ハイスコア×ワンピース
□京介がうざい
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「も〜ほんっっとうに京介って根性無くてイヤ!口を開けば“やった事ない”“えみか”“名前”!すぐメソメソメソメソしちゃって!特にムカつくのが“名前ならもっと優しくしてくれる”“名前ならもっと丁寧に教えてくれる”“名前ならこんなこと言わない”!名前なら名前ならって!あんたコイツのことどーゆー育て方してきたのよ!?」
『ご、ごめんなさい…?』
実はあたしと京介は同中だ。こんなんでも京介はお坊ちゃまくんで出来すぎくんなので当然、私立の中学を出ている。あたしは、お母さんがノリであたしに私立中学を受験させたらうっかり受かってしまっただけの、ぺーぺー一般ピーポーである。ともかく、中1のときクラスが同じになってからの付き合いになるんだけど、まあ京介はその時から女子に対しての態度は今と変わらなく、知り合いたてのときはあたしにもヘラヘラと告白をしてきた
ぶっちゃけ京介は全然タイプじゃなかったから即フッた。そこからしばらくあたし達の関係は単なるクラスメイトで、挨拶程度におさまっていた。けれど、女好きで軽い性格・ヘラヘラした態度・イケメン・秀才・スーパーお坊ちゃんというゲススペックとハイスペックを持ち合わせた京介は一部の男子から嫌がらせ的なものを受けるようになる
当時はやたら泣き虫だった京介は打てば響くってことで日に日に嫌がらせやからかいがエスカレートしていき、校内では浮気症が祟って女子も嫌煙しはじめてあっという間に孤立してた(あとから本人に聞いたら他校の女子にはガンガン手を出していたらしい。さいてー)。あたしは、かわいそうだなーと思いつつも嫌がらせをする大半の男子は、好きな子を取られただのと女絡みらしかったので自業自得な部分が大きいなとも感じて、当たらず障らずの立場にいた
そんな京介(当時は増田くん)と、まさかの日直ペアになったことによりあたし達の関係は一変する
その日も、転ばされた小突かれたパシられたで京介は机に突っ伏してメソメソ泣いていた。普段のあたしなら、またかコイツで終わっていたけどこの日ばかりはそうもいかない。日直ペアなのだ。この泣き虫と。ウチのクラスでは日直は、日誌を分担して書かなくちゃいけなかった。押し付けを防ぐためだ。だからあたしは机に突っ伏して、一度も黒板を消さず号令もかけずメソメソし続けていた増田京介に声をかけ、日誌を書いてもらわなくちゃいけなかった
うん、なにもしないでひたすら泣いてる京介に対してあたしはかなりイラついていた。日直しろや。庶民はメイドと違うぞ。毎日毎日いつまでもいつまでも泣いてないでやり返すとかしろよ。泣きぼくろちぎるぞ…とはさすがに言えるはずなかったので、仕方無しに日誌書けと声をかけるついでに慰めた。ちなみに声をかける時点でもう放課後だった。この頃の京介はほんとに一日中メソメソしていた
『増田くん増田くん、今日あたしと日直だったんだけど後は増田くんが書く分の日誌のスペースだけなんだよね。お願いしてもいいかな?』
「…うっ……ぐすっ…」
『…増田くん増田くん』
「…ぐすっ…」
『……』
「…うぇ…っ…」
『…増田くん、ねえ泣かないで、こっち見て?』
「…うぅ…っ……名前ちゃん…」
『(えっ名前呼び?)…うわ、目ぇ真っ赤』
「うっ…だ、だって…」
『うん、そんな泣かないでもう泣き止みなって』
「だっでぇ…」
『…彼氏持ちの子にちょっかいかけるからこうなっちゃったんでしょ?』
「うぅ…だって…みきちゃんもりかちゃんもあきちゃんも俺のほうがカッコイイってゆってたぁ…」
『おいおい』
「…うぅ〜…ぐずっ…」
『はぁ…。ねえ増田くん、今の状況は周りの男子たちが悪いと思うけどきっかけ作ったのはやっぱり増田くんなんだから、ちゃんと謝ったら?』
「……やだ…」
『ええーまじかよ…。…じゃあ、もう堂々としてるしかなくない?開き直る以外ないじゃん』
「………くすん…。…そう思ってても、だれも仲良くしてくれないとさびしいんだもん…」
『あー…』
「………」
『…なに』
「………」
『…え』
「………」
『おいこらまさかお前』
「…明日から名前ちゃんと居ていい…?」
『……』
これを断れるほど(当時は)強気な性格ではなかったあたしは、首を縦にふるしかなかった。かくしてこの瞬間から京介に懐かれたあたしは、増田の本命だなんだと学校中に噂されたり仲良しグループから引いた目で見られたりとなかなか波紋を呼んだ。京介はこれを機に、徐々にタフネスになっていって気づけば校内の女子にちょっかいかけていて、男子に何を言われても屁の河童に育っていった
充分独り立ちできていたはずなのにあたし達はなんだかんだ一緒に行動する機会が多くて(てゆーか京介が寄ってくる)、あたしが首高受けると知ったら京介まで首高に進学した。それで京介はえみかに出会ったわけだからまぁ良かったんだろうけど、こういった経緯があるせいかこの男はいまだにあたしへの甘えが抜けないのだ
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