氷帝学園で過ごす

□跡部連載でもしも審神者してたら
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※社会人設定
※捏造アンド捏造
※深く考えない
※燭台切光忠視点






『跡部っ!』
初めて見る女人が、呼び捨てなど滅多にされぬわれらが主の名を呼んだ。主は声の聞こえた方を振り返り女人を見とめると、きっと長く主を知る者にしかおよそわからぬ程度に優しく目を細める。それに気づけてしまえるくらいの時間を過ごした僕たち隊員はもれなく驚き衝撃を受けた

本業がすさまじく忙しい主が、政府の要請も無しに演練に出向くようになって少し。主が演練場に降り立てば審神者は当然のこと、刀剣達までもがチラチラと主を盗み見る。大方、自身の審神者から話を聞いてのことだろう。僕の主は名を跡部景吾と言い、彼を知る人間は皆一様に感嘆の息を吐く。政府でさえ、主には頭を下げる始末だ。聞けば、主が審神者になる時に政府に多額の支援金を出したらしい。役目を果たすならばより良い環境の中で、と。はした金だと鼻で笑って言った高飛車で不遜な主は、しかしその“より良い環境”とやらを自身の為だけでなく全ての審神者に等しく与えるのだから、その態度に余りある器の持ち主だった。そんな彼のやることなす事全てが規格外だと知ったのは、ずいぶん経ってからだったのだが

『跡部、久しぶりだね!て言うか審神者やってたなんてビックリなんだけど!』
「アーン?俺のほうが先にやってるぞ?向日からお前が審神者になったと聞いた時には俺はもうなってたからな」
『えっ!?そうなの?え、向日なんで教えてくれなかったんだろう、わりと連絡取ってるのに』
「はぁ…。大方、こうやって会った時に驚かそうとしてたんだろ」
『あぁ。言われてみれば確かに、なんかニヤニヤしながら他の審神者と会ったりするのか聞いてきてたわ』
「ったく、いつまでもガキだな」
『ほんとにねー、テンションとかも全然変わらないの。ウケるよね。それにしても、元気だった?すっごい忙しいんじゃないの?』
「まあそれなりにな」
『経済誌は当然だけど、ファッション誌でも特集組まれてるの見るし、常にいろんな国行ってるみたいだね。審神者と兼業なんて身体大丈夫?ツラくないの?』
「フッ、このくらい俺様にかかれ……、いや…、そうだな、気にしてくれてありがとな、慣れりゃどうってことねぇよ。体調管理は万全だ。それよりそっちこそ身体は平気か?お前も兼業なんだろう?」
えっ、と思わず声を漏らしたのは加州清光くんだった。化け物でも見るような顔で主を見ている。主君に対してしていい顔では無いが、加州くんの気持ちはよくわかる。他の面々も似たような面持ちだ。僕らのよく知る主ならばここで「このくらい俺様にかかれば何の問題も無え。体調管理も仕事の一環だぜ。当然、俺様は万全だハーッハッハッハ!!」くらい言う。どんな些細な事においても自信たっぷりなのだ彼は

なのに今の彼ときたら。自身のことを抑えてまでも相手を気遣う発言。眼の前に居る女人は、僕らが驚く主の様子を特に気にするでもなく自分も大丈夫だと返答した
『それにしてもさ、演練って審神者もついてないとダメでしょ、なかなか時間が作れなくて政府からいい加減出ろって通達来ちゃってさ』
「拘束時間が短いわけじゃねえからな」
『ねー。でも跡部もこうやってちゃんと出てるんだからあたし甘えてたわ』
「ンなことねえ。こんのすけにお前の戦績を聞いた事があるが、他の奴らより頭ひとつ出てるじゃねえか」
『いやーそれはさ、戦績低いのが理由で本職のほうに文句つけられたらイヤじゃん?』
「だとしても、優秀なのは事実だ」
『どうかなー?でも跡部に褒められると気分良くなるなぁ、ねっ』
照れ隠しなのか、言いながら彼女は自身の半歩後ろに控えていた刀剣の腕をぽすぽすと叩いた
「私に言われましても…。ところで、こちらの方は主とどのような関係なのでしょう?」
江雪左文字の伏し目がちな瞳がついと動き僕の主を捉える
『高校のときの友達で跡部って言うんだけどほら、この前買った雑誌に特集されてるの見せたじゃん』
「…あぁ。確かご友人が載っていると仰ってましたね、こちらの殿方でしたか」
『そうそう』
なるほど、と納得した様子で緩く頷く江雪左文字。加州くんがぼそりと「主って友達居たんだ…」と呟いた。そのとき、たった今聞いた声が別のところから響いた

