氷帝学園で過ごす

□GW、校門前にて
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※岳人視点





「お、苗字さんや」
休憩中、侑士が独り言のように呟いた。世間はGW初日、しかし俺たちテニス部は連休も関係無くひたすら部活に打ち込んでいる。今日は午後練で日差しがキツくロードワークのしんどさったらない。フェンスの向こうにはほとんど跡部目当ての女子が大勢居るが、アイツらこの暑さでよくあんな突っ立ってられるよな。ある意味尊敬するわ。休みの学校と言えば部活生以外はこう言った追っかけくらいしか生徒は居ないと思ってたけど
「苗字がなんの用あんだよ」
「運動部ちゃうん?」
「いや、アイツずっと帰宅部だぜ」
苗字とは1年2年と同じクラスで、俺の中では男友達を含めても上位で仲が良かった

「今年から特進やし、部活無くても忙しいやろ」
「そうだよ!アイツ3年連続同クラ目指してたのに裏切りやがって!くそくそ!」
「岳人が特進はムリあるしなぁ」
「うるせー!苗字が特進狙ってるって知ったときは関口と一緒に責めたんだけどよ、結局特進だもんなー」
「責め…かわいそうやん、やめたり。ちゅーか関口さんとは同じクラスになったん?」
「C組」
「バラバラやん」
「そうなんだよなー。こんな人数居る学校で連続して同じクラスになるなんて神がかってるから、もしかして3年もイケんじゃね?って思ってたのによ」
始業式に3人でがっかりしたけど、苗字は最初から裏切り者だろって関口と文句言ったっけな。仲ええなぁと侑士が言ったのに対してまぁなと返したところで休憩が終わり、苗字が何しに学校に来たのかはわからないままだった









「侑士〜、なんか食ってから帰ろうぜ」
「おん、何にする?」
「ラーメン」
「ええ…暑い」
「それがいいんじゃねーか」
「まあええわ」
気温が下がらぬまま部活が終わって帰り支度をしながら侑士を飯に誘う。亮は鳳と残って打ち合いするらしい。まじかよ、死ぬぞ。日吉は用事があるとかで急いで帰ったのでもういない。寝てるジローは樺地に背負われてるとこを見ると跡部が送るのだろう。跡部たちより一足先に部室を出て歩いてたら前のほうに女子生徒がひとり歩いている。あれはたぶん苗字だ
「おい!苗字!」
『ん…あ、向日!忍足も!部活終わりー?おつかれさまだねー』
「おおきに」
「つーかお前はなんで学校来てんだよ?」
『GW中に課題出てさー。図書室でそれやってたの』
「げえーまじかよ。さすが特進」
『テンション下がるわー』
「俺と関口を裏切るからだな!」
『ふたりもバラバラになってんじゃん』
「それ侑士にも言われたぜ」
『テニス部は連休中ずっと部活?』
「まあな」
『暑い日続くらしいよ』
「まじかよ…。あ、でも明日からは午前練だからな!今日より楽だろ!」
『たぶんね。てかあたしも明日また学校来るわ』
「苗字さんも連休中ずっと学校来るつもりなん?」
『まさか!明日の午前中来たら終わりだよ。その後は遊びまくりまーす』
「くそくそ!自慢かよ!」
『よっちンとこ泊まりに行って、次の日動物園行ってきまーす』
「うぜー!」

羨ましいぜ!俺も遊びに行きたいっつーの。こうなったら少しでも遊んだ気にする為に明日は侑士ンち泊まりに行くかな。考えが読まれてたようで、隣で侑士がウチ来ても早めに寝なあかんでと言ってきた。ノリわりーな。それを聞いた苗字がウチらはオールするけどねとドヤってきた。コノヤロウ
「寝坊して動物園行けなくなれ」
『ひどー!…あっ、跡部だおつかれさまー』
「…ああ」
『課題終わった?』
「だいたいな」
『おーさすが!』
「当然だ」
「なあ俺と侑士これからラーメン食いに行くんだけど苗字も行かねぇか?」
『あっいいね行きたーい…けど、今日は家族でご飯行くんだわぁ。次行くときまた誘ってよ』
「んだよ、しかたねーな」
「岳人の次は明日やから気ぃつけ」
『おこちゃまか』
「うっせ!まだなんも言ってねーだろ!誘わねーぞ!」
『うそー誘ってよ、ねっがっくん』
「がっくん言うな!」
『すぐ怒るんだもんなー…ってか、あたしそろそろ帰らないと置いてきぼりされる!』
「されろされろー」
『やめなさいよ。じゃあ明日もしかしたら会うかもだから、また明日ね』
「おう」
「気ぃつけてな」
『うんありがと。跡部もまた明日ね』
「ああ」
苗字はそれから最後に樺地に向かってさようならと会釈して足早に去って行った
「苗字さん、樺地のことコーチかなんかと勘違いしたんちゃう?」
「たぶんな。ばかだなアイツ、明日会ったら笑ってやろ。つーか俺らもさっさと行こうぜ、腹減ったー」
「せやな。跡部、樺地、ジロー頼むで」
「ウス」
「…ああ、じゃあな」

そういやなんで侑士が苗字と親しげに話すのかと思ってラーメン食ってるときに聞いたら、去年委員会が同じだったらしい。なるほど。そういやそうだっけ。まあそんなのどうでもいいから、明日は暑くないといいな




























陽だまりの下で笑わせて



(午前中からこの暑さってなんだよ…)(真夏日やて)(殺しにかかってるだろ…)














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よっち=関口由子

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