ハイスコア×ワンピース

□マドモアゼルゆみこ先生のお手伝い
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プルップルップルップルップ、
『お電話ありがとうございます、桃鳥出版社です。…はい、はい、ええそうです、マドモアゼル先生……あ、そうですねはい、月末を予定しておりますが日にちはまだ決まっていなくて…はいそうですね、はい…ありがとうございます喜びます、はい。…はい、ありがとうございました失礼致します』

『ミッキー、ファンの人が新作楽しみにしてますお体に気を付けて頑張ってくださいだって』
「…ファンの応援が…なによりの栄養剤だ…ありがとう…ありがとう…」
『ミッキー意識ある!?』
いまあたしはオヤ女の原稿を手伝うべくミッキーのところへ来ている。念の為言っておくとここで言う“オヤ女”は“オヤジ女子高生☆”ではなく、“オヤジ海賊女王☆”略して“オヤ女”である。この世界には女子高生と言う概念が無いので世界のニーズに合わせて海賊に改変された。連載当初は“オヤジ海賊女帝☆”だったらしいが、とある女性団体から猛クレームが入り変更したらしい。それはともかくこのオヤ女、元の世界で人気を集めていたがまさかこちらでもウケるとは。あたしとしてはオヤ女以前の作品で、嵐士と沙夜をモデルにした純情路線(?)がすごく好きだったんだけど、担当さんの意向もあってギャグ漫画家(?)に華麗なる転身を果たした今でももちろん応援してる。そんなミッキーは今、月末に発行予定のオヤ女最新刊に載せる特別書き下ろしを瀕死の状態で描いていた
『ミッキー、30分でもいいから寝たほうがいいって』
「…いや…大丈夫…まだイケる……それにしても名前なんか太った…?」
『おいふざけんな。それドフラミンゴさんだから。ミッキーを支えてるのドフラミンゴさんだから。寄り掛かってるのドフラミンゴさんの胸板だから』
「ごへんなひゃい」
「フッフッフッ!」
倒れかけたミッキーを支えてるドフラミンゴさ
んおかまいなしにミッキーのほっぺを抓ってやった

『これベタ塗りしてもいいんだよね?やっちゃうよ?』
「ああ…助かる」
「幹彦、おれは何をすればいい」
「あ、ドフラミンゴさんは…扉の前に立って優木の侵入を防いでください…」
「……わかった」
ドフラミンゴさんめちゃくちゃ嫌そうな顔してる…。詳しくは知らないけどドフラミンゴさんとローさんは古い知り合いらしく、今回ミッキーがあたしにヘルプを求めてきたのと同時にドフラミンゴさんはローさんに要請したらしい。白ひげ海賊団の中にもオヤ女ファンは多く、こぞってついて来ようとしたけど漏れなく却下した。細かい作業に向いてない人がほとんどだから仕方ない。エースを筆頭に何人かからファンレターを預かったのでそれは渡した。ハルタくんがモコのイラストを描いていたのは引いた。へたっぴだった。話が逸れた…そう、そうだそれでローさんが来るイコール沙夜も来る、となるのは避けられない。でもまあ原稿の手伝いなら、沙夜器用だし大丈夫か…と思っていたのは甘かった。甘々だった。どうやらと言うかやっぱりと言うか、沙夜はドフラミンゴさんに興味津々だった。まるで愛の告白をするように「糸で修復出来るなら内臓のいくつか頂いてもいいんですよね」とのたまった沙夜を見るドフラミンゴさんは笑っていなかった。バカなこと言うなと叱るあたしとミッキーに対し、ヤツはとんでもない暴挙に出た。なんと出来上がっていた原稿数枚を人質…ならぬ紙質にとったのだ。膝から崩れ落ち懇願しながらむせび泣くミッキーを見て、ドフラミンゴさんは臓器提供への意志が揺らいでいた。腎臓ならまァ…ふたつあるしな…とかブツブツ言ってたので全力で止めた

