バサラトリップ

□めげない長曽我部元親
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白状しよう。ぶっちゃけ言やあ完璧に好みの女だった。さらに言やあ惚れてしまったのだ、あの一瞬で。気配も前触れも無く突然目の前に現れ、痴漢だ変態だ叫ばれあろうことか急所を蹴り飛ばされたあげく臭ぇととどめを刺してきた女でも、だ






船が揺れて転びそうになった女を反射的に抱き締める。白く細く柔らかく傷のない身体に、キツい香や匂い袋とは違う落ち着くような甘い匂い。結いもせずおろされているだけの長い髪がだらしなくも下品にも見えないのは何故だろう。不覚にも固まったままでいれば訝しげに声をかけられ、自分達の状況に驚き慌てて身体を離す。変態じゃねえと全力で主張した手前、かなり恥ずかしかった

船が揺れた原因は天気が崩れたせいかと思ったが野郎共が声をかけてこないあたり、ただの高波だったのだろう(この辺りではよくあることだ)。少しの安堵も束の間、女が唖然とした顔で此処はどこだと言ってのけた。わけがわからねぇと思ったが、女のほうがもっとわけがわからねぇと言った顔をして部屋ン中を伺っていたので取り敢えず声をかけてみたらすげぇ勢いで後ろに飛び退かれた

まあ俺も自分の風貌や素行が良いと言えねえことくらい理解してるから、女を安心させようとそんなつもりじゃねぇと伝えたらなんとなく罰の悪そうな顔をされた。俺が傷ついたとでも思ったのだろうか。だとしたら顔だけじゃなく心もべっぴんな女だ。得体は知れねえが、なんかもそれすらイイと思っちまった

得体の知れねえ女は自分は未来から来たと言い出した。さすがに、おいおいなんじゃそりゃと思いつつも、至極真剣な眼差しと話せば話すほど疑いようもなくなる現状に、とうとう俺は信じることを決めた

これは、女を信じることに決めただけじゃなく、不思議と間者や忍の類いとは考えられなかった自身の勘も信じたということ。惚れた弱みだとか言うんじゃねーぞ!違うからな!

そして当然のことながら行く宛ての無えこの女に俺と一緒に居る事を提案する。いや待て、先に言っとくがやましい気持ちなんざこれっぽっちも無え…から、な!おうマジで!このまま手放すのは勿体ねえとか傍に置きてえとかあわよくば自分の女にしてえとか、むしろそうすべきだとかそんなん思ったわけじゃねえ…いやマジだって。とにかく、俺と居るのが安全だという言葉に嘘偽りは無え!これだけは声を大にして言ってやらあ!けして、これだけしか大声に出来ないわけじゃねえ

俺の思いが届いたのかすんなり了承してくれた女と改めて自己紹介をする。名乗った瞬間から俺をチカ呼ばわりする奴ァ初めてだった。つーかチカ呼びされたのも初めてだった。なんだか緊張した。握手を求めたら拒絶された。泣きたくなった。名前に宥められ気を取り直して野郎共の前に連れ出せば、これでもかっつーくらい顔をしかめて臭い、不潔、と言われた。ちょっと泣いた

最後のほう、説明が大雑把になっちまったがまとめると名前は俺の傍でのびのび生きてくれるって事だ。面妖な格好でいきなり現れた挙げ句、俺が傍に置くと言っちまったもんだから野郎共は海の化身だ天女だなどと騒ぎたて、しまいにゃアニキに嫁が!と言う始末。嫁っておいおいおめぇら…もっと言っていいぞ。嫁と言われちらりと名前を見ると欠伸を噛み殺すのに必死だった

兎にも角にも、名前が野郎共からも無事に受け入れられて良かった。まあ予想はついてたけどな。っつーことで晴れて公認になった俺は野郎共の言う、アニキの嫁!を現実にすべく頑張ろうと決意した。手始めに湯浴みする事と船に湯殿を取り付けるところから始めよう

数日して、名前が俺のことをチカ呼びから元親呼びに変えたのには何か理由があるのだろうか。なんとなく聞けないままだ














彼はフラグを乱立させてました



(三日以上湯浴みしない奴はあたしに近付かないようにね)(容赦ねえな…が、仕方ねえ。わかったか野郎共!)(了解っス!アニキにアネキ!)















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この話を恋愛に持っていきたいのかは定められていない件について(^ω^)←



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