バサラトリップ

□コンビニに行こうとしたらトリップした女
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『元親!』

「ん、おう。どうした」

『ピーちゃん見なかった?』

「さあ?見てねえな」

『マジかぁ。一緒に遊ぼうと思ったのに、つまらん』

「一人で遠くへ行くんじゃねえぞ」

『はいはい、わかってます。だからピー子たんと一緒にと思ってたの』

「鳥と一緒も変わらねえよ。それよりあと少しで完成すんだ、座って待ってろよ」

『え、すごい!もう出来るの?』

「たりめぇだ、これくらい簡単に出来るぜ」

『へぇー。じゃあ座って待とうかな。邪魔になったら言ってね』

「ならねぇよ。……、なあ…」

『うん?』

「あー…、コレ、が、出来たらよう…。…マジで一緒に航海出んだよな…?」

『出る出る。あたしだっていろんな場所に行きたいもんね』

「そ、そうか!」

『うん』

「っしゃ、一気に終わらせるとするか!」

『がんばれ〜』



あたしが此処に来てから早いもので三ヶ月が経とうとしてる。今では城下や近隣の村であたしを知らない人は居ないんじゃないかってくらい馴染みに馴染んだ。自分の適応能力の高さには感謝感激する。雲がぽつぽつと浮かぶ快晴の空を、穏やかに揺れる海に浮かぶ船から見上げ、あの日を思い返す





そうだ、コンビニに行こう。携帯と財布に家の鍵、車のキーを手にしてからふと思う。天気良いから歩こっかな。春の初め、天気が良くても風はまだ冷たい。ジーンズにロングタンクという部屋着丸出しだったけど、コンビニに行く程度じゃ着替えるわけもない。目についたロングカーデを羽織り、車のキーだけテーブルに置いて家を後にした。思えば、ものぐさなあたしがこの時この判断を下した事が全ての発端だった



『近っ!』

「なあっ!?だだ誰だてめぇ!?」

『汚なっ!唾!唾飛んだ!つーか近い近い!』

「あ!?ぅわっ!わ、悪ぃな!」

『あぁいえ、こちらこそ。よそ見してたつもりはないんですけど。なんかすいませんね』

「あ、あぁ…俺のほうこそ…?…、?」

『じゃあ失礼します』

「お、おう…?」

「『…………』」

「ちょっと待てぇぇ!!」

『ぎゃーっ痴漢!!』



これが出会い。……。…うんごめん、いきなり過ぎた。いやでもしょうがないよ、本当にいきなりだったんだもん。徒歩五分のコンビニに向かってぼんやり歩いていたら、ふいに目の前に壁が現れた。思わず声を上げたら壁は人だったようで相手も驚いてた。あれー?あたし人にぶつかりそうになる程よそ見してたっけ?とか思いつつ、軽く謝罪をして横切ったところではっとした

やべぇコイツ半裸じゃん!乳首剥き出しなんですけど!痴漢!っつーか変態!振り返ってよくよく見たらなんか変な格好してるし!コスプレのレベル越えてね?凝りすぎじゃね?やばくね?



「誰が痴漢だこの野郎!」

『いやーっ!来ないで!ちょ、やっ、やだ!来んじゃねー!』

「ぐはっ!?〜っ!!…って、てめぇ…!き、金蹴りは反則、だろ…!」

『か弱き乙女は何をしても許されるんですー!ついでに目ぇ潰してやるっ!』

「!?お、おい!やめろ馬鹿野郎っ!」

『なに避けてんの!』

「避けるわ!っつーかか弱き乙女はンな的確に急所を突いてこねぇよ!」

『変態に情けは無用!』

「俺は変態じゃねぇ!!」



襲いかかってきた変態野郎(本人曰く近付いただけらしい)に驚愕し、自己防衛の為に放った蹴りは寸分の狂いも無くべスポジならぬチンポジにヒット。変態野郎は股間を両手で押さえて崩れ落ちる。畳み掛けるように右手を一番の形にして高々と上げ(だって片目は布当てみたいのしてたからチョキにする意味はない)、一気に変態野郎の目玉へと突き落ろしたがこれは避けられてしまった。ちくしょう!



「おおいっ!俺ァあんたみてぇなべっぴんな姉ちゃんに恨まれるような真似はしてねぇ!成仏してくれ!」

『あ"ぁん!?いくらあたしがまばゆくて目が眩むほど美しいとしても成仏はないだろ!まだ死ぬには勿体ないだろうが!』

「そこまで持ち上げてねぇよ!っつーか幽霊じゃなきゃ物の怪か何かか!?」

『ふざけんなあたしは現役ピチピチの生きた人間だっつーの!』

「だったら海坊主か!まさか俺の船を難破させる気か!?させねぇぞ!」

『なお悪いわ!女ですらねーだろ!てか聞けよ人の話!』



暫くぎゃーぎゃー言い合ってたけど、突然地震が起きて体がふっ飛ばされそうになった



『きゃあ!?』

「危ねぇ!」

『!ぃやっ!』

「おとなしくしやがれ!怪我すんぞ!くそっ、天気が変わったか!?」

『えっ…あ、ありがとうございます…』

「おう姉ちゃん、なんともねぇか?」

『は、はぁ…』

「そうか」

『……』

「……」

『…あの…』

「あ、あぁ…?」

『もう大丈夫なんで離れてくれません?』

「っ!お、おぅ!わわ悪かったな!気付かなくてよ!」

『あ、いえ』



地震らしき揺れは一度きりだったけど、その揺れであたしがバランス崩してふっ飛んで転びそうになったところを半裸さんが助けてくれた。おぉう、逞しい。それになかなかのジェントルマンだ。でもぶっちゃけさっさと離れてほしい。だってなんかこの人…



『…って、えっ?』

「な、なんだ?」

『……。…、……此処、どこ…?』

「はあ?」



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