最終的にはローさんが沙夜を回収して作業部屋から追い出してくれたので事無きを得たからよかったけど、この騒動で心がガリガリに削られたミッキーは一気に老け込んだように見える。ペンを持つ手が震えていてヤバイ。ドフラミンゴさんやローさんのクルーに少し手伝ってもらったりもしたけど、どちらのクルーもマドモアゼルゆみこのファンなので手伝いと称して原稿を読んだりサインを強請ったりと役に立たなかった。とくにベビー5さんは熱狂的な“ブリーフ益田”ファンで、モコとくっつけてほしいとミッキーに熱烈なプッシュをしていて怖かった。京介とは関わらせないようにしたい。唯一マジメに手伝ってくれたのはベポだったけど、毛がいたるところに散らばってしまい泣く泣く退出を余儀無くされた。かわいそうだった。そう言うわけだから結局はあたししかまともに手伝える人がいないので状況はかなり苦しい。見た目に反してドフラミンゴさんがとても丁寧な作業をしてくれて驚いたのだが、沙夜から自身の身を守る事に専念してほしいので扉の前に立って外の気配に気を配らせると言うミッキーの判断は正しい。原稿はミッキーとあたしで頑張ろう

『……ねえミッキー、この“海岡くん”ってキャラ…』
「(ギクッ!!)」
『G組の山岡くんにすごい似てるよね』
「そ、そうか!?や、まあ山岡ってホラなかなかイケメンだしオレよくイケメン書くから多少雰囲気似てるキャラが居てもおかしくないよな!」
『…あたしが山岡くんがカッコイイよって言い出すまでミッキー山岡くんのこと知らなかったよね…?』
「ひえぇ…!」
原稿からミッキーへと視線を移すと目が合った。目が合うなり怯えるミッキー。G組の山岡くんとは、バスケ部に所属するイケメンくんで、大人びた容姿から繰り出すくしゃくしゃな笑顔のギャップであたしを胸キュンさせた事のある人物だ
『あたしさ、あたしがいいなって思う人はキャラにしないで欲しいって前から言ってるよね?たとえ似たキャラでも、自分がいいなと思った事のある人がモコマジックに掛かった痛い姿見たくないんだよね』
「痛い姿!?そんな風に思ってたの!?」
『なに“モコラブ海賊団”って。“海岡くん”が所属してるとかあり得ないんだけどふざけてんの?』
「あわわわ…!ふ、ふざけてません!!だ、だってオレ周りの人からネタ作るの…よくしてるし……その、常磐津先輩はまだ出してないから…山岡くらいならいいかなって……」
『まだって何まだって!!やめてよ!!常磐津先輩なんて登場したら一瞬でモコに堕ちちゃうじゃんミッキーのバカ!!あたしの可能性をこれ以上潰さないでよ!!絶対やめてよ!!』
「ひえっ!ごめんなさい!!」
「お、おい…名前チャンひとまずそれくらいにしてやれよ…幹彦の冷や汗と涙で原稿湿るぞ」
あたしはドフラミンゴさんに背中を擦られ落ち着きを取り戻すため深呼吸する。やばいついカッとなってしまった
『……ふう…。…ごめんミッキー、言い過ぎた…ってか最後ただの八つ当たりだった…』
「い、いや…オレもネタ作るのに夢中で名前の気持ち考えてやれてなかったよ…ごめんな」
『いいよ気にしないで、“海岡くん”格好良く描いてくれてありがとう』
「名前…!」
『ヒゲ面の女の子を少しでもかわいく見せようと日々懸命に努力してる可哀想なミッキーにヒドイこと言ったよね…』
「名前まだ怒ってる!?現在進行形でヒドイこと言ってるよ!?」

