氷帝学園で過ごす

□7月、放課後にて
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※よっち視点





「あ、向日!」
「おう。なんだ?」
「今日 榊先生来る?」
「来るぜ」
「すぐ?」
「どうだったかな…跡部か滝に聞けばわかるけど。用事あんのか?」
「うん聞きたいことあって」
「あー、バイオリン?」
「そうそう」
部活に向かう向日を見つけて声をかける。榊先生がメインで見るのは中等部だから、思いついた時に簡単に会えないのが少し面倒だなって思う。でもテニス部に来るならラッキーだ
「滝もう部室かな」
「多分。マネージャーだし」
「なら滝に会ったら聞いといて?それから連絡ちょうだいよ」
「なんでだよ。一緒に来ればいいだろ」
「だって滝ってレギュラーマネでしょ?レギュラーのほうに行くのはちょっときついわ」
「あ〜…それはな…。けどほとんどはコート側に居るから部室側はそこまでだぜ?つか榊監督もう居るかもだし」
「それはそうなんだけど」
「だろ?行こうぜ。あっそういや苗字の話聞いたか?」
「聞いた!まじビックリしたんだけど!」
「いや俺も俺も。もう決定したって跡部に言われてよ〜」
「えーそうなの!?跡部様の独断?」
「滝には相談してたらしいけどな」
うっかり向日のペースに呑まれて一緒に部室へ歩き出してしまった。もういいや仕方ない。名前のテニス部合宿参加の話はあたしも向日に聞いてみようと思ってたし

「名前ならちゃんとやれるだろうけどさ」
跡部様に勧誘されたって聞いたときは真っ先に芥川の顔が浮かんだ。跡部様って芥川に甘いって話聞いたこともあったし、もしかして芥川が名前を好きだからって声を掛けたんじゃないかと疑惑がある
「なんで名前なのか跡部様に聞いた?」
「おう、能力が高いし任せられる信用があるって言ってたな」
「へー、跡部様ベタ褒めじゃん」
「まあそりゃあな」
芥川の好きな子だから?って聞いちゃおうかな。いやいや跡部様はそれだけで名前を選んだわけじゃないよね。だって跡部様だし。てか向日の反応的に、向日もわかってるのかな?まあ知ってて普通か
「合同なんでしょ?他の学校のマネージャーと話すの緊張するって言ってたよ」
「えー?あいつ人見知りだっけ?」
「ってほどでもないけど、自分から行くほうではないよね」
「そうだっけ。でもまあだいたいは滝と居ることになるんじゃね?」
「そうなんだ」
「メシの時はきっと氷帝で固まって食うと思うし」
「向日居るしこの前他の人達とも顔合わせたしその辺は問題無さそう」
「だろ?それにほら、跡部が居るし」
「ああそうだね、跡部様もね。あとほら…芥川もじゃん…?」
「ジロー?まあ確かにあいつは人見知りなんてあり得ねぇからな」
あら?思った反応と違う。わかりやすい向日の事だからもっと慌てるか食いつくかすると思ってたのに。聞いてないのかな?けど幼馴染みって言ってなかったっけ。男子って女子みたくそう言う報告とかしないの?あたしと名前なんて知り過ぎてるくらい知ってるんだけど。てか、向日だってあたし達にはわりと何でも話してくるよね。それとも秘密にしてるから気づいてないフリ?えー?嘘つくのヘタな向日がこんなに上手に?そんなのムリでしょ

「…ねえ向日、聞きたいことあるんだけど」
「なんだよ?」
「ぶっちゃけ芥川って名前のこと好きでしょ」
「はああ!!?まじで!?」
「たぶんね。何も聞いてない?」
「知らねーよ!てかまじか!?ウソだろ!?」
「ちょっとうるさい静かに」
その場で羽ばたきそうなくらい驚く向日は慌てて口を押さえて周りを確認した。遅いよもう注目浴びてるって
「聞いてねーよそんな話だったらやべぇじゃんつかなんで関口がそんなこと知ってんだよ」
今更小声で話してもって気もするけど、内容的に周りに聞かれるのはまずい。それにしても早口だな
「芥川さ、あたしに名前のことばっかり聞いてくんの。しかもまわりくどい感じで。確実じゃない?」
「ああそれか!」
「やっぱり知ってたんじゃん…え?なに、“だったらやべぇ”ってどういう事」
「だからそれ跡部……、…あっ」
「……あとべ…って…えっ」
「やべ…」
「…、…えっ!?…えぇっ!?」
「シーッ!声がでけー!」
「…!!」
向日には言われたくなかったけどまさかの話に思わず言われるまま口を閉じた。…え、うそ、え、えぇー…!?