「ちょっと主!こんな所に居た!いきなり走りだすから探したんだよ!トムが呼んでる、手続きがあるんだって!」
『あ、ごめん清光』
どうやら彼女の所にも加州清光が居たらしく、彼はもう!とぽこぽこ怒りながら駆け寄ってきた。こちらの加州くんがまたぼそりと「僕のほうが可愛いね」と強気に笑う。その顔は主そっくりだ
「演練、これからか?」
『そう。跡部は?』
「俺達は終わったところだ」
『そうなんだ。手続きなんてあったけね、だいぶ前に1回やったっきりだから忘れてた』
「審神者のIDと指紋認証が必要だ。それはそうと、いま言ったトムとは誰のことだ?そんな名の付く刀剣はいないだろ」
彼女と彼女の加州清光を見て主が言う。彼女の加州清光は僕の主を怪訝な顔で見た
『あ、うん刀剣じゃなくてこんのすけのこと』
「こんのすけがトム?」
『うちのこんのすけ、106番目に作られたらしいんだ。だからトムって呼んでるの』
「ほう」
主は合点がいったとばかりに感心する。いいじゃねーの、と続けたところを見るとうちのこんのすけにも何かしらあだ名を付ける気だろう。そしてふたりのやりとりに御友人の加州くんが割ってくる
「…ねえ主、この人ってよく海外セレブ特集のページに居る人だよね。で、主の友達」
『お、さすが清光。そうだよ覚えてたんだ』
「まあね」
気もそぞろな返事のあちらの加州くんは、僕の主を見るのに夢中だ。かなりじっくり見ているが、主は周囲からじろじろ見られるのが常なのでまったく気にしていない。もう本当の本気で気にしていないのだから、すごいなぁとつくづく思う
「ふうん…。悪くないじゃん。ま、俺はどうこうする気ないけど」
『え?なんて?』
「なんでもなぁーい」
小さな声で漏らしたその言葉は、主と御友人には聞こえていないようだが僕たち刀剣には聞こえた。これは、彼女が主に気があると言うことだろうか。今まで見てきた女人は一様にそうだったので、彼女がそうでも何らおかしくない。しかしあちらの加州くんは小声で付け足した
「あ、俺の主はまったくその気なんてないから」

「えっ」
「アン?どうした?光忠」
「え、あ、いや、…なんでもないよ。主がこうして楽しそうに人と会話しているのを直接見るのが珍しくて」
「……そうか」
ほんのりと照れくさそうに目を泳がせる主を初めて見た。ちらりと横を見るとこちらの加州くんや、他の面々も唖然として主を見てる。いよいよ持ってコレは…と、御友人の江雪左文字と視線を合わすと、無言で静かに頷かれた。なんてことだ。ならばここ最近忙しい合間を縫って演練に来ていたのはもしかして
『じゃあ、そろそろ行くね。忙しいのに引き留めてごめん』
「いや、かまわねぇ。…あー…なあ、…演練終わったあとに予定はあるか?飯でもどうだ」
『え、跡部仕事は?』
「…今日は無い」
『ほんと?じゃあさ、うちの本丸で食べない?今日は戦嫌いの江雪が演練ならってことで久しぶりに刀振るうから、居残り組にごちそうお願いしてるんだよね』
「それは、行ってもかまわないのか?」
『いいよー。なんなら刀剣達も連れておいでよ』
「そうか…それなら甘えさせてもらおう」
主は嬉しそうにその美しいかんばせに笑みを乗せた。黄色い悲鳴が聞こえるが主の気にしなさは揺るがない。御友人は、さすが跡部だねと納得したように頷いた。そしてふたりは連絡先を交換し、それじゃあまた後でと言って御友人は去って行った。その後ろ姿を見つめる主はとても優しい。彼女に会ってからずっと。そのせいで僕らは驚かされっぱなしだと言う事に彼は気づいていないのだろうけど

「…主、いまの方は」
「…高校の同級生で、友人だ」
「友人、なのかい?」
「……おら、ひとまず帰るぞ」
答えず、颯爽と歩き出した主に不躾な視線を送り続けていた野次馬達が慌てて道を開ける。僕らも足早に後を追った。主は今日はこのあと国外で会議があって、終わればそのまま接待ディナーなるものに出向くはずだったけれど、無いと言うならそうなのだ
「ねえ、僕らも連れてってくれるのかい?」
「アイツがそう言ったんだ、行きてえヤツはついて来な」
それってさ、みんな行くって言うよ。さっそく大きな声で行きたいと騒ぎ出した獅子王に、仕方ねえヤツだと苦笑した主は嬉しそうなままだった。その背にはきっと、僕らのように桜吹雪がはらはらと舞っているのだろう

























出口の無い春の中にきみは立っている



(おいこんのすけ、お前は何番目に作られた)(私は92番目にございます!)(なるほどクズじゃねーの)(!?)(主!それはやめたげて!)















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書き切れない設定としては、がっくんが夢主の本丸に遊びに来たときに清光はがっくんから跡部のことを聞いていて、
は?ウチの主を射止める気ならそれ相応の男じゃないと許さないけど?
な清光。たぶん、薬研とかノリががっくんと仲良くなれそうな刀剣も知ってる。江雪は夢主の跡部への態度を見て、あコレ恋愛ノリじゃないっすわって自己判断した。がっくんは大人になってもキューピットになれない

大人になって、そりゃあそれなりにいろいろ経験してきたけどやっぱり心のどこかに夢主が居続けた跡部と、跡部はやっぱり跡部様だなぁと思った夢主

次のページは、話に入りきらなかったけど一番書きたかった部分を書き殴りました
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