山岡くんよりも誰よりも常磐津先輩をモコラブにしないで欲しいけど、モコに負けてしまうあたしの女子力不足が悪いんだから、もっと努力しよう。最近はサッチさんになぜだか筋トレ禁止令を発令されてしまい困っているが、障害を乗り越えてこその本当の愛だと思うし今日からまたこっそり筋トレ頑張ろう
「なあに?ケンカ?コーヒー淹れてきたから休むといいわよ」
『わ、ありがと……、』
「(ビクゥッ!!)」
「ゆゆゆゆ優木!!?な、なんで…!?」
「扉がね、さっきまでずっと開かなかったけどいま試したら開いたから」
なんてこった…。ドフラミンゴさんがあたしを落ち着けようと扉から離れた隙を突いて沙夜が侵入してきてしまった。背後からの声にドフラミンゴさんの肩が激しく揺れた。あ、これトラウマになってますわ
『す、すいませんドフラミンゴさん…あたしのせいで…』
「…フフフ……かまいやしねェよ…」
その割には口元が笑えてませんよ…
「ふふ、そろそろ休憩しませんか?コーヒーが冷めちゃう」
「…えっ、あ、コーヒー淹れてくれたのか。そうだな、名前にも無理させてるし少し休まなきゃな」
沙夜が持つトレーにはコーヒーとクッキーを乗せてある。さすがに反省したのか、もしかしたらローさんに言われて来たのかもしれない。気が散ってたところだし、休憩には調度良いタイミングだ
『じゃあ少し休もうか。ドフラミンゴさんは念の為に沙夜から離れた場所に座ってください』
「当然だ」
「名前ったらひどいわね」
『前科持ちには厳しいの』

作業机から離れ、食事用に用意されているテーブルに集まる。これを飲んでリフレッシュしたら、もうひと踏ん張りだ
――――ォ……
「…?」
「んっ?ドフラミンゴさんどうかしました?あ、そう言えば甘いのあんま食わないですもんね」
「……いや」
「召し上がれ」
『ん、ありがと沙夜。いただきまーす』
――――ォ………ォ…
「!!!」
「いただきまーす!」
「待て!!ヤメロふたり共!!!」
『きゃあっ!?』
「ぎゃっ!?」
あたしとミッキーがコーヒーに口を付けようとしたらドフラミンゴさんがいきなりカップを叩き飛ばした。床に叩きつけられたカップは割れてコーヒーが溢れる
――――オオオォォオオォォォ…!!!
『!!?』
「コーヒーから呻き声が!!?」
「フッフッフッ!やってくれたなァ、沙夜チャン…!!」
「チッ」
『沙夜!?なにこれ!?』
「手作りなの」
『だろうね!?』
床に溢れたコーヒーから地を這うような呻き声が響く。あり得ない。怖すぎる。コーヒーと思ったのは沙夜手作りの謎の飲み物だった
「あーっ!?名前!名前!!クッキーが動いた!!」
――――ゲギョギョギョ
『クッキーから声が!?』
「あん、全部バレちゃった」
『沙夜のバカ!!』
「優木のバカ!!」
「だってドフラミンゴさんに食べてもらいたかったんだけど個別に渡したら怪しまれるかと思って」
「ロー!!おいロー!!なんで沙夜チャンを見てなかった!!」
「クッソ!こっちもそれどころじゃねェんだよ!解剖屋がトレーボルに何かしやがった!!」
「鼻水を止めるお薬を飲んでもらったの」
「息の根も止まりそうになってんぞ!!!」

ドフラミンゴさんの怒鳴り声に、駆けつけたローさんが怒鳴り返す。ローさんに捕まえられそうになった沙夜は華麗にかわして部屋から出て行った
「アイツ…!!また逃げ足が速くなりやがった…!!」
ギリギリと悔しそうな顔をして、ローさんは沙夜を追い掛けて行く。ドフラミンゴさんはトレーボルさんの様子を見てくると言って出てった。その足取りは覚束ない。台風が過ぎ去った後のような作業部屋に取り残されたあたしとミッキーは暫し呆然と扉の向こうを眺めていたが、暫くしてどちらからともなく作業机に戻り無言で仕事を再開した。完成した特別書き下ろしではモコが敵の女海賊に毒を盛られそうになったのを身を挺して守ったブリーフ益田のブリーフが毒で溶け、ブリーフ益田が死にかけると言う異色の悲恋ギャグとなった。ベビー5さんはひきつけを起こすほど泣いたらしい























本当に叶えたい夢があるのなら、失敗したって何度でも挑まなければならないね



(な、なァ名前!おれの渡したイラスト、先生なんか言ってたか!?)(あ、うん…。なんかデビューする前の自分の絵に似てるってさ)(ま、まじかっ!!)(……)






















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このドフラミンゴはいいドフラミンゴ

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