとド天然嵐士といろいろ諦めてるキラー
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