バサラトリップ

□ヒロインは海の神様
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『は!?慶次働いてないの!?マジで!?』

「えっ!い、いや働いてないってゆうかなんてゆうか…そんな事もないって、ほら!日ノ本を回って諸国情勢や政を見るのが仕事みたいなもんだしさ!そうそう!」

『いやあんた今さっきお節介な恋愛行脚して日ノ本回ってるって自分で言ってたじゃん!そんな小難しいこと絶対やってないでしょ!』

「いやそれは!ってゆーかお節介って!?」

『あたしには要らないお節介焼いて余計ややこしくして火の無い場所に黒煙を立たせる慶次の姿しか想像できない』

「ヒデェや!」

『しかもニートでしょ?そんな人が結ぶ縁なんてろくなもんじゃないと思う』

「?に、にーと?」

『元気なくせに動かず学ばず働かずを貫く人のことを言うんだよ』

「俺動いてるから違うって!」

『………。(ニートのくせにフットワーク軽いなんて最悪なんじゃ…)』

「そんな目で俺を見ないで!!」



………。…名前と慶次が妙に仲良い。城に戻れず迷ってたらしい名前を連れてきてくれたことは感謝するがコイツは俺に用があったんじゃねーのか?なんで俺を除け者にして名前とばっか話してんだ?そもそもついさっき知り合ったばかりのくせに、昔からの知り合いでしたっつーくらい仲良さそうに見えるんだがどういうことだ。あと襖の向こう側から侍女達の会話がうっすら漏れてる

どうしましょう恋敵が現れたわ!でもあたし慶次様イイと思うわ、優しいしお話も楽しくて素敵な方じゃない?確かに、お顔も凛々しさに欠けるけどイイわよね。名前さんとっても楽しそう。元親様からくりの話しかしないから。本当につまらないわよねからくり話。酔ったらしつこいし。あーわかるわかる、酔った元親様の配膳行きたくないのよねー

……どういうことだ。ほぼほぼ俺への愚痴じゃねーか!つーかアイツらンなこと思ってたのかヒデェ…!からくりの話しかしなくて悪かったな!酔ったらとか…それもうただの拒絶じゃねーか!傷付くぞ畜生!慶次は恋恋うるせぇんだぞわかってんのか!…クソッ、女ってぇのはこれだから…!

若干イライラしながらも慶次と名前の会話を聞き直す。どうやら話題はどうして名前が俺の城に住んでいるのかと言うことのようだ。ちなみに名前には黙ってるが今や名前の噂は尾ひれに装飾が付き日ノ本全土に広がっている

噂が広まりかけていた頃、村人の仕事の手伝いをするたびに天女だなんだと言われ妙に崇められるもんだから顔をしかめて否定する名前が不憫で、野郎共に頼みやたらめったら他国の人間に名前についての自慢話をするなと村々を回らせ口止めを促したのだが遅かったらしい。噂を名前に黙ってる理由としては天女海坊主妖怪に加え男だ筋肉だるまだ毛むくじゃらだなど、名前でなくともうんざりするようなものが半数以上を占めているからだ

だから慶次、あんまり余計なこと言うんじゃねぇぞ…!



「えっ!じゃあ名前が噂の海の神様!?」

『違う違う、殿様のすねをかじるただの庶民だよ(てゆうか海の神様ってダレだよ)』

「それ庶民って言わねぇよ!」

『てゆーかやっぱそんなふざけた噂がこの辺りでは普通になってんの?』

「…あ?お、おい名前、アンタ噂のこと知ってたのか?」

『え?あぁうん、前にお菊さんからちょっと聞いただけだけど…』

「な、なんだ…そうだったのか」

『?あたしが知らないと思ってた?』

「…まぁ……知ってたらもっと怒ると思ってたからな…」

『あー…怒るってゆうよりかは呆れてるかな…』

「それもそうか、考えてみりゃそうだよなマトモな噂無えもんな」

「ははは、確かにな〜俺が聞いた噂の海の神様は身体は人間で顔は魚だもんな〜」

『………は?』

「え?」

「……」



慶次ぃぃぃ!!テメェなに言ってんだバカ野郎!つーかンな噂俺も今初めて聞いたわ!



『え?なにソレこわい…他の国ではあたしってそんな妖怪みたいな存在感出してんの?(海の神様ってか魚の神様じゃねーか)』

「あー!いや!名前、さすがにそりゃ慶次が噂を誇張したんだ、」

「ちげえって!四国に来る道中で寄った団子屋の女将と客に聞いたんだよ!四国にゃ最近海の神様が現れてたびたび、漁村どころか農村にまで恩恵を与えてるって。顔が魚で面妖だが優しいらしくて村人にゃ人気ってな!」

「誰が面妖だ!そいつァ名前が仕事を手伝いに回ってんだよ!」

「それは名前の話聞いててわかったけどさぁ、噂は誇張じゃないぜ?」

「……」



ああでも男だって噂もあったなと続ける慶次にもう黙るしかない。名前は眉を寄せ慶次の話を聞いている。まさかここまで酷い噂だなんて思いもよらなかったんだろう。きっとこれは自慢したいが自慢しちゃダメだと言われたこの国の民達が名前の容姿を出来るだけ伏せて誤魔化そうとした結果なはずだ。名前が現れたときに天女だと騒いだのは俺だがまさか国を上げての話に発展するとは…。いや、もう日ノ本を上げての騒ぎだ。収拾つく気がしねぇ。クソッ!慶次の野郎…なにが話が楽しいだ!ちっとも楽しかねぇよ!



『…なんか…思ってた以上過ぎる噂ばっかであたし四国出るのこわくなってきたんだけど…』

「ほらな!!言うと思ってたぜ!だから知られたくなかったんだよ!」

『えっ?』

「も、元親?」















「一緒に日ノ本回るって約束したじゃねえか!」

『またその話に戻るんか』




















色褪せない約束をしようよ



(俺だって名前をつれ回して自慢してぇんだよ!)(いややめてよなんてこと考えてたの)(いいな楽しそうだ!俺も一緒についてっていいか?)















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船の準備は万全



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