氷帝学園で過ごす

□6月、地域交流対抗戦にて
1ページ/1ページ

※宍戸視点




「亮!Aコートが他より遅れそうだC〜」
「マジかよ、神田に言っとくか」
「俺行くよ〜」
「俺も行くぜ、午後の内容で確認しときてぇのがあるんだ」

今日は地域交流対抗戦の日だ。2日間に渡って開催されるこの行事は、毎年 氷帝の姉妹校や提携校の生徒とスポーツやスピーチなんかで対戦して交流を深めるために行われてる。招待したりされたりいろいろだが、今年は氷帝にドイツのバイエルン州から生徒を招いてサッカーのミニゲームをやることになった。校外活動委員の俺とジローは朝から忙しくて、さすがのジローも寝ずに頑張ってる。ドイツ語なんてまったくわからねーし、英語もそんな自信無いがこの委員会は面白い。招待校の生徒の中には日本語を勉強してるヤツらもわりと居て、けっこう楽しく喋れる。けれど、きちんとドイツ語が理解出来る生徒がいないとうまく回せないのでそこは委員会関係無くドイツ語が出来る生徒が何人か選ばれて、運営のサポートをしてくれるのだ。去年は英語圏の学校との交流だったが今年は少し大変だ。そんな中サポートに選ばれたのは、当然ドイツ語の授業をとってるヤツらだ。そしてそこには苗字がいた。あと忍足も。二人は海外交流委員会でもあるので、今回のサポートではかなり助かっている。それと言わずもがな跡部だ。跡部の場合、生徒会長だからドイツ語云々じゃないけどな
「亮っ!亮!亮!」
「な、なんだよちょっ、落ち着けって」
「あれっ!あれ見てっ!」
「おい引っ張んな!わかったって、どれだよ!?」
「あれっ!」
「おっ…!」
ジローが興奮して俺の腕を引く。ジローが見てる場所に顔を向ければ、跡部と忍足と苗字が三人で話しているようだった
「なに話してるんだろ」
「うーん、まあメンツ的には委員会の話だろ」
「えーつまんない!」
「つまんないってお前な…」
「近く寄ってみよ!」
「バカやめとけって!」
「いいから〜!」
「だから引っ張んなって!それよりまず神田のとこ行くぞ!」
「A〜!」

ぶーぶー文句言うジローを引きずり神田のもとへ向かう。ぶっちゃけ俺も少しは気になる。でも俺とジローがあの輪に入ろうものなら跡部がこわい。様子を窺いに来たの丸わかりだし。そんなの激ダサだろ。けど、このあと運良く(?)俺にも苗字と話すチャンスが訪れる





『宍戸、Aコートもあと10分しないで終わりそうだから、先に他のコートをお昼に入れて良いって跡部から伝言』
「あ、おう。わかった」
タイムスケジュールを確認しながら腹減ったなと考えていたところに、苗字から声をかけられた。
『あとコレ神田に渡しといてくれるかな?』
「おう」
さっきから名前が出てる神田とは校外活動委員会の委員長だ。基本的に報告ごとは、委員長か生徒会長に上げることになってる。苗字から手渡されたのは午後からの予定表で、跡部の字でいろいろと書き加えられているようだ
「それにしても、ありがとな。ドイツ語の授業選択してるから仕方ないとは言え、海外交流委員会で忙しかったあとなのに休まらねーだろ」
『いやあ、それでもあたしは帰宅部だから。忍足なんてテニスもやって〜ってなると大変そう』
「あーそういやそうだな…」
『いちばんはやっぱり跡部だけどさ』
「跡部な…。だな、跡部がいちばんだな…」
……。
言葉が続かねえ!すげー良い具合に苗字から跡部の話が出てきたから俺も何か繋げないと!と思っても、うまいことネタが出てこない。別に、岳人たちみたいにお節介するつもりなかったけど、機会があるなら援護射撃くらいは…なんて思ってたのによ。ムリだ、俺には向いてない
『じゃあよろしくね』
「あ、おう…」
スタスタ去ってく苗字を引き止めるのもおかしいのでそのまま見送る
「あっ…!?さすが跡部だよな、くらい言えばよかったのか…!」
それすら出てこねーって、ムダに意識し過ぎだろ俺。激ダサだぜ。うん、やっぱ向いてない

だけど午後が始まってすぐ、苗字とタイムスケジュールを見ながら話してた跡部が、立ち去る苗字を後ろ髪ひかれるみたいに目で追う姿を見てしまった俺は、向いてなくたって頑張ろうかなと思ってしまったのである





















幸福の期限



(跡部でもあんな顔するんだなあ…)





















ーーーーー
跡部も人間なんだなって思う宍戸パイセンであった

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