氷帝学園で過ごす

□5月、遠足にて
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遠足の定義とはなんぞや

「やー、ウチらのクラスがゆるくて助かったわ」
『ほんとにね。よっち以外とじゃさすがにこうはいかなかったよ』
「あたしだってそうだよー」
遠足ってさ、泊まりがけで行うものなの?なんて疑問も3年目ともなれば軽く流せる。今年はドバイだ。うーん、この灼熱。死ぬわ。市内散策もそこそこに、あたしとよっちは宿泊してるホテルへ帰る途中である。この遠足でクラスの人達以外と行動してもいいと言われたときの嬉しさったらなかった。選択科目が多い氷帝は3年間全てクラス替えがあるのだけど、A組は特進クラス故に大きな人の変動が無い。なので、普段は普通に仲良くはやってるけど、こうした授業以外や校外の行事ではなんとなく輪を乱してしまいそうで恐縮だった。そんなことない気にしなくていいと言ってくれるだろうけど、ドバイで父親の仕事先の人に挨拶に行くなどとサラブレッド発言をされてしまえば、輪を乱す以前の問題だ。その点よっちとなら気心知れまくりなので楽だ。今だって特に見に行きたい場所も無いし熱いしダルいしで、ならホテルに戻ってレストランでご飯食べてからホテルのプライベートビーチで遊んで過ごそうとなった。疲れたら部屋で寝ればいいし集合時間ギリギリになっても既にホテルに居るんだから慌てる必要もない。こんなだらけきったプランが通用するのはよっちと居るときだけだろう。自力では一生来れなさそうな場所で観光する気も無いとは。でもいい、ホテルはギラギラに豪華だしプライベートビーチの綺麗さはハンパじゃない。此処で遊ぶだけでもドバイを満喫してる

ホテルに戻り広いロビーを歩いていたら、氷帝の制服を来た人がソファに座っているのが見えた
「あ、あれ宍戸じゃん」
『ん、テニス部の?』
「そう。クラス一緒なんだ」
『ああ言ってたね。あとほら、あれ、』
「眠りの慈郎」
『そうそう、芥川ね』
氷帝テニス部の人気は本当にすごい。入学前からほんのり耳にしていたのだが、最初はアイドルやモデルが多く所属してる部活なのだと勘違いしたものだ。それくらい熱狂的な人気を誇っていて実際にファンクラブまである。細かい仕組みは知らないけどなんと他校生までもが入会しているのだ。もちろん好きであればの話であって強制ではないし、氷帝は大きな学校だから入会してない人達もそりゃ沢山居る。でも、大きな学校だからこそ、入会してる人の数もハンパじゃない。しかもそこに他校生も加わってるのだから。けれどひとくちにテニス部と言っても部員全員が対象なわけじゃない。テニス部の人気と言うのはテニスを行う側から見たときにも存在する。なんてったって部員数は百単位。男子からの憧れも強い。そんなマンモス部の中でファンクラブがあるのはレギュラーメンバー、いわゆる試合に出ている人たちが主なのだ。レギュラー以外の部員の中にもファンクラブがある人も居る事には居るけど、レギュラーの比じゃない。そしてそのレギュラーメンバーとはあたしが入学してから3年間、そこまで変わらない。彼らは中学のときから今の地位を確立させつつあったようで、高1の時こそフルメンバーでは無かったにしろ、2年になった時にはほぼ中学の時を再現させるメンバー構成になっていたらしい。らしい、と言うのはあたしは氷帝中学の様子を知らないので周囲が教えてくれたのだ。1年2年と同じクラスだった向日はそんな特殊な部活で2年からレギュラーメンバーだった強者である

高校に入れば中学のときよりもカップルが格段に増える。そう言ったアプローチが増えるし当たり前になるからだ。好きな人が居るなら尚更、彼氏が欲しい彼女が欲しいと思うもの。ファンクラブがあるとは言え一般人のテニス部員もやはりその対象として見られる。中学のときは見てるだけで満たされていた女子が、彼らに彼氏になってもらいたいと思うのだ。だから、ぽっと出のくせに向日と馴れ馴れしく喋っていたあたしとよっちが気に食わないと思う人達が少なからず居た。その事で何人かの女子と揉めたのは今は割愛するがそれがあったからこそあたし達はいっそ、テニス部だろうとなんだろうと等しく同級生として接するぞゴルァな意識を持った。向日と普通に友達になってしまった以上、いまさらテニス部レギュラーだからと線引きするほうがさらに揉めそうだったからだ。かと言って、面識無い人達とは話す事もないけど
『レギュラーが二人も同じクラスなんて他に無いでしょ?』
「あーね、でもあの二人ならまだマシだわ。周りも比較的穏やかだし」
『穏やかって』
「いや笑うけど2年の時までだって向日でまだよかったって。話し聞いてたら忍足とか、レギュラーじゃないけど滝辺りはファンクラブの人数スゴイって」
『ああ、滝とかキレイな顔してるもんね』
「まあ跡部様には負けるけど」
『あーそこはねー』
「はい噂をすれば跡部様」
『ほんとだ。あ、こっち見た』
「ほらクラスメイト」
『よっ跡部!』
「軽すぎてさすがにあたしもビビるわ」

エレベーターから姿を現した跡部は軽すぎるクラスメイトの挨拶にきちんと返事してくれた。どうやら跡部も仕事関係の人と会っていたらしい。跡部の場合は自分の仕事相手だそうで、もう聞き流すしかない。宍戸達と行動してるのでロビーで待ってもらってたと。話をそこそこに別れを告げあたし達はエレベーターに乗り込み最上階のレストランへ向かった。よっちに跡部様と仲良しじゃんと言われたが、選択科目などで一方的に喋ってるだけであってそんなんでもないと返しといた。それよりも跡部は宍戸達と言ったけどロビーには宍戸の姿しか見えなかったことを話すと、宍戸と眠りの慈郎はニコイチだからとよっちが教えてくれた。大方どっかで寝転んでるんだろうと。ドバイに来てまで寝て過ごすのはさすがにあたし達でも出来ない。跡部と宍戸も大変だろうな
























とにかくかここがパラダイス

(うわおいしー!いくらでも食べられるわ)(あたしもう水着着れないヤバイ)














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氷帝ならドバイは社会見学レベルだよね

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