氷帝学園で過ごす

□6月、3年C組にて
1ページ/1ページ

※夢主の親友、関口由子視点










なんか、なんだろう、芥川が鬱陶しい

学園が誇るテニス部レギュラーであらせられる芥川とは今年初めて同じクラスになって、あたしの前の席にいる。この男、噂には聞いていたけれど本当によく眠る。教室では食べてる時くらいしか起きてないんじゃないだろうか。こんなにひたすら眠っている男でもエスカレーター式のこの学園では進級もまかり通るから腹立たしい。あたしが必死になって受験勉強していた時も、合格通知が届いて泣いた時も、この男はグースカ寝こけて居たに違いない。寝てばかりいるから頭も悪いのに、そこそこの顔面とテニス部レギュラーと言う尋常じゃない厚みのフィルターのおかげでこの男は、寝て食べてちょっと運動してるだけでヒーローだ。そんな芥川の突っ伏して丸まった背中を2ヶ月ちょっと見続けてきたわけだけど、ここ1週間ほど変化が起きていた。とにかく寝ている芥川は、配られたプリントを回すことをしないので、芥川の前の席にいる近藤さんと芥川の頭上で受け渡しをするのが日常と化していたのだけど、この1週間ほどは芥川が起きているのだ

若干、猫背だけど背もたれについたままの芥川の背中がいつまで経っても丸まらないのにはかなりビビった。プリントを回そうと振り返った近藤さんが起きてる芥川を見た時なんて声を上げてビビっていた。心なしか教室内がどよめいていた。こうして謎の覚醒を果たした芥川が、なにやらとても鬱陶しい。それは前が見えなくなるからとか左右にゆらゆら揺れてるからとか、そう言ったことじゃない。この男、何かと理由をつけて後ろを振り返ってきやがるのだ。プリントを配るときはわかる。席を立つ時に椅子を引くタイミングで後ろを気にするのもわかる。だけど後ろに転がした消しゴムを拾うときにあたしをチラチラ見てくるのは様子がおかしい。まず、消しゴムは転がったのではなくて転がしていた。わざと。完全わざと。わざと後ろに放ったのをあたしは見てた。そうまでしてあたしを見てくる意味がわからない。ちなみに、芥川が後ろを見るときに必ずがっつり目が合うので自意識過剰とかではない

ここまで来ると芥川はあたしに気があるのでは?と過ぎる人が居るかもしれないが、その可能性は低いと思う。なんと言うか、違う。それに芥川は照れてるような素振りはないのだ。そもそも芥川って照れるのか?と言う疑問もあるが、ともかく雰囲気的に恋しちゃってる風ではないように見える。でも、何か言いたそうにはしてる。と言うか話しかけてくるのだけど。関口って外部入学なんだってな・岳人と同じクラスだったんだってな・関口って女子だと誰と1番仲良いの・外部入学って何人居たっけ・関口以外にも女子の外部入学って居たっけ・A組にも居たっけ、などなど

あのさぁ…。なんかもうものすごく下手クソで呆れるわ。どれも小出しにしてきてはいたけど、それにしたってあからさま過ぎ。どう考えても名前のこと知りたがってるよこの寝太郎。あたしから名前の情報を引き出そうとしてやがる。て言うか、なんであたし。確かにあたしに聞けば一発だけど、そんなにわざとらしく興味無いのを装って遠回しに探り入れるより、向日に聞けばそれで済むのに。あたし程じゃなくても、向日だって名前と仲良いんだから向日に聞いたほうが早いのに。芥川はよくわからない

「あれ、イギリスマナーの教科書忘れてきた」
「え、関口が忘れ物ってめずらC」
「そうかな」
芥川があたしのことどれだけ知ってるのか謎だけど…。それよりなんでこの人、完全に体を後ろに向けてるの
「どうしようかな…」
「あ、俺の見せて…あげないからっ、他のクラスに借りに行ったら!?」
「……」
「えっと、ほら、A組のヤツと居るの見た事あるし、A組に友達居るんだろ?あ、岳人は忘れっぽいから多分持ってきてないと思うC〜」
「……」
「なっ?」
…下手クソか。この男、いくらなんでも下手クソ過ぎだ。普段は半分しか開いてない瞼が全開して瞳は泳いでいる。まず、前と後ろの席関係でどうやって教科書を見せてもらえるのか。ポロッとこぼした呟きを拾われるとは思わなかった。うわあ…と思うあたしの気も知らずに芥川は早くA組に行けと急かす。この授業は教科書をあまり使わないし、(氷帝の生徒であれば)出来てて当たり前を前提に行なわれるのでわりと緩い。だから教科書が無くてもそう困らない。けれど芥川があまりにしつこく、芥川があたしに話しかけるたびにハラハラした顔でこちらを見てくる宍戸が可哀想と言うことでお望み通りA組に行く事にする。ついでに数学のプリント持ってって教えてもらおう

あたしをジッと見つめる芥川に、行ってくると告げれば彼は周囲に花が浮かんでるんじゃないかってくらい嬉しそうにした
「うんうん!そうしな!」
「うん」
「えっとさ、それで、A組には跡部もいるんだけどさ、跡部ってわけわかんない事多いけどいーヤツなんだC!みんなで仲良くしたら楽しいと思う!」
「……」
この男にわけわかんないとか言われるって屈辱だな。下手クソにぶっ込んできた跡部上げはスルーしてあたしはA組に向かった。自分の恋路を応援してくれたら見返りに跡部様を紹介するつもりなのだろうか。普通にいらない。A組では名前がクラスの女子とお喋りしていた。芥川のせいでなんとなく跡部様の姿を探してみる。跡部様は自分の席で多分間違いなく難しい本を読んでいた。メガネ姿が高貴さをプラスさせてる。それを名前に言うと、わかるわかる美しさに磨きがかかるよねと同意してくれた。名前から借りた教科書には細かいポイントが箇条書きされていて、実技試験のときにとても役立った

芥川が、A組どんな感じだった?と聞いてきたけど無視した
























だれより輝いてみせるからよく見ていてね



(おいジロー!おっまえあからさまに探り入れようとすんな!俺まで跡部に怒られるんだからな!)(だってぇ〜、俺も岳人みたいになんかしたいC!)














ーーーーー
役立たずその2

跡部様は活字を読む時はメガネだといい。スケスケインサイトに視力は関係ないってはっきりわかんだね

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