「…あ、跡部様って…名前のこと好きなの…?」
さっきの向日よりさらに小声で絶対に周りに聞かれないように注意して聞いてみる。向日は完全にやっちまった顔であたしを見てて、もうそれ答えじゃん。ほんっとうに誤魔化すのヘタだな。跡部様なんでこの人に教えちゃったの?
「…関口だから言うけど、そうなんだよ」
「こんな話絶対に漏らせないから黙ってるけど…。え、本当なんだ…。聞いていい?いつから?今年?」
「俺らも知ったのは最近なんだけど、いつからなのかはわかんねぇ。聞いても教えてくんねーし」
「へぇ〜…!あの跡部様が…まさか名前かぁ…」
「なっ。俺も死ぬほどビビった」
跡部様に好きな人が居るってのがまずビックニュースだけど、相手が名前って!身内過ぎて笑える
「うわ、ってことは跡部様片思いじゃん…!」
「そこな。しかも苗字にだぜ?俺だって関口にだけは言っちゃいたかったけど、さすがにな〜」
まっもうバレちゃったけどなと呑気な向日だけど、この人こうやってまたいつかヘマしないか何故かあたしが心配になる。だったら跡部様の心労なんてとんでもなさそう。芥川もあんなんだし。敵かよ
「他に知ってる人居るの?」
「あー、レギュラーかな。つーかジローと侑士が気づいて部室で暴露して皆知った」
「えぇ…跡部様かわいそう…」
わかんないけど、そう言うの知られたくないタイプにしか見えない
「わかった、それで芥川のやつあたしに絡んでくるんだ」
「そうそう」
「それスゴく余計だから止めさせなよ」
「本人に言えよ…」
「そしたらあたしが跡部様とこと知ってるってバレるじゃん。いいの?」
「う…」
「あの二人クラス一緒なんだし跡部様なら自分でどうにかするんじゃないの?あんた達掻き回すのやめなよ?」
「し、してねーよ」
「……」

あやしい。あーそれにしても跡部様がねぇ…。あの跡部様が…。すっごい不思議なかんじ
「あいつ今は好きな奴いねーだろ?無理にとは言わねえけど関口も跡部を応援してくれよ」
「うーん…まあ…」
「なんだよ、ダメか?」
「ダメとかじゃなく、跡部様が名前を…ってなんか不思議なかんじでさ」
「そこは俺も叫んだけど」
「あたしが言うのもアレだけど名前いい子だし跡部様が好きになったって何もおかしくはないけどさ」
「あの跡部が、とはなるよな」
「だって片思い」
「そこな」
「まあ名前からの印象はすごく良いし出来ること無いけど応援するよ」
「えっマジ?苗字、どんなかんじ?」
「そんな食いつくほどではないよ?ただクラスメイトとして好印象ってくらいだと思う」
「でもそれなら可能性あるよな。合宿も行くし」
合宿ね。跡部様に限ってとは思うけどそれでもやっぱり少しは下心アリの人選なのかな。名前が内申点取れるって喜んでるからそれでもいいけど。あ、今日A組行ったのに全然跡部様の様子覚えてないや。名前のこと見てドキドキしたりしてるのかな。あの跡部様が。明日またA組に遊びに行こう。そして跡部様を見よう絶対に。あの二人がくっつくとか今のところまったく想像出来ないけど、うん、頑張れ跡部様

向日が合宿であの二人を急接近させたいとか言ってるけど完全に余計だし、練習に集中してろよと思った


























どうかあなたが恋をしてくれますように



(あ、榊先生居る)(なっ、来てよかったろ)(跡部様に被害がいったけどね)


























ーーーーー
誤解がとけました

